もういない
弟がいた。俺が確かに納骨したのに。遺影に何度も土下座して詫びたのに。
「兄貴、久しぶり」
ああ、ここは夢なんだ。
「ユーリ、久しぶり。……なあ、みんな天国にいるのか?」
ヘラヘラと笑う弟がとても懐かしくて――だけど、懐かしいと感じた事が叫びたいくらいに悲しかった。
懐かしいと感じるのって、もう距離も時間も空いてしまったことの証明だったから。
俺は地獄に行くから、二度と会えない。
「うん。親父とかーちゃんはそっちにいる。俺だけちょっと例外かなー。助けてって絶叫に引き寄せられちゃったんだわ」
「は……?」
「兄貴、この世界を頼むわ。今度こそ――ウルトラハッピーエンドにしてくれ」
目が覚めた。スティリコさんが俺を馬車から降ろそうと抱きかかえてくれている所だった。
「あ……」
本人確認。
焼け焦げた中に面影が。
遺影。
葬式。
棺を開けてはならない。
警察。
死亡届。
親戚。
喪服。
線香のしけた香り。
やかましく押しかけるマスコミ。
動画撮影している近所の連中。
SNSの炎上。
『犯人は死刑』
『可哀想』
違う。
ここはあの世界じゃないって分かっている。
だけど。
止まらない。
『放火した理由、答えろよ』
『だって……仕方なかったから』
「――うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!」
「坊ちゃん!?」
「どうしたの、カイン!?」
『おい!?』
――俺は暴れて、暴れながら泣きじゃくった。




