国王に謁見
勇者の皆様がお部屋で休んでいる間に王女は父上が待つ私室で召喚された勇者についてメイドが入れてくれた紅茶を飲みながら報告をしていた。
「父上、勇者の皆様をお部屋で休ませておきました。」
「そうか、それでお前の見た感じはどうだったのだ?」
「何名か面白そうな方はいました。」
「ほう・・・、面白そうとは?」
「はい。とても真っ直ぐな性格を持っている方がおりまして、もしステータスがよかったら勇者の称号を得るかもしれません。」
「なるほどな、その者は期待ができそうだな。」
「それと私自身が一番楽しみにしているのが誰よりも早く正気に戻り、私に色々と質問をしてきた方ががおられました。」
「頭が良く回るものがおるのか扱いには気おつけんとな。」
「それは大丈夫かと思います。彼の隣でずっと手を離さなかった少女がいましたのでたぶんその子のためかと・・・。」
すると王女が持っていたカップになぜがヒビが出来ていた。
「守るために戦う者か、そう言う者は強くなるかも知れんな。ん、どうしたのだシルヴィアよなぜワシを睨む」
「いえ、何でもございません。」
「そ、そうか、まぁ何にせよ今夜の謁見を楽しみにしておこう。謁見の時はシルヴィアよお前も出るようにな。」
「はい勿論です。」
数時間後、俺達は謁見の間に案内された。
道中さすがに鈴も恥ずかしくなったのか俺の服を掴まなくなったがしっかりと隣を歩いていた。
柱真達の視線がすごいウザかったが・・・。
王国からは大臣や煌びやかな鎧をまとった騎士や衛兵などかなりの人達が参加していた。
そんな中、王国側の人達が緊張していると思っていると、
「ダニエル・アースガルド様のご入場!」
その声の後に、国王らしき人とシルヴィア王女が入って来た。
国王は俺達を見渡しながらゆっくりと王座に向って歩いて王座に座ると国王は声を発した。
「勇者諸君よ。この度は召喚に応じて感謝している。今我が国はとても危機に瀕している。ぜひ皆の力を借りこの危機を脱したいと思っている!どうか我が国を救ってくれ!」
国王はそう言うと立ち上がって頭を下げてきた。それに続いてシルヴィア王女も頭を下げた。
その状況に国のお偉い方達が慌てだしてしまった、まさか国王と王女が頭を下げるとは思わなかったんだろう。
その王様の行動に俺達も緊張していると有馬が国王に発言した。
「国王様頭をお上げください。俺達はまだこの状況に困惑していますが、俺や皆もこの国の為民の為に闘いたいと思っています。」
(おい!俺達はまだ戦うかどうか決めてないのに勝手に進めるなよ!)
有馬に賛同している者は何人かは頷いていたが、まだ戦えるか分からない者達は困り果てていた。
「それはありがたい。勇者よ名はなんと申す。」
「はい。有馬優輝と申します。国王陛下」
「うむ。ではユウキよ皆が力を貸してくれるのでよいのだな?」
「はい!もちろんです!国王陛下!」
(おいおい、何か話がヤバイ方向に進んでいないか?)
俺がそう思っていると隣にいた鈴が震えながらに俺の腕を掴んできた。
まぁ無理もないだろうなこのまま有馬の独断で話が進んでしまったら、戦いたくない奴等まで戦う事になりそうだからな。
俺は仕方がないと思いながら二人を落ち着かせてから国王に発言した。
「国王陛下少し宜しいでしょうか?」
「構わぬ。お主の名はなんと申す?」
「天野空と申します。有馬はこう言っていますが自分達はまだ戦う力があるかどうか分かりません。ですので全員が戦争に参加できるかどうか今この場所で決めれないと思います。」
「確かにそうだな。今は戦う意志があっても後で戦えなくなる者が出てくるであろうな。」
「はい。ですので誠に申し訳ないと思っているのですが、戦争の件はまた後日でお願いしたいのです。」
「うむ、勿論かまわぬ。お主達にとっては大事な事だからな今すぐ決める必要はない・・・その辺りの話はシルヴィアとするがよい皆の者もそれでよいか?」
その言葉で固まっていた者達は皆、首を縦に動かしていた。
「では謁見はこれで終わりにしよう。晩餐会の会場まで案内させておく、存分に楽しんでくれ。」
俺は鈴と一緒に歩いていると後ろの方から有馬が迫って来ていた。俺は鈴を姉さん達に任せて相手をする事にした。
「天野!みんなで国の為に戦おうって時に何であんな水を差す事を言ったんだ!」
(おいおい、皆って誰の事言ってるんだ?)
