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226のフィクサー

 民主主義は、国民が多角的な情報を得、自己の信条で考え、活発に議論するからこそ成り立ちます。


 しかし、今の日本はどうでしょうか。インターネット上で改革的発言をすればパヨクと罵られ、逆に保守的発言を行えばネトウヨと罵られる。反原発と左派が同一視され、レイシストと右派が同一視される。反原発と戦争反対が同一視される。軍事オタクと戦争好きが同一視される。基地建設がレイシストと同一視される。


 そしてあらぬ誤解を招き無用なバッシングを受ける。あるいは政治的主張が異なる人間に反論を超過した人格批判を受ける。


 これらを恐れ、日本人は自ら政治的な発言を行うことを避ける傾向にあると私は考えています。皆、政治に絶望している。これが私は非常に怖い。政治不信は、ヒトラーのような独裁者を発生させかねないからです。


 この小説は、転生モノしかなろうではウケないと悟った私の自己満足作品であり。また、日本社会に対する啓蒙です。


 もし、全体主義者がWW2から現代転生してきたら。きっとその時日本は、、、

ー満州某所 関東軍某駐屯地ー


「日向大尉、本日付けで一等兵へ降格、中隊長の任を解く」


「ちょ、ちょっと待ってください! 下士官位をすっ飛ばしての降格など聞いたことも」


「チャハルの一件で貴様に任せた砲兵隊、ありゃ何なんだ。何をどう間違えれば10km離れた前線補給地点を吹き飛ばすんだ。ええ?」


「そ、その件については誠に申し訳ありません。私としても、すでに補給車はその場を去っており直接的被害が出なかったことは英霊に感謝してもしきれず」


「直接的被害がなかったからなんだというんだ、話をそらすな!あんな無能軍団を抱えるくらいであれば、その分の補給を捕虜にでも食わしたほうが幾分マシだ! 戦場の女神ってのは、いつから堕落と消費の邪神になったんだ!?」


「それはその、ほら、千年兵を養うは」


「貴様らのような無能中隊を千年も養えるか馬鹿者が! 第一貴様はこの基地に配属されてからずっと嫌いだった。口八丁手八丁で階級を積み、実戦を避けに避け…………実力を伴わぬ兵を養う余裕など我々関東軍にない!味方誤射で軍法会議にかけ、射殺してやってもいいんだぞ。軍に残れるだけでもありがたく思え!この詐欺師が」



「ハァ……」


 兵舎の寝床に腰を掛け、溜め息を一つ。

 まぁ、こうなることは中隊を預かりしばらくしてから薄々感づいていた。いや、そもそも軍に入ったことが間違いだったのだろうか。


「詐欺師……ね」


 青臭い言葉に陶酔したりなどしない。そうならないよう、自己を常に律している。だがそうであっても、自分のことを評価した「詐欺師」という言葉には納得してしまった。

 ガキの時より、俺は口が達者なばかりで実際に成果を上げることのできない人間であった。口ばっかりで実行力の乏しい人間、それが俺だ。そんな奴が商いをしたり、会社に勤め上げるなどということができるはずも無い。上の命令に従っていればよく、各員立派な訓練を受けている軍隊であればなんとか食っていけるかと思ってはみたが、やはり俺のような人間は人の生き死にを扱うようなことをするべきではなかったのだろう。


 さて、これからについて思案しなければならない。俺は中隊長として人に指示を出す立場から、兵士として戦場で戦う立場に転落してしまった。その上、司令に嫌われていることを鑑みると、前線に駆り出され早死にさせられる可能性もある。では、軍を抜けるか? 果たして認められるだろうか。あの司令のことだ。自決を強要してくる可能性もある。


