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この世界の母親

 俺はドアを開けようと思ったがドアノブに手が届かないし重たいドアは子供の力だと開かなかったので、諦めた。

閉じ込められていると言う訳でも無さそうだったから、姿見の前でもう一度俺の姿を確認する。

「顔に傷痕が無いってことは……デボラが自殺する前か」

カイン・コンスタンティンが決定的に歪むのは、虐待されても尚愛していた母親が自殺するという大事件が起きてからである。

『一緒に死んで頂戴』と風魔法で体を切り刻まれて顔に大怪我を負うのに、カインだけ助かってしまうのだ。

「……どうにかして、阻止したいな」

尻の激痛からして、もう虐待は始まっているようだし。


 ――足音が近付いてきて、俺はドアから離れた。

「失礼いたします――あら坊ちゃま、もう起きていらっしゃったのですね」

メイドだった頃のサリナが登場した。淡い金色の髪と瞳の美女である。

俺はハッとした。

今、サリナがメイドをやっている――つまり、まだレーフ公爵のおぞましい魔の手が及んで妾にされていない。皇女だったデボラが帝国城から連れてきた幼馴染みで、一番の心を許した親友のままだ。

「う、うん。ねえサリナ、おかあさまはどこ?」

どうやっても舌っ足らずにしか話せないことがもどかしい。

「奥方様は今、お庭にいらっしゃいますが……」

「あいたいの。サリナ、つれていって!」

「え、ええ……」

サリナが戸惑う。やはり俺の虐待は既に始まっているようだ。だとしたら時間がない。

「はやくして!」


 デボラは庭の四阿にいた。深い緑の髪と瞳が美しい人だったが、やつれ果てていて頬がげっそりとしていた。そりゃ夫のレーフ公爵が今も女(何人目?)の所にいるのかも分からない現状だからな。

「カイン……」

「おかあさま。おはなしがあります」

「私には無いわ」

冷たく言い捨ててデボラは立ち去ろうとした。

「レーフこうしゃくが、サリナをねらっているの」

周りに人がいないことを確かめてから俺は言った。

すぐさまデボラが青ざめた顔で振り返って、サリナがギョッとした顔で俺を見つめるのが分かった。

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