何か可愛いな、この悪役令嬢っぽい皇女
「で、デボラっ!貴女っ、何のつもりなの!?」
あれ?今頃2人で仲良くやっていると思っていたら、何故かアンティスティア皇女がカンカンに怒ってやって来たぞ?
「何とは……?」
「とぼけないで頂戴!フラヴィウス皇太子殿下のことよ!い、いきなり私に求婚の申し込みをして下さったのよ!?あ、貴女は一体何を考えているの!」
「この子達を真っ当に育て上げたいのです」
「は、はあ!?だからって皇太子妃の地位を……」
「はい。そもそも身にそぐわぬ地位を得ても破滅するだけですから。そんなことよりもアンティスティア皇太子妃殿下、この度は誠におめでとうございます」
「ありが……じゃなくて!貴女まさか第二夫人の地位を狙っているじゃないでしょうね!?」
「狙っていない理由を3つ申し上げます。まず、その地位を私が狙ったところで誰からも支持されることはおろか、受け入れられることもないでしょう。落ち着いてお考え下さい、私は離婚歴もあり、この通り可愛い子供達もいるのです。次に、フラヴィウス皇太子殿下とアンティスティア皇太子妃殿下に対して私の思うところは、お二方が末永くお幸せであって欲しい、これだけにございます。最後に、アンティスティア皇太子妃殿下を敵にして、私の可愛い子供達に危害が及ぶこと。これが私の最も恐れることなのです」
「じゃ、じゃあ……」
「私はもう充分に幸せです。これ以上を望むのは傲慢でございます」
黙っちゃったアンティスティア様に、俺はさっきそこで摘んだクローバーを差し出した。
「アンティスティアさま、これあげる!あのね、コンモドゥスがね、よつばだからもっているとしあわせになれるよって!」
「……坊やも、私の幸せを……望んでいるの?」
「うん!」
アンティスティアが目を潤ませて受け取った時、フラヴィウス殿下が走ってきた。
「アンティスティア!ここにいたのか!」
「皇太子殿下……っ、わ、私……!」
「君を不安にさせて、本当に済まなかった」
ぶわあああああっ!と泣き出したアンティスティアをフラヴィウス殿下が抱きしめる。
チョロいヒロインこと『チョロイン』と呼ばれていただけあって、可愛い悪役令嬢っぽい皇女って感じだな。
「殿下……殿下っ!」
「フラヴィウスで良い、君に私の名を呼ぶことを許可しよう」
「フラヴィウス様っ!うわああああああああああっ……!」
多分、これでこっちも心配要らないな。
俺は一緒に摘んできた三つ葉のクローバーでディーンをあやしてやる。
「あいー!うきゃー!」
ディーンは今日もご機嫌だった。
デボラは穏やかな顔で、ポンポニアもコンモドゥスもニコニコしていた。