「隙を見て軍を抜けるしかないか……?」


ー同刻 帝都東京ー


「上村……帰ってこれないか。今、其処にね。あー将校はおるか?」

『……』

「もうこうなったらね……抵抗しなければね……えー、何にもやらないで、こちらへも受け取ってくれるわけだ」


 安藤隊の立てこもる料亭「幸楽」へ、元上官、高橋中尉が降伏勧告を行っている。


「君らが機関銃をバリバリ撃てばだね、こちらでも断然射撃はするんだ。もう、君らなんかもう……」

「グルッと巻かれているんだよ? もう大砲なんかもね……」


 高橋中尉はそう言うと、不満げな顔をしながら高台を見上げる。


「……すでに砲撃準備が完了しているんだ。抵抗して勝つつもりあるのかい?」


『……』


「え、もしもし?もしもし?」


『……リットン調査団派遣以来、御上の方々は随分と米国とよろしいようじゃないですか。安藤さんから聞きましたよ』


「……」


『米国は今まで日本との戦争を誘発し、軍事的に支配をすることで太平洋における覇権を握ろうとしていた。しかし、リットン調査団が派遣されて以降、その政策が変わっているとか。どうなんです?』


「君は何が言いたいんだ」


『その大砲はどうやって用意したのか、と言う話ですよ。我が国の統帥機構を鑑みれば、機関銃隊である我々がこの短期間に大砲を用意するのは難しい。第三者の支援があるのでは?』


「…………。」


『……あなた方統制派は米帝に媚びを売る売国奴だ。我々皇道派は決して屈しない。他の隊は知りませんが、安藤隊は皆その覚悟です』


「……そうか」


ー数年後、1943年末ー


 226事件を利用し覇権争いに勝利した統制派は、より権力を強固なものに……せず、日本の民主化を推し進めた。それに対し不信感を抱いた関東軍の一部部隊が蜂起、日米多国籍駐屯部隊との小規模な戦闘が各地で発生することになる。


「そして俺の隊も衆愚傀儡政治の魔の手から祖国を守るため蜂起し、米帝の卑劣な攻撃により敗北した……以上が、私がドイツへの政治亡命を希望する理由です」


「了解しました、Frau Hüga。亡命申請が受理されるまでの間、しばらくはこの西ポーランド総督府にて生活していただきます。問題ありませんか?」


「はい、ありません」


「では案内をさせていただきます、こちらへどうぞ」


 促され、欧州式の建物の廊下を、カツカツと音を立てながら進む。


 俺は関東軍の人間だ。関東軍の主敵は、ボリシェヴィキロシア。米国を主敵とする海軍とは相入れない存在であったから、実のところそこまで米国は恨んでいなかった。だから米帝なんて呼び方はしたことがない。だがおそらくそんな事は、ドイツ一介の官僚である彼にとってあずかり知らぬ事だろう。それに少なくとも今回の件で、米国は憎むべき敵となった。俺にとって。


 後からわかったことだが、リットン調査団は満州で油田を発見していたらしい。そこで日本を権力分散、民主主義化させ経済的に油田を抑える方針へ転換したというわけである。全くリットン調査団は小賢しい連中だ。国連や、母国である英国にすら発見の事実を伝えず、米国にのみ伝えたのだから。


 国連でおおっぴらに発表していれば、ソ連は南下政策をより強めていたことだろう。それは英国のソ連南下阻止と言う国家方針に反する。そこで英国のみに伝えるか、超大国たる米国に伝えるか、両方の得を天秤にかけたのだ。


「食事等はどうすれば?」


「亡命申請が受理される、または拒否されるまでの間は朝と夕方に食事が出ます」


「今日は何が出ますか?」


「ピエロギというポーランド風の餃子です」


「それはありがたい、祖国の味を思い出せそうだ」




ピエロギ


様々な具を詰めたランプリングまたは膨らまない生地を茹で、または焼いて作る東欧周辺の料理である。スラブ諸国やバルト諸国で人気があり、ウクライナ、ポーランド、スロバキアの国民食。

アジアの餃子と比べ皮が厚めの傾向にあり、薄皮のものをピエルク・ヤポンスキ、日本風のピエルクと呼ぶ。


Wikipediaより引用

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