コンモドゥス、超喜ぶ
何だかんだで、俺達は入園から1週間も過ぎる頃にはお互いの家を行き来するくらいの関係になっていた。
今日は、ディーンとコンモドゥスも一緒だ。
「いやあいやあカイン様!ユィアン侯爵家のご令息とお友達になるとは、流石ですね!」
コンモドゥスがいつになくハイテンションなのは、これからヴァロの家――ユィアン侯爵家に遊びに行くからだ。
ユィアン侯爵は魔法学の国家的権威だし、ユィアン侯爵一家ことセウェウルス一族はコンモドゥスの憧れの一族である。ヴァロ曰く『がくもんこそいのち!』な一族らしい。
……うん、ヴァロを見ていれば良く分かる。
「おにいしゃま、さすが!」
ディーンはバンザイした。
「ディーンもさすがだぞー!!!」
可愛いので俺は頭をワッシャワシャに撫でまくった。
「ええ!何もかも、流石の流石のカイン様なのです!ユィアン侯爵家と言えば学問を志す者の憧れ!一族の者は性格に難こそありますが研究者としては一流の中の一流!ああ……あの家の門をまたげる日が来るとは、夢のようです!いいえ現実!現実を見なければ学問の徒として失格です!」
このままコンモドゥスは鼻血を出しそうな勢いだ。
「う、うん……」
運良くそこで、魔法馬車が止まって御者兼護衛のスティリコさんが扉を開けてくれた。
ユィアン侯爵家には門番や護衛がいない代わりに、魔法を駆使した厳重な警備体制が敷かれていた。一族の認可の無い存在が敷地内に立ち入れば、全属性魔法で四方八方から攻撃されると言う恐ろしいセキュリティだ。
「やあ、よくきた!」
レクス達と一緒に門をくぐると、ヴァロが白衣を着て出迎えてくれた。
およそ来客を出迎える格好じゃないが、恐らくこの家では白衣こそが一番の正装なのだろう。
ヴァロの部屋(マッドサイエンティストの研究室そのままである)に入った瞬間、
「あっ!」コンモドゥスが悲鳴じみた歓声を上げた。「あ、あの本は『魔法理論体系』の一昨日発売された最新刊ではありませんか!」
「しっているのか?」
「有名でしょう!?」
俺とレクスは顔を見合わせた。レクスのお守りである老騎士のアグリッパさんも首をかしげている。ディーンは……うん。分かっていない。
およそ有名じゃ……無さそうである。
「『魔法遺伝学』についてのビブルス様の論文が1年ぶりに寄稿されたと伺っております!」
「『まほういでんがく』をしっているのか!」
「まだ研究が足りず不明瞭な所も多いのですが、『魔法属性学』に新見地をもたらしていると存じております!複合属性所持者の存在の予見はあくまでも理想論的ですが、『魔法属性相性学』からもあり得ないものではないと私は賛同する立場におります」
ヴァロは俺の方を振り向いた。目がギランギランに輝いていた。
「おいカイン!きみのおもりはなかなかにはなせるやつだな!」
「あ……うん」
「……何を言っているのか全く分からんのじゃが」
アグリッパさんの呟きに、俺もレクスもうんうんと頷いた。




