バッカジャネーカ
『ガイア』の拠点の元・村(ガイア村とでも呼んでおく)に戻るまで、俺達は無言だった。
村に帰っても『執政室』の中まで無言だった。
「……まさか無傷で……あの男に勝つとは思わなかった」
どっかりと腰を落としてから、ストラトスは呻くように言葉を吐き出した。
「あの男には……オーガ族の誰もが……何度も辛酸を……」
「だが、勝った!」ペトロニウスも、長く呼吸を止めていた後で吐き出すように、言った。「ニンゲンの教えた剣術とやらで……ストラトスが勝った。この目で見た。確かに、負けを認めさせた!」
それから俺を見据える。
「カイン。あの弓があれば、ニンゲン共の使う魔法に勝てるのか?」
「魔法はね、威力はあるよ。確かに圧倒的な火力を持っている。だけど……その火力を維持できるのは至近距離だけなんだ。あの弓をエルフが持てば、魔法が破壊力を持って届く距離の向こうから一方的に攻撃できる」
「もし近付かれた場合は?」
「『帝国の剣』に負けを認めさせた剣術を使えるオーガ族がいるでしょ。オーガ族の体は魔法に対しても頑強だし」
ペトロニウスは、ぐうぅ、と小さく呻いた。
「……正直、上手く行かなかった場合を考えると、私は貴様の提案に乗り気では無かった。どうせ我らエルフ族はニンゲン共の奴隷にされるのだと……」
「……」
「だが、力を持てばそうではないと今日の一件で思い知った。一族を守るための武力を、もし貴様に味方する事で得られるのであれば……」
バカじゃないか、これだけは言わせて貰う。
「『得る』んじゃない、『つかみ取る』んですよ。今戦わなければ未来永劫に僕達は何も掴めないまま死んでいく。
今まで奴隷として虐げられて死んだ同胞にどれほどの哀悼を捧げても、誰も戻ってこなかったでしょう?
血を流して戦ってつかみ取った権利と権限だからこそ大事なのだし、何を犠牲にしてでも守るべきなんです。
……貴方こそが誰より思い知っている。それらを奪われて迫害される事がどれほどに辛く苦しく悲しい事なのかを」
『……』
「……ああ、そうだ」
「貴方達が、貴方達のために、貴方達の手で。断じて奴隷じゃないと言う証明を、その手でつかみ取るんです」
こうして、俺は信じられる戦力を更に増やしたのだった。
ドワーフ族が工芸の技術にずば抜けていて、オーガ族が武勇に長じているように、エルフ族って女性でも弓が上手なんだね!?
そりゃ多少は上手なんだろうなあとネフェリィの様子から察してはいたよ?
でも……ここまで弓の名手ばかりだとは予想していなかった。
百発百中なんだもん、全員。
……この分なら、男衆を連れて出かけてもガイア村の守りは心配なさそうだ。