「君のせいで戦いたくないて言ってる人が出てきたんだぞ!皆の足を引っ張るような事はしないでくれ!」
(え!?何でそうなるんだ?)
「なぁ有馬、皆が参加するっていつ言ったんだ?少なくとも俺達は言ってないぞ。それに他の奴ら参加するって言ったのか?」
「皆からはまだ聞いてはいない!けど、俺達は勇者として召喚されたんだ!皆で戦うのは当然じゃないか!」
「それに!困っている人を助けるのは勇者の義務だ!」
「じゃあお前は星野さんや栗原を殺し合いに参加させたいって事か?」
「二人には殺し合いはさせない!」
「つまり二人は戦わないって事でいいのか?」
「当然だ!そう言ってるだろ!」
俺は有馬の言葉に呆れ果ててしまった。
「だったら他の奴らも自由参加でいいよな?後方支援をしたい奴もいれば戦争自体をやりたくないって奴は城に居てもいいんだよな?」
「そ、それとこれとは話が全然違うだろ!」
「いや同じだろ?なんで二人はよくて他の奴らはダメなんだ?それだと他の奴は死んでくれって言ってるんだぞ?」
「俺は別にそんな事は言っていない!話をすり替えようとするな!」
「いやそう言ってるぞ・・・とにかく参加は自由なんだから他の奴はともかく俺達は自分達で決めるからよ、俺はもう行くぞ。」
俺はそう言って歩き出した。
「おい待て!話はまだ終わっていないぞ!」
そんな事を言っているが無視をした。
少し先に行った所で星野さんと一緒にいた栗原が話しかけてきた。
「ごめんなさい。天野君。」
「あのバカの相手をさせてごめんね。天野君。」
「なんで二人が謝るんだ?なんか有馬の奴この世界に来た事で暴走しかけているみたいだからな注意した方がいいと思うぞ。」
「そうね。少し行って来るわ。」
「ああ、頼んだ。俺はもう行くわ。」
俺がそう言って行こうとした時に今度は星野さんが話しかけてきた。
「ねぇ、天野君。」
「どうしたの?星野さん?」
「天野君は戦うのは怖くないのかなって思ってね。」
「う~~ん、怖くないって言ったらウソになるけど、一番怖いのは姉さん達を守れない事かな?」
「そっか、なら頑張らないとダメだね!」
「ああ、お互い頑張っていこう。」
「うん!」
星野さんは笑顔でそう言うと栗原の所に向ったので俺は部屋で休むことにした。
だけど俺はその時気づいていなかった人ごみの中で俺達を見つめていた人物の事を。
勇者の謁見が終わった後、王女は国王の私室で話をしていた。
「父上どうでしたか?勇者の方々の様子は?」
「うむまだよく分からぬが、ユウキと言う者は少々正義感が溢れていているが少し危なっかしい所があるな。」
「そうですね。あの者は少し危険な感じはありますね。」
「あの者は、正義感が強過ぎる所があるな。貴族などに利用されぬように気おつけておくようにな。」
「はい。わかりました。」
「それとソラと言ったかな?あの者がお主に質問した者だな?」
「あの者は気転が利くようだな。能力によってうまく使えるのかも知れんな。」
「そうですね。特に称号に期待したいです。きっと私達の力になると思います。」
「ほう・・・お主がそこまで言うとは相当あの者がお気に入りなのだな。」
「な!何を言っているのパパ!?」
「言葉使いが昔に戻っているぞ。」
「そ、それでは私は晩餐会の準備をして来ます!」
王女はそう言うとさっそうと部屋から出て行った。
「まったく昔からあいつの好みは分からぬな。」
そう言いながら国王は父親の顔になるのだった。
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