とりあえず、村に着く
原生林に降り立った
字面だけみるとすごくかっこいいけど、実際は最悪である。
ツタが生い茂っていて前が見えないし歩きづらい。ヤブは町で立ちふさがる不良のように生い茂っている。
これ遺跡から出ない方がいいんじゃないか?
遺跡の中から拾ってきた衣服を身に着けて、いざというところで出鼻をくじかれた。
「ナタでもあればなぁ。・・・あるなぁ」
見つめるのは俺が持っている光剣である、ライト○イバー。スタートパッケージの知識的にはフォトンレーザーブレードRFG01「ライトカタナ」
グリップのカタナ範囲を弄れば最大1.8メートルまで刃渡り?光渡り?を伸ばせる。
「そいやっ!!」
ブォン!!
「グゲェ」「ギァッ」「ギィイ」
「え、何の声!?」
バッサリ藪が切れて道が開かれると同時に聞いたことが無い声と、見たことが無い緑色の生物の首が胴体とお別れしていた。切り口は焼きつぶれており血は出ていない。
『ストレージ収納、討伐対象ゴブリン 確認しました』
急にペンダントからそんな声が聞こえると、ゴブリンの死体が消えた。
ペンダントのストレージ欄に「ゴブリンの躯」と表示されている。あと「ゴブリンの地図」ってのが増えている。どうやら地図はゴブリンたちの巣穴のようだ
「なるほど、巣穴ね。うんうん、定番定番。いや、スルーですわ」
これが異世界転移物の主人公イベなら、確かに定番だろう。ゴブリンをスレイする勇者の出来上がりである。でも俺は一般人。身体能力だって普通のはず。
さっきのゴブリンでレベルが上がったらしいけど、体感的には何も変わらない。ゆっくり行こう
「君子危うきに近寄らず、この地図によればアナキの村はここからまっすぐ、ペンダントのマップ方位磁石能力を使って村までまっすぐ行こう」
俺はライトカタナをぶんぶん振って、道を開拓しながらアナキの村に向かうのだった。
「ああ、やっとついたぁ・・・」
軽く八時間くらい光剣を振り回し、モンスターを討伐する事20体、中にはミドルドレイクとかいうちょっとヤバ目なモンスターも何体か。
そんな危機を乗り越えて、ようやく街道らしき道に出た。っていうかどう見ても街道がコンクリ、やっぱりドッキリなんだろうかとも思ったが、ドッキリにしては光剣が説明がつかないし、モンスターもレベルの概念もよくわからない。そもそもどれもオーバーテクノロジーだし
街道から歩く事30分ようやくアナキの村に着いた
「見張りとかはいないのか、なんか中世ヨーロッパの街みたいだな」
スタートパッケージで知識上では知っていても実際見ると驚く。自分がこんな事に巻き込まれるなんて想像もしていなかった。
とりあえず、今日の宿を探さなければ。
「すみません、この村に宿はありますか?」
「ないよ」
詰んだ。
「宿泊客なんてこない村だからねぇ、どこから来たんだい?」
「ああ、えっと旅しててこの道の先から来たんですが」
「ああ、辺境国オビーから来たのかい。それは遠いところをわざわざ。村役場、オビー流にいうならギルドならあるからそこで聞いてみたらいいよ」
この世界におけるギルドとは、モンスターの躯の買取や仕事の斡旋をする場所である。村単位で言えば簡易的な法廷でもあり、市役所でもある、警察機構にもなっているギルドナイトとよばれるメンバーによって運営されている。
確かにモンスターの亡骸はあるし、買取してもらうのは悪くないかもしれない。
「ありがとう、お姉さん」
「気を付けてね」
教えられた道を行き村役場に入る。カウンターに座っている爺さんに話しかけた。
「こんにちは、モンスター討伐の買取をお願いしたいんですが」
「ちょっと待ってな。見ない顔だがあんたは?」
「旅の者です、旅先で狩ったモンスター買取できますか?」
「この辺のモンスターなら出来るが、どこにあるんだ?」
やばい、アイテムストレージを見せて大丈夫かどうかが分からないぞ。
ここは慎重にいかなければいけない。
幸い村役場の周りは死角がおおい、
「ここに持ってきていいかわからなかったので、外にあります。持ってきても?」
「構わないが、量が多いなら裏口によこしてくれ」
よし、なんとかなりそうだ。
俺は了解とつげるとダッシュで裏口のそばにモンスターを積み上げる。
ざっと40体、ゴブリンとミドルドレイクと大ネズミだ。
「うぉ、こりゃまた量が多い。しかも全部この辺のモンスターか」
「分かるんですか?」
「そりゃお前、命動術を感じれるニューマンなら誰だってわかる。んでこれ全部買取?」
知らない単語が出てきた。命動術って何ぞや。
【ミッション達成:命動術の知識】
命動術とは大気中に存在する量子ナノマシンを操る術の事。量子ナノマシンにコマンドを受付させることでいわゆる魔法みたいな現象を起こすことが可能。ニューマンが使用可能。
エルダーヒューマンには使用不可
頭の中に命動術の知識が流れ込んでくる。
え、俺感じれないじゃん。エルダーヒューマンらしいし。
「あはは、えっとおいくらくらいになりそうです?」
「ミドルドレイクも合わせて2000レルくらいか」
大体20万くらいか。
「けっこういきますね」
「閃炎の命導術が使えるなら討伐より王鉄樹の伐採の方が儲かるだろう?」
「閃炎ってなんですか?」
「はぁ?この切り口、まるで超高熱度の光で焼き切ったようだろう。こんなことが出来るのは閃炎系の命動術くらいなもんだ。隠すなよ、教えろとは言わんからさ」
あ、なるほど、そういう命動術があるのね。
すみません、それライトカタナですとは言えずに苦笑いをするだけだった。
「それじゃ、俺はこれで」
「閃炎が使えるってホント!!?」
バタンと扉を開けて入ってきたのは耳が少し長い女の子
いわゆるエルフだった。