魔剣ドゥームブリンガーの中の人
時計塔の中は異空間だった。
真っ暗な闇の中に封印の魔法陣がしつこいくらいに展開されていて、それをヴァロが解除してくれる。
……ついに、残りの封印が一つとなった時だった。
『誰だ……』
「いひゃんんっ!!?」
レクスが俺の背後に急に隠れてブルブルと震えだした。虫もチャンバラごっこも怖くないのに、コイツは幽霊が何より怖いのだ。
『俺に今更何の用だ……もうデボラの母上は……どこにもいないのに……』
デボラの母上……って、デボラをそうやって呼んだのは俺の知る限り1人しかいない。
「……もしかして本物のカイン?」
ヴァロとレクスが俺を凝視した。
『本物の……?貴様、それはどう言う意味だ。俺は俺だぞ!?』
「デボラ・クリュテ・プファリアッツならいまおしごとしているけど」
『は?』
「あのね、もとレーフこうしゃくふじんのデボラは、げんきにいきているよ」
『何だと……!?デボラの母上は俺の愛と共に死んだはずだ!貴様は何を言っているんだ!?』
「うーん……あとでちゃんとせつめいするから、とりあえず、ぼくにとりついてくれない?」
『……良いだろう。気に入らなければ殺すだけだからな』
ヴァロが封印を解除する手を止めようとしたのを、俺は『大丈夫!』と声を出さずに伝えて、そのまま封印の先に進んだ。
――床に真っ黒の大剣が斜めに突き刺さっていた。
「よいしょ……よいしょ!」
剣の柄にぶら下がって思いっきり体を前後に揺らしたら、ズボッ!と引っこ抜けた。引っこ抜けたら、大剣はスッと宙に浮かんだ。
『なっ……貴様……貴様……!?お、俺なのか!?』
頭の中で声がする。俺も頭の中で声を出してみた。
『いや、俺はさ、カインとは別人だよ。気付いたらカイン・コンスタンティンの体の中にいたんだ』
『……しかし俺は確かに死んだはずだぞ!?』
『それが、この通り時間が巻き戻っているようなんだ』
『…………。色々と聞きたいことがあるが……その、デボラの母上は本当に生きていらっしゃるのか?』
『生きているよ。今日だって俺が起きるのが遅いからって掛け布団を引き剥がされたんだぜ』
『……………………』
『ディーンはおねしょしてたから先に起きてた』
『何だと!?あのゴミまで生きていたのか!!!!?』
『待ってくれ、「俺」がディーンを殺しでもしたらデボラは絶望するぜ?』
『な……っ』
『運命が少しだけ変わったんだよ』




