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第2話 20代のボーイがミーツガール

「あの、何を?」

「ナメクジ対策です」

「は?」


 無理か……?無理だな、仕方ない安心させたところ悪いけど正直に言うか。


「盛り塩ですよ、除霊できないかなって」

「その交通安全のお守りをかざしていたのは?」

「幽霊感じれないかなって」

「交通安全と書いてありますが」

「だから?」


 少女が自身の頭に手を当てる、頭痛だろうか?

「お大事に」

「私のセリフです!」

 失礼な娘だった。別のお守りを買う金が無いと正直に言えというのか。


 少女は落ち着いたようで再び話しかけてきた。

「あの、何も起きていないって言ってませんでした?」

「実は毎週この時間にインターホンが鳴るんですよ、でもそれだけなので」

「そうですか……インターホン?」

「どうかしましたか?」

「いえ……私が聞いた現象には無かったと思って」


 やはり、以前の住民と交流があったのか。今度こそ詳しく聞けるだろうと思い話を伺う。

「わかりましたお話します……ですがこんな所ではちょっと」

「じゃあどこかファミレスにでも行きますか、もちろんお金はこちらが持ちますので」

 断腸の……断腸の思いだが仕方ない!情報を貰うのだし立場はこちらのが下、何より年下の女の子にお金を出させる訳にはいかない!


「今からはちょ……え? ファミレス?」

「ん? ハンバーガー屋の方が良かったでしょうか?」

「ふふふ……いえファミレスに行きましょう。それとあなたの方が年上ですよね?タメ口で構いませんよ」

 何が面白いのか?思ったがスルーして続ける。

「あそう? じゃあ改めて宜しくね、ええと」

水野ミズノ リンと申します。あなたは?」

「俺は田中 康。よろしく、水野」

「はい、よろしくお願いします田中さん」

 そう言って水野はぺこりと会釈をした。


「すみません、アイスコーヒー1つと水1つ」

「ちょちょっと待ってください! 水って?」

「ああ気にしないで、俺の分だから」

 そう言うと水野は頭を抱えて、

「私の分のお代は自分で払います!なのでアイスコーヒー2つでお願いします」


 と言いやがった。俺の親切をなんだと思っているのか!?と思ったが、同時に少し助かったのも事実であるので感謝。どうやらお金がない人から奢ってもらうのは嬉しくないらしい、覚えておこう。


「私が知っているのはですね……」

 そう言って水野は話し始めた。掻い摘んでみると、俺が入居する約1月前まで前の入居者は居たようだ。水野は3月の終わりに入居していたので、大体1ヶ月間の付き合いだったらしいが、明らかに異様だったそうだ。


「日中でも夜でも隣の部屋から叫び声や、何か暴れるような音が聞こえてきて凄く怖かったんです。」

 防音しっかりしてそうな部屋でも聞こえるってどのくらい大音量だったんだろう?今度実験してみようかな。

「何か変なこと考えてません?」

「気のせいだ。良いから続きを」

「全くもう……」


 もう、が可愛いなと思いながら話を聞くと、前の入居者……以下Aとしよう。Aは普段から疲れた様子且つ何かに怯えていて、すれ違っても挨拶をすることは無い関係だったらしい。しかし、とある日Aはすれ違った水野に詰め寄って、

「本当にうちの部屋しか異常はないの!? 何でうちの部屋だけ! 助けてよ!」

 と言い水野が返答に困っていると何もいない空間を指差して、

「ああ……また、また私を苦しめるのね……部屋から出ても追ってくるなんて逃げ場はないというの? あはははは」

 と狂ったように笑いながら飛び出して行き、そのまま帰ってくる事はなかったそうだ。管理人曰く退去したらしいが、その時は家族同伴で心身ともに衰弱状態で手続きをしたらしい。


「管理人さんからの伝聞ですので真偽はわかりませんけど」

「わざわざ君に伝えにきたの?」

「いえ、私から聞きにいったんです。急に見なくなって不安だったので……そんな事があったので最初は田中さんと距離を置こうと思っていました。ですが1週間たっても2週間たっても田中さんは元気な様子でしたので声を掛けてみたくなりまして……」

