人でいられる条件
「ストラトスこそ顔色が良くない。何があったの?」
それでも何か言おうとしていた3人が、また、黙ってしまった。
「妹が、な……。昨日、だったそうだ。ちゃんと弔えただけ、良かった」
他のオーガ族は使い捨てられて、ブラックタイガーの餌食になっていた、とストラトスは力なく呟いた。
「僕を殴れ」
『ジン!バカか?!ジン!止めろ、相手は怪力のオーガ族なんだぞ!!!』
「……は?」
「作戦指揮官は僕だ。だから殴れ」
「いや、カインは」
「今殴らないとストラトスは一生悔やんだままだ」
「良いのか」
「良いさ」
俺はとっとと表に出て、歯を食いしばった。
ストラトスは無言で俺と相対する。
「何だ?」
「珍しいな、喧嘩か?」
「何が原因だろう?」
お湯を沸かしたり食事(粥を薄めたもの)を運んだりと救護に忙しいみんなが、こちらを見て不思議そうにしている。
「――」
すう、とストラトスは大きく息を吸って――。
ガードもせずに立っていた俺の胴体に凄まじい拳を入れたのだった。
『うお……モロに胃に来たなあ……』
吹っ飛んで地面に倒れた俺は、胃液やら唾液やらをまき散らして呻いている。
強烈。
肋骨が無事なのかも分からない。背骨は……無事だと良い。
痙攣したくないが、体が勝手に痙攣している。
内臓が痛すぎて意識が飛びそうである。
これがオーガ族の力かー、内臓破裂したかもなー、なんて半分白目を剥いて俺は思った。何処から何処まで薩摩隼人御用達の示現流にぴったりだなー、なんてとにかく何かを続けて考えていなければ激痛のあまりに気絶していただろう。
『バカだ……ジンは……やはりバカだ……』
「……」
ストラトスはそのまま突っ立っていたが、ようやく――。
「マティルダ……!」
泣けた。悲しくて泣けた。
良かった……。
ストラトスの肩にペトロニウスが手を置いている。キプリオスのじいさんがしゃがみ込んだストラトスの頭を撫でている。
大丈夫だ、まだストラトスは大丈夫だ。地獄に行く前に引き留めてくれるしがらみが、残っている。
『本当に……ジンはバカだな』
『黙ってくれ、頼むよ』




