この世界の状況
俺は目を覚ますと目の前に見たこともない風景が広がっていた、そこは学校の体育館並みの広さがあり壁には美術館にありそうな絵画や銅像などが置いてあり、足元には先ほど教室に現れた魔方陣と同じのが書かれていてその周りには黒いローブを着ている人達が歓喜の声を上げていた。
そんな状況に驚きつつも俺は周りを見渡し、一緒に来てしまっていたクラスメイト達や姉さん達がいる事を確認すると俺は安堵の吐息を吐きつつみんなのところに行き無事を確かめようとした時にそれを遮る扉が開く音と少女の声が聞こえてきた。
「よくぞ! 来て下さいました! 勇者の方々!」
俺達は声が聞こえた方に目を向けるとその場にいた全員が息を呑んだ。
その子はエリナよりも濃い金髪の少女で多分俺達よりも年下か、鈴と同い年位に見え、その少女が着ていた服はまるで映画などに出てくる貴族が着ていそうなドレスをしていて、淡いピンク色の生地の上に鮮やかな刺繍が施されていた。
そんな事を思っていると痺れをを切らしたのか、姉さんがその少女に話しかけていた。
「初めまして、私はこの子達の教師をしている天野琴音と申します。今はこの子達の代表としてお話を聞かせてもらってもよろしいいでしょうか?」
「はい、こちらこそ初めまして、私はシルヴィア・アースガルドと申します。どうぞ気軽にシルヴィアと呼んでください。」
シルヴィアと言う少女はそう言うと俺達に頭を下げた。すると少女の後ろからメイド服を着た女性が少女に話しかけていた。
「お嬢様、そろそろ。」
「そうですね、では勇者の皆様、こんな所では、皆様が落ち着かないと思いますので別の場所でお話をしますのでどうぞついて来て下さい。」
俺達はそう言われて部屋から出ると廊下は先ほどいた部屋と同様に壁際に絵画や銅像があり、天井にはシャンデリアのような物がたくさん吊るされていた。ふと窓の外を見るとそこには映画やアニメで見たような光景が広がっていた。
俺はその光景に驚きつつも鈴達と一緒にこの状況を整理していた。
「お兄ちゃん、これって現実なのかな?」
「まずは話を聞いてみないと分からないな。秀はどう思うんだ?」
「僕も君と同じようにあの子の話を聞いてみないとね、でも状況は最悪とみて間違いないと思う。」
「だよなぁ~、エリナはどうだ? 外の景色は見覚え無いのか?」
「ごめんねぇ~、ソラ、私もまったく見覚えない。」
エリナにそう言われて俺達は一斉に肩を落とした。
そんな中、俺は今まで思っていた事を鈴とエリナに聞いてみた。
「ところで二人ともいい加減に俺の腕を離してくれなか。」
「「え!?」」
俺の言葉を聞いてエリナは顔を赤くしながらそっと腕を離したが、鈴の方はまだ少し不安なのか俺の服の袖を震えながも強く握っていた。すると後ろから嫌な視線を感じたのでそちらを見ると、柱真達がこちらを睨んでいたが無視して歩き出した。
そうこうしていると、俺達はまるで何処かの会議室の様な所に連れてこられた。俺達は空いている席にそれぞれ座るとシルヴィアと言う少女が話しはじめた。
「それでは。改めて初めまして、私はこの国アルテジア王国の王女です。」
どうやらこの少女はこの国の王女だったみたいだ。通りで綺麗なはずだと思っていたら、俺の両端に座っていた二人からおもいっきり冷たい目線で見られてしまった。
そうこうしていると、姉さんが代表としてシルヴィア王女に説明を求めた。
「それではシルヴィア王女。私を含めて生徒達もこの状況に訳が分からないと思いますので、説明をお願いしたいのですが・・・。」
「そう硬くならないでください。それでは皆様にご説明いたします。」
王女様の話によると、この世界はルミナスと言われており、俺達が召喚されたのはガルド大陸にあるアルテジア王国と言われる国らしい。
今この世界は他種族との争いが絶えず俺達はその争いを食い止めるために召喚されたらしい。
俺達が帰るにはこの世界に存在する迷宮内にある秘宝を手に入れば俺達は帰れるらしい。
その話を聞いた後もみんな声がでずにいた。
俺自身も声が出ずにいたが隣にいた鈴が震えているのを感じた為、俺はみんなよりも早く冷静になる事が出来たので王女様に質問してみた。
「王女様、質問いいですか?」
「はい。どうぞ。」
俺の言葉にシルヴィア王女は笑顔で言った。
「召喚は出来たのに帰すことは出来ないのでょうか?」
「申し訳ございません。あの召喚魔法は昔からある文献を解読したもので皆様を帰す魔法まではまだ見つけれらていません。」
「まだと言う事はこの先見つかる可能性があるのですね。」
「はい。秘宝が手に入らなかった時に備えて魔術師達が全力で解読中です。」
「その秘宝が手に入れば俺達は帰れるのですか?」
「過去にも召喚された方が居るようでその方々はダンジョンの秘宝で帰ったと文献には書かれています。」
その事を聞くとみんなが少し安堵していた。
「そうですか。それでは次にお聞きしたいのですが、俺達は元の世界では戦いとは無縁の一般人です。
この世界で戦う力があるとは思えません。」
「異世界から来た人達はこの世界の住人よりも能力は上だと聞いております。私が幼い頃から読んでいる絵本などの勇者は異世界から来た者達が多いそうです。」
