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愚痴をこぼすのを聞く

「でもさ、ちょっと疑問なんだけど」

「何よ」

「人間が魔界に転生したら、見た目も魔族になるはずだろ?」

「それがちょっと違うのよ」

「あんたが転生したこの世界はさあ、似た目の補正が掛かるの」

「どういうことだ?」

「転生者が見る外見と、ここの世界の人が見る外見は違うのよ」

「転生者同士は美男美女に見えてるの」

ダメガミはここで言葉を切って座った。

「ここの世界の人同士もそう。みんなそこそこの美男美女。でも転生者と、ここの世界の人はお互いに醜い魔族に見えてる」

「まさか外見に嫌悪感があるから殺しあうってこと?」

「そうだね。それも大きいと思う」

生理的に嫌なもの同士が争うわけか。

「じゃあダメガミさん、あんたはどう見えてるんだ?」

「転生前の人間と、美男美女に偽装される前のここの人間がそのまま見えてる」

「じゃあ、俺はおっさんに見えてるってことだな」

「そうね。おっさんだね、小汚いおっさん」

「でも俺は自分自身が魔王っぽく見えてるぞ」

「そうね。でもあんたは小汚いおっさんじゃん。あたしにはそう見えてる」

「でもそれだと俺だけが魔王に転生した理由がわからないんだけど。魔王が死んだら魔界全員が入れ替わるとしたら、人間側には何か大量に死ぬイベントが起こるってことじゃん。でも俺は自殺してるし、そんな話は聞いたことない。お前の言ってることはおかしいよ」

「あー、気が付いた?あんた、それほどバカじゃないってことだね。違うんだ。魔王だけ先に転生するんだよ」

「どういうことだ?これから人間が大量に死ぬって言ってる?」

「そう。これから大量に死ぬ」

「何が起きるんだ?」

「そんなこと知っても仕方ないじゃん」

「いや知りたい」

「起きたらわかるよ。転生した奴らが教えてくれる」

「あたしからは教えられない。でもこれだけはホント。先に魔王候補が転生して殺しあってそれぞれが持ってる固有スキルをひとつひとつ吸収していく。だけど魔王同士で殺しあわずに死んだスキルは吸収されない」

座っていたダメガミは寝そべりだした。

「殺した魔王同士でしかスキルは吸収されないから、誰かに殺させたり、勝手に死んだりした魔王のスキルは失われて、この世界ではロストスキルになる。争いが激しくなればそういういことは起きるよね。完全でない魔王はいつか勇者に倒されて、また入れ替わりが起きる。そういうこと」

「それを操っているのは誰だよ」

「知らない。あたしはあたしでこの世界の中で転生したんだよ。でも誰がこの仕組みを作ったのかは知らないんだ。でもそういうことだってことだけは教えてもらった。あたしがこの世界で生き残るためにはあんたを魔王にしなきゃいけない。あたしが知っていることはあんたに教えていい。でも聞かれるまで教えちゃいけない。無理に教えようとすると声が出なくなる。あんたが質問しやすいようにあたしはこうやって必死に導こうとしてるのさ。あたしはダメガミだけど、結局はチュートリアルなんだよ」


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