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失恋したけれど、幸せ

 ディーンがハイハイを始めた頃、フラヴィウス殿下がデボラに求婚した。

が、即答でフラれた。

「皇太子妃になる訳には参りません。いかに殿下のお望みであろうとも」

「それは、君に離婚経験があるから……か」

「いいえ。それが一番の理由ではありませんわ。私はカインやディーンを何よりも大事にしたいのです。私の幸せを願ってくれる可愛い子を、私も幸せにしてやりたいの」

「……デボラ。君は今……幸せかい?」

フラヴィウス殿下は泣き出しそうだった。

既に、失恋確定だもんな。

「とても。……ありがとう、フラヴィウス」

聖女のような美しい笑みを浮かべたデボラに、フラヴィウス殿下は失恋しつつも安心はしたようだった。

実際もうデボラは大丈夫だと俺も思う。困った時に1人で抱え込む悪癖は消えたからな。

「分かった。これからアンティスティアに求婚してくる」

フラヴィウス殿下は微笑んだ。

お手本のような失恋で、お手本のような切り替えだった。

デボラがとても幸せだと言って、お礼まで言ったから、スッパリと諦めが付いたのかも知れない。

「それがよろしいでしょう。彼女は長いこと殿下をお慕いしておりましたから」


 アンティスティアとは皇太后様の溺愛する末の孫娘だ。デボラの叔母の娘、つまりデボラの従妹である。原作ではフラヴィウス殿下を慕う心をカインに利用されて散々な目に遭った挙げ句処刑される……のだが、今度はそんなことにはならずに済みそうである。

「ああ。対立する派閥を取り込むにも、身分も何もかも申し分が無い」

「承知しておりますが……一つだけお願い申し上げます。どうかかつての私へのように……」

デボラに向けたような直向きな愛情を向けてあげてほしい。

フラヴィウス殿下は静かに頷いた。

「あうあー!あぶー!」

その時ディーンがポンポニアの腕の中でお喋りしだした。お気に入りのおもちゃをブンブンと振って、とても楽しそうに。

「あら、ディーンも殿下達のことをお祝いしてくれるの?」

デボラはディーンを抱き上げて、笑った。

「ああー!きゃい!」

まるで『そうだよ!』と言っているようにディーンはご機嫌だった。

「そうか。君も、祝ってくれるか。私達のこれからを……」

フラヴィウス殿下は微笑んで、去って行った。

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