初恋の破片
クロエ嬢は案の定、女子生徒から虐められた。虐めている筆頭の生徒は、ある貴族派の伯爵令嬢で、彼女の婚約者がクロエ嬢に鼻の下をデローンと伸ばしに伸ばしているから……ほぼほぼ逆恨みなんだけれど、まだ理解が出来ない動機では無かった。
「今度、魔法の実習がありますでしょう?その時に貴女、あの忌々しい女の顔を焼いてやりなさい」
待て!?それはいくら何でも聞き逃せないぞ!?
「顔だけで良いんですか?平民なんですから焼き殺してやりましょうよ」
「だって醜い顔のまま、生かして苦しめてやった方が……ねえ?」
「そうよ。平民の分際で私達貴族に楯突いた罪はとっても重たいと言う事を、身を以て教えて差し上げないと」
お……おう。
「でもあの痴女、魔法の実習には何だかんだと事情を付けて欠席しますよね。先生方もそれで怒らないですし……どうやって引きずり出すのですか?」
「脅しましょう、手紙で。……貴女、証拠の手紙もちゃんと焼いて頂戴ね?」
「ええ。勿論ですわ」
「あの嫌な女、徹底的に辱めてから殺してやると考えたら……うふふ!」
黙って聞いていたレクスがムッとした顔をしている。俺も不愉快な思いがあまりにも募っていたし、考えるだけで苦々しくて、とても変な顔をしていたと思う。
「どうする?」
「どうするも何も……俺はクロエ嬢に警告に行く」
レクスがそのまま席を立とうとしたのを俺は止めた。
「違う違う、どう『回避』する?警告だけじゃ足りないよ」
「水魔法は推奨できないぞ」ヴァロが本から顔を上げずに言った。「高火力の炎を消した水は高温の水蒸気になり、うっかり吸い込めば気道まで大やけどさせることがあるのだ」
「じゃあどうすれば良いんだ!」
と声を荒げたレクスの口を封じた俺、ナイスだ!
「クロエ嬢を、安全な場所に一時だけ避難させたらどうだろう?」
なおも反論しようとするレクスに、ヴァロが説明してくれた。
「保健室で使用して良いのは光魔法で、しかも治癒目的だけだったはずだがね?違反すれば最も軽い処分で1週間の登校停止である」
「だが、もし、」
「じゃあレクスがその時だけ側にいてやれよ。どうせレクスは魔法戦じゃ無敵だろう?」
既に炎魔法を自在に操れるし、炎魔法の中でも高等技術とされている『強化』を体に使った時なんかレクスはいっぱしの戦士である。
高等部の連中だってレクスと戦う事を恐れているくらいなのだ。
「……おう」




