第4権のメディア
前の部にて、早い段階で敵組織の謎を明かすという駄目を打ってしまったので、該当部分を改稿しました。また、よく改稿をしてしまうので、今後から大きな変更点があった際には、最新の部の前書きにて報告いたします。
「飛鳥部先生、そろそろ始まります。」
「そうですか。構成作家として、権力監視という使命に最善を尽くしました。今回もうまく行くでしょう。」
、、、嘘は、吐いてないハズ。
我々メディアの仕事は、武器商人に似ているとそう思う。古くから存在し、決してなくならない。そして、必要不可欠な存在だ。
民主主義のシステムにも報道は不可欠だ。国民が情報を得て戦えるようにするという仕事。
逆に、意図的に世論に論争を起こして、それぞれの陣営に情報という武器を売りつける、これが稼げるはずだ、と考えた時。気がついたら私はこの道にいた。
これだけだとまるで我々が悪の組織かのようだが、その実メディアとして至極健全な仕事しかしていない。我々は、我々が行ってしかるべきことしかしていないハズだ。それで世間に悪影響が出ているというのなら、それは民衆のリテラシーが少ないのが原因だろう。我々の責任じゃないだろう。
今回も例に漏れずだ。この一手を膨らませて、仮想敵を”葬らせる”。小さな風をあおって巨大な風見鶏を動かし、その質量で権力を粉砕する仕事。ああ、なんて大変なお仕事。
オンエアーしたところで、携帯に着信が来る。
表示は、[飛鳥部隠岐]
「や、仕事の方は順調かい?」
『父さんのお陰でね。今回のスキャンダルも、動画のネタにさせてもらうよ。』
「だろうな。今回はどうするんだ?同調路線か、それとも反発路線か。」
『今の所同調する予定だけど、何かあったら反発路線に変更するための予防線も貼るつもり。だから、そっちも油断するなよ?』
「ああ、おそらくその心配はないだろう。」
全く都合のいい悪だ。
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まずい。事態は非常に深刻だ。
多摩の策略で相互依存関係になってしまった以上、彼女の不利益は俺の不利益だ。それに、まだ俺自身の本名は出ていないが、もうとっくに報道局は掴んでいるはず。『彼は官僚である』という確証を得ているのだから。つまり相互依存関係を脱したところで、俺は一生報道の手の平で踊らされることになる。
そんな風に俺は、至極論理的に現状を憂いていたが。目の前で明らかに放心している彼女はどうなのだろう。彼女の思考回路こそ論理的な筈だが、そんな顔には到底見えない。
「、、、どうする。」
呼びかけに応じる気配はない。先の報道で言っていたような「悪びれる様子なく開き直るだろう」なんて衆愚らしい発想はまず間違っているらしい。こんな境遇に置かれた人間を見るのは、これが初めてだ。
まじまじと観察しながらそんなことを考えていると、なんの前触れもなくポケットの中に手を伸ばす。
「、、、おい、何だそれは。」
ポケットから出てきた手には小さな金属板が握られていた。そこにあるボタンを押すと、モニターらしきものが映る。
あの”開く金属板”を小型にしたようなものか。平時なら目から鱗に食いついているところなんだが、、、
彼女はそれに何かのコードを差し込むと、もう片方の二股に分かれた部分を耳に入れる。
そういえば、結局テレビの操作法を教えて貰っただけで、その類の機器の操作法は教えて貰っていないことを思い出した。
「、、現実逃避です。」
、、、期待できないか。
「はぁ、、、俺が何とかするしか無いらしいな。」
「無理ですよ!」
間髪入れずに指摘して来る。
「、、、説明しなくても、わかるでしょ、、、詰んでますよ。」
堪忍袋の尾が失せたかのように。
「お前、やっぱり俺のことを侮っている節があるだろ。」
確かに俺には、こいつほどの行動力なんてない。だが同時に、こいつのような猪突猛進さも無いし、俺は言いくるめに関していえばこいつの何枚も上手だ。こいつとの契約が成立してしまったのは、転生してから少ししか立たず情報が少ないという圧倒的不利の状況で、交渉のテーブルに着かざるを得なかったから。瞬間的な需要に突撃しただけだ。
「、、、そんな事はないですよ。」
「確かに難しだろうが、それでも”やらなきゃいけない”んだろう?」
言われた言葉を、そのまま返してやる。
「腹ァくくれよ日向多摩。帯がないと腹括れないような世代じゃないだろう!?」
おそらくだが、俺に腹を括らせる為にこいつは自らにも”それ”を課し、常に自己を律していただろう。その習慣を呼び戻す。
「ーー好きにしてください。」
「、、、終わったら、その板の使い方教えろよ。」
放送作家
放送作家とは、テレビ・ラジオ等の制作に於ける「企画・構成」と呼ばれる仕事を専門に行う作家である。構成を行う作家の意で「構成作家」とも呼ばれる。ラジオ業界では、構成作家の呼び方が一般的。
定義が曖昧であるのか、あるいは実態があまり明かされていないのか、Wikipediaにはこれ以上の情報が書かれておらず、また日本主体で書かれるのみであった為国際的に客観視された情報を得ることが出来なかった。
Wikipediaより引用。