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魔王って全然慣れないわ

俺は転生者だ。元はしがないサラリーマン。もうおっさんだったしな。子供は手を離れ巣立ったし、後は悠々自適なの生活が待ってると信じていた。だが人生はうまくいかないものだ。不況による解雇で俺は職を失った。退職金は愛想を尽かした女房が離婚で持って行ってしまった。仕方がないよな。働いてない俺など何の価値もない。働いていた時も価値なんて果たしてあったのかもわからないが、とにかく俺は無一文の無職になった。死ぬ勇気もないし、人を殺すのも子供に迷惑が掛かる。これは何とかそれとわからずに死ぬ方法は無いかと考えていたが何も思いつかない。やけ酒を飲んで風呂に浸かったがそこから記憶がない。どうも溺死でもしたらしい。苦しまずに死んだようで、図らずも目的は簡単に達成できた。だがそれも記憶にない。とにかく俺はそっとこの世を去り、そのまま消えていくはずだった。何もかも放り出して、とにかく消えていきたかった。


だが運命というものはわからないものだ。単なるしがないサラリーマンを何のために転生させたいのか全くわからない。気がつくと、見た目20代後半、パッとしないスナックのチーママ風の女神が目の前にいた。

「何ですか?俺に用ですか?」

チーママは俺にヤグされた口調で言った。

「開口一番、何なの?あんた」

口の悪い女神だ。態度も悪い。女神っぽい格好だけで女神じゃないのかも。

「あんたね、死んだのよ」

そりゃ知ってるよ。そりゃどう見ても俺は死んでるさ。服も見慣れないカーテンみたいな布を頭から被らされてるし、こんな格好で女神っぽい輩の前にいきなり登場したら、死んでるとしか思えないだろ。

「知ってるよ。溺死か?」

「あんたの死因なんでどうでもいいのよ。問題は死に方なのよ」

死に方?どういうことだ?俺は酔って溺死しただけだろう。そこに何の不思議がある?

「溺死しただけだろ。違うのか?」

「そうじゃないのよ。あんたの死んだ時間が悪いのよ」

死んだ時間?どういうことだ?夜中か明け方じゃないのか?

「夜中か明け方に死んだのがまずかったのか?」

「違う。今日は魔界期6666年6月6日なのよ」

なるほど悪魔の日か。

「悪魔の日か。そりゃ気の毒だったが、俺は生贄になるのか?」

「死んだあんたが生贄になるわけないでしょ?あんたは魔王に転生する候補者の1人になったのよ」

これゃまいったな。こんな貧相な魔王は見劣りがするだろう。

「こんな貧相な魔王じゃ見劣りするなw」

「あんた、笑い事じゃないのよ。魔王は1000年間魔界を統治して、それで今度は死なない魔神王に転生するのよ」

「なるほど。それで?」

「それで?じゃないわよ。魔王は1000年以内に殺されたら転生もできないし、魔界の全員が全員死んで入れ替わるの」「入れ替わる?誰と?」

「人間よ。人間と入れ替わるの」

「魔物っていうのは人間なのか?」

「違う。人間は人間よ。魔物は魔物のつがいから生まれる。でも魔王が殺されたら、代わりに人間が魔物に転生するの」

「そんな仕組みなのか。じゃあ入れ替わる時は人間がたくさん死なないとダメだなw」

「あんた、笑ってるけどそうなのよ。あたしらが死ぬってだけじゃなく、人間が死ぬの。それもたくさん」

「前の魔王が死んで魔物は全員死んだ。そしてようやく代わりの魔王が生まれようとしてる。でもそれがなぜあんたなの?前の魔王が死んだ時、人間界では戦争が起きてたくさんの人が死んだわ」

「まさか第二次大戦?」

「そうね。そのまさかよ。あんたが勇者にあっさりと殺されたら、きっと人間界にはまた戦争が起きるわ」

こりゃ大変だ。おれは魔王にならなきゃいけないし、勇者を1000年殺し続けなきゃいけないってことか。

「もしそうなら人間はこの世界の魔物と一蓮托生ってことか?」

「そうね。人間は気付いてないと思うけど」

こりゃ、大変だ。


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