その事を聞いてみんないきいきとし始めていた。なにせその手の話は俺達の世界にもあったから夢見るのは当然だと思った。
するとその話を聞いた秀がシルヴィア王女に質問をした。
「なら聞きたいのですが、絵本の話っておそらく魔王などを倒す話ですよね?」
「そうですね、魔王や邪悪なドラゴンを倒す話が多いですね。」
「でしたらなぜ僕達は戦争なんですか?先ほど空が言っていたとおりで僕達は争いとは無縁の世界で生きていました。そんな僕達が戦争なんて到底出来るはずがありません。」
秀の言葉にシルヴィア王女は顔を曇らせていた。
「それにつきしては真に申し訳ないと思っています。私達は後がないために、後先を考えている余裕がありませんでした。もう民が殺されて奴隷にされる姿はもう見たくはないのです。」
その言葉で俺と秀は困りながら顔を見合わせた。そして王女は俺達を見回すと
「どうかこの国のために皆様の力をお貸しください。」
そう言うと王女は頭を下げた。
秀は未だに納得はいかない顔をしたが、「分かりました。」と言った時に有馬が声を上げた。
「天野君と本間君それ位でいいんじゃないかな?シルヴィアさんが困っているじゃないか。」
(困っているのは俺達だって同じなんだが・・・。)
そう思いながら秀の方を見ると、秀も有馬の事ををバカだなと思いながら見ていた。
「シルヴィアさん、事情は分かりました。俺はあなた方の国のために戦います!」
「ふっ、お前ならそう言うと思ったぜ。俺もお前と一緒に戦うぜ。」
「竜馬!」
「今の話を聞くと、それしか道が無さそうだしねいいわ私も戦う。」
「わ、私も困っている人がいるなら助けたい!」
「凜音!、雫!」
いつもの四人組が賛同すると、それに同調したかなように他の生徒達も賛同してきていた。
その様子を見ていた姉さんは頭を抱えていた。
(みんな、戦うという意味が本気で理解して無さそうだよなぁ。)
俺がそう思っているとシルヴィア王女が
「皆様本当に有難うございます。ですがやはり強制は出来ません。戦えない方々達も城で保護する事をお約束致しましょう。」
(戦えない人達は城で保護してくれるのか、少し安心した。だがやはり何も分からない俺達がこの国を信用しすぎるのも怖い気がするが・・・。)
俺は鈴の顔を見ながらそう思った。
それにしても先ほどからシルヴィア王女が賛同していた有馬達よりも俺の方を見ながら微笑んでいるのがすごい気になるのだが・・・。
「もうご質問は無いでしょうか?無いのでしたらお部屋を用意していますのでまずはおくつろぎ下さい。」
王女がそう言うと先ほど王女に話しかけていた女性が他のメイド達を連れて部屋に入ってきた。
「部屋にはこのメイド達が案内します。その後父上と謁見し、夜は晩餐会を予定しております。」
(彼女の父親と言うとこの国の国王だよな、大丈夫かな?)
俺と同じ事を思っていたのか、姉さんが王女に問いかけた。
「王女様、すまないが私達一同王様に会った事がないのでよく分からないのですが・・・。」
「それについては大丈夫かと思いますので必要以上に畏まる必要は無いですよ。」
それを聞いて俺は少しホッとした。
「それと明日は、皆様のステータスリングの作成をします。」
「ステータスリングですか?」
「はい。皆様方の能力値や称号とスキルなどを記録する物です。これは念のため戦えない方々の分も作成します。」
「それを作るのに危険な事は無いのですか?」
「大丈夫ですよ。この世界での身分証だと思って下さい。」
「そうですか分かりました。」
その後俺達はメイドさん達の案内で、用意してくれた部屋に移動した。
その道中鈴はずっと俺を離さないから、周りからジロジロ見られたが開き直そうと考えていた。
すると姉さんがこちらに寄って来ていた。
「まったく鈴は昔から空に甘えているな。」
姉さんはそう言うと鈴の頭を撫でた。
「お姉ちゃん、恥ずかしいから止めてよ~~!」
鈴はそう言いつつも手を離さなかった。
「まぁこの状況じゃ仕方ないわね。ホント私達どうなるんだろうね。」
「まだ分からないな、まあ明日のステータスリング次第じゃないかな?」
「そうね・・・。いいかい空は鈴をちゃんと守るのよ。」
「分かってるよ。姉さんも鈴も俺が守ってみせるよ。」
「お兄ちゃん。」
「まったく弟が調子に乗らないの。」
姉さんは苦笑いしながらそう言った。
「それと秀君やエリナちゃんはともかく他の生徒達の事も注意しておきなさい。あの子達いつ無茶してもおかしくないからね。」
「だね、俺もこう言いたくはないけど異世界だからって事でタガが外れる奴は出てくると思うからな。
鈴も一応警戒したほうがいいぞ。」
「う、うん。分かったよお兄ちゃん。」
鈴は緊張しながらも頷いた。
「何かあったらすぐ私に言うのよ。」
姉さんは俺と鈴の顔を見ながらそう言った。
そん事を姉さん達と話しながら、俺はメイドさんに案内してくれた部屋でしばしの休息をした。
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