家族愛
目が覚めたらデボラとディーンに挟まれて寝ていた。リュケイオン学園に入ってからは意地を張って一人で寝ていたから、人の温もりの温かさに今更、驚く。
「……おかあさま」
「起きたのね」
「ごめんね」
「どうしてあんなことをしたの」
「ヴァリアンナじょうをね、どうしてもたすけたかったの」
「まさか……」
「ぼくがちっちゃいころにみたゆめでね、とけいとうのなかにあるつるぎをぬいたらね、ヴァリアンナじょうをたすけられるっておしえてもらったの」
「……そうだったの」
ギューッと抱きしめられて、温もりに包まれて、俺はそのまま目を閉じた。
「もう危ないことはしないで」
「うん」
「必ず信頼できる大人に相談して」
「うん」
「約束よ」
「うん」
「愛しているわ、カイン……」
『母上……母上……今、俺を、俺を愛してくれていると……!!!ああっ、デボラの母上……っ!!!』
俺の中でカインがやかましいが、今だけは見逃す。
「……ぼくも」
俺達3人はしばらく家で様子見と言う措置(表向きは登校停止処分)だったけれど、次の次の日にはデボラは休みを取って(仕事が超忙しいのにさ)、レクスの家であるフェニキア公爵家に俺を連れて行ってくれた。
今朝方にレクスの親父であるミハエルが俺達の騒動を知って単身赴任先から飛んで戻ってきたそうで、玄関先の広間でレクスは土下座させられて雷を落とされている真っ最中だった。
「どうしてあんなことをした!」
「……」
「親に言えないような理由なのか!」
「……」
「この恥さらしが!貴様がこのまま黙っていると言うならば私にも考えがある!」
「……」
「レクスを離れに閉じ込めておけ!」
よし、間に合った!娘のヴァリアンナに何かあったら、レクスに説教なんてしている暇は無いはずだ。
「失礼します、フェニキア公爵閣下」
デボラが声をかけると、ようやくミハエルは俺達に気付いたようだった。
「……これはデボラ様。一体何の御用ですかな?」
「閣下のご令嬢をお助けする術が見つかったのです」
「ヴァリアンナを……?」
「ええ。お部屋までご案内いただけませんか」
「失礼ですが、その術はどうやって見つけたのですかな?」
「閣下がご令息を叱りつけていた、正にその件がきっかけです」
「リュケイオン学園の禁じられた時計塔の中に愚息も忍び込んでいたと言う……?」
「はい。詳しい事情は後でお話しいたします」
――急に上の階が騒がしくなった。
「いやああああああああああああああああああああっ!」
レクスの母親と思しき絶叫。
「旦那様!」すぐさま召使いが走ってきた。「お嬢様が!お急ぎ下さい――!」
ミハエルはレクスを引きずるように連れて上の階へ走っていった。