 なるほど、それであんな事を急に聞いてきたって訳か。仮にも「何か」あった部屋の隣に住んでいるわけだし不安を拭いたかったんだろう。しかし部屋の外にも憑いてくるとかやばいな……しかし水野には見えていないということは色々条件みたいなものがあるのだろう。


「それで田中さん? 田中さんの周りで起きている心霊現象について知りたいのですが」

 こいつクール可愛い見た目の癖にミーハーか?いや逆の立場なら知りたいと思うな、しょうがない包み隠さず教えてやるか。

「インターホンが鳴るのは聞きました。それ以外には何か?」

「いやそれだけ」

「……以前の方と余りにも違いすぎますね。何故でしょう?」

「俺が霊感ゼロだから見えてないだけかも」

 頭を掻きながらそう言ったが水野は何か考え込んでいるようだ。だがもう良い時間だ。もう少し可愛い女の子とデートを楽しみたかったがこれ以上付き合わす訳にもいくまい。

「もう良い時間だし、最後に大事な事を教えてくれないか?」

「……あっ本当だもうこんな時間。良いですよ、何が知りたいんですか?」

 少々緊張した顔で言う水野に対して、

「さっきファミレスに誘おうとした時笑っていたけど何でだ?」

「え? そ、そんなことですか?」

 そんな事ではない!まさかファミレスを馬鹿にするお嬢様学生だったとしたら説教の一つでもくれてやらなければ……と思っていると水野は照れながら、

「恥ずかしいけれどちょっと警戒していたんです。遅い時間だったしお酒の飲めるところにでも連れて行こうとするのかな……って。でもファミレスやハンバーガ屋を挙げてこられたので何だか気が抜けちゃって」

「いや、ファミレスでも警戒すべきだと思うけど」

「そうなんですか? でも私が誘われるのはそういうところばっかりですよ? ですから何だか安心しちゃいました……田中さんがそう言うのなら今度から気を付けます」

「まだ未成年なのに誘われるのか、大変だなもてる女は」

 若干同情しながら言ったが水野は、

「今は『未成年なので』と断っていますが結構疲れます……それにもてている訳ではないかと。彼らは表面上だけしか見ていないので、恋愛感情とは違う感情で動いている気がします。そんな人達に誘われても疲れるだけです」

 なるほど、もてる女はそれなりに苦労もしているようだ。しかしそんな考えだとせっかくの大学生活もエンジョイ出来ないんじゃないだろうか、もったいない。


 水野と二人帰路につく。途中水野の大学生活について聞いてみたがあまりエンジョイしていなさそうだった。大学は勉強するところで遊ぶところではない、友人とは、恋愛とはこういうものだ、など色々固かった、何より表情が。決して間違ってはいないのだが……。

 部屋の前に着き水野と別れる直前におせっかいをする事にした。

「水野、もう少しだけで良いから肩肘張らず楽に生きな。そして色んなことを楽しめよ」

 じゃあな、と手を上げて別れた。余計なお世話だったろう水野は何か言おうとして、でも何も言わず会釈だけした。もう会話する事もないだろうな、残念だけどしょうがない。




「やっさん最近お金無いって言わないっすね? ひょっとしてオーディションが上手く言ってるとか!?」

 いつものバイト中いつものチャラが何か勘違いをした様子で話しかけてきた。

「何を言っているんだよ、お前のお陰だろ?オーディションの事は……言うんじゃない。昨日落ちたばっかりなんだ」

「そいつは失礼しやした……え? まだ住んでいるんっすか!? いつもと変わらない様子なのでもう出て行ってるものだと……」

「あんなに部屋が良くて家賃が安い所は無いからな! せいぜいテレビや睡眠の邪魔されるくらいだし。ところでお前何であの物件知ってたんだ?」

 そう言うとチャラ男は語りだした。以前そこに住んでいた事、2週間で逃げ出したこと、心霊現象の数々(大体以前聞いたものと同じだった)。

「さすがやっさんっすね! でもインターホン鳴ること……無かったすけどね」

「そうらしいな、隣人に以前の入居者について聞いたがそいつもインターホンは鳴らなかったらしい」

「なんでやっさんだけなんすかね、霊感?なんてそもそも存在するのかわからねえっすし……一応気をつけてくださいねマジで」

 分かってるよ、とあくびをしながら答えた、こいつに真面目に心配されるのは少々照れるものがあるので。

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