±幾らのバランス
わかっていない方がいると本当に困るので前書きに書かせて頂きますと、本作に登場するキャラクターの思想は必ずしも作者の思想と一致するわけではございません。こればっかりは念のために言っておかねばならない。なんせ、核兵器について取扱う話がここからは多く出てくると思うからです。
日本人の核兵器に対する反感は非常に根深いものがあります。この作品にはいわゆる過激思想を持ったキャラクターも登場しますので、核兵器についても皆様の逆鱗に触れる発言をキャラクターが行うことがあるでしょう。
そもそも論を言ってしまえば過激思想とは、議論でもって打ち負かし選挙によって政策から排してこそ健全な排除方法であり、ネットにとどまらず様々なメディアが軽々しく私刑を執行するのは非常に不健全であると思うのですが、それは置いておきましょう。
第1章の前置きにも書いたように、僕の思想は「レッテル貼や同調圧力による風評被害、人格批判等の削減、ならびにそれらを恐れて政治的活動を行えない風潮の廃絶」によって健全な民主主義が実現すると言うもの。できれば、此れに留意しながら本作を読んで頂きたいものです。
ー日時不明ー
懲戒免職、それが私の最終的な処分か。公的機関なだけにきっちりしていて、30日間の猶予がある。けど、これが意外に厄介だ。自分を売り込む時、この機関の名前を紹介しなきゃいけない。本来なら、公的機関の幹部級研究員という肩書きは就職において非常に有利なはずだ。むしろ、天下り先を用意してもらえることすらある。
けど、今回ばかりはむしろその金塊が、十字架となって私の身のこなしを鈍くしてしまっているんだよなぁ、、、
さてこれからどうするか、、、一応のビジョンはあるけれども、なかなかにリスキーだな、これ、、、
”相手”が信頼できる人間かも分からない。最悪、あった瞬間に襲ってくるかも知れない。
けど、もうこれくらいしか取れる道がないな、、、おとなしく実家に帰って余生を過ごすとか、適当なアルバイトをこなして食いつなぐなんて、私のプライドが許さない。というか、モチベーションが持たないと思う。
それに、実家の家族やコミュニティーにも、きっともう見放されてる。アルバイトだって、雇ってもらえるかな、、、
多分どちらも、数ヶ月も経てばなんとかなるレベルにはなるだろうけど、今の私には、、、その機関の収入無しはあまりに苦しい。実家に仕送りを打診するのも嫌だ。
仕方ない!いつも通り、我が道を行きますか。行動あるのみ。
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ー2024年8月1日ー
士官学校への在学経験から、タイプライターの扱いに慣れているのは幸いだっただろう。数十分の格闘のすえ、この鉄のノートは所有者の命令によって動く機械であることを理解した。ドイツ軍のエニグマ暗号機を触った経験から、一定のマニュアルを備えておくことで複雑な命令を実行出来るという仕組みに何とか気づくことができた、、、が、その先が全くわからない。
[・・・ー ・・・ー ・・・ー]
、、、
だめだ。中央にある何に使うのかわからない横長のボタンを押して見たが音さたなしだ。エニグマの発展型であればモールス符号の通信用かと思ったが、なんら動きはない。
そんなことを試していたら、玄関のチャイムが鳴った。そんな文化は無かったはずなのに、なぜかそれが呼び出しチャイムであると気づいた俺はこれまた壁についたよくわからない箱のボタンを押した。
「、、、」
モニターに映っているのは、おそらく玄関先の映像だろう。と言うことは、来訪者はこの女子か。こちらから「はい」とか言わねばならないのだろうが、いまの日本がどうなっているのかもわからない。ただ黙るしか無かった。
『、、、あー。とりあえず、日本語は話せますか?』
「お前、俺の現状が分かるのか。」
『大体のことしか分かりませんよ。家にあげていただきたいのですが、私はあなたを警戒していますし、あなたも私を警戒している。』
「このよくわからない画面越しに話すしか無さそうだな。不可侵はソ連を守るものでは無かった。」
『あなたは歴史家か何かで?』
「いや、傍観者だ。」
『、、、やはり詳しく話を聞くには上がらせてもらうしか無さそうですね。いいでしょう、私から先に情報を話します。そうしたら、家に上がらせていただいても?』
「、、、」
『私はJAIVA、日本宇宙航空研究開発機構(Japan Aerospace Investigation eVolutionAgency)の大舎 多摩と言うものです。私のチームでは、主に核融合発電に関する研究を行なっています。ここまでは理解できますか?』
同意を撮る前に勝手に話し出すとは、、、それに、自分から情報を出すと言いながら、結局こちらの情報を引き出そうとしているじゃないか。
だが、やはり今は情報収拾が先決か、、、
「まるっきり分からないな。日本にJAIVAなんて組織は無かったはずだし、核融合なる概念もまるっきり分からん。」
『原子核も分かりませんか?』
「士官学校を出たから、一応概要は覚えている。」
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自衛隊の場合は幹部過程のはず。となると、旧帝国軍人かな?原子核の概念が定説となった後なら、だいぶ範囲は絞れるけれど、、、
『では米国が新型爆弾で広島、長崎を焼き尽くした件については。』
『どういうことだ!?日本は米帝の工作によって大衆政治となり傀儡化されたはずだ!なぜなんの脅威もない国に対して攻撃を行う。まさか日本は米帝を裏切ったのか!?』
傀儡化、、、?ただのタイムリープじゃ無いってことか。
さて、詳しく話を聞かなきゃなんだけど、、、警戒して入れてくれないかな、、、?
けど、アメリカのことを「米帝」と言ったな?こいつ。ってことは、旧帝国軍人という予想はおおよそ当たりか。もしそうだとしたら、何が何でも情報を集めたがっているはず、、、
「さて、これ以上の情報はタダではありません。あなたは私の話す情報をもっと知りたいでしょう。」
「こうして話している時のあなたの言動から、私はあなたのことをある程度信頼できる人物だと思いました。利害は一致しているはずです。家に上がっても?」
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それで隠しているつもりか。おそらく、こいつも俺の情報が知りたいのだろう。
、、、しかし、確かに利害は一致しているか。
「、、、良いだろう。」
それらしいボタンを押すと、箱から少々耳障りな電子音が流れる。
『解錠ボタンがわかったんですか。』
「それについても、だ。」
エニグマ暗号機
ナチスドイツの誇った当時最高と言われる暗号装置。アルファベットを打ち込むとある規則性で別のアルファベットへ変換される。例えば、AAAと打ち込んだ時にKGBとなったりする。この規則性は本部でランダムに作成され、8時間毎に所有者へ通達された。
尚、エニグマ暗号を解読するのに用いられた機械はポーランドで作られ、イギリスで改修と「世界初のプログラミング」とも言える運用をされたものであり、この時の技術が現在のコンピューターの基礎となっている。
Wikipediaより引用
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SCPのヒューム値設定を使うとかいうあんまり面白くない考えで書いていたものを、大規模改修工事しました。