異世界へ
俺は学校に着いて、下駄箱で靴を履き替えているときに後ろからだれかに肩を叩かれたので振り返るとそこには同じクラスで学んでいる、幼なじみで親友の本間秀がいた。
「おはよう、空。」
「おう秀、おはよう。」
俺達はお互いにあいさつを交わしていると後ろから、突然声をかけられたので後ろを振り返るともう一人の幼なじみで肩まで伸びている淡い金髪が特徴的な、女の子の高橋エリナがいた。
「おはよう! シュウ、ソラ!」
「おはよう、高橋さん。」
「おはよう、エリナ。今日も元気だな。」
「シュウとソラは元気が無さ過ぎるんだよ、もう少し元気だそう!。」
「それは、無理だな。」
「だな。」
「もう! そんな事言っていると今日の新作料理食べさせてあげないよ!」
「「すいませんでした!」」
その言葉を聞いた瞬間、俺と秀は勢い良く頭を下げた。
それを見たエリナは笑いながら「冗談だよ」って言った。
そんな世間話をしながら俺達は自分たちの教室に向かった。
「そういえば秀、新人賞用の小説って出来たのか?」
「あともう少しで出来る。出来たら君達に最初に読んでもらうよ。」
「私たちなんかでいいのか?」
「もちろんだよ、君達は僕の作品をたくさん読んでいるからね的確なアドバイスをしてくれると思うんだ。」
「そうかなぁ、まぁ、楽しみに待っているよ。」
俺がそう言うと、秀は笑顔で「ありがとう。」と言った。
そうこうしていると、俺達は自分たちのクラスに着いたので俺はドアを開けて部屋に入った途端、男子生徒から舌打ちなどが飛び出してきたり、女子生徒から軽蔑の眼差しを受けた。
それだけならまだいいが、ちょっかいをかけてくるヤツはほんとめんどくさい。
「よぉ、オタク野郎! お前なに学校に来てんだよ! さっさと帰りやがれ!」
「そうだ、そうだ! お前がいるとクラスの空気が汚れるんだよ!」
「ほんとだぜ! なんでこんなヤツが俺たちの学校にいるんだぁ!」
そう俺に訳の分からない事を言うクラスメイトは柱真京介といい、毎朝俺にちょっかいをかけてくるグループのリーダー的存在だ。そしてその近くで馬鹿笑いをしているのは武山準と、五島大介の三人が毎朝、俺にちょっかいをかけてくるグループだ。
そんな中、俺たちはその三人を無視して自分達の席についた後に二人は荷物を自分たちの席に置き俺の席までやってきて先ほどの事で愚痴ってきた。
「何なのあいつ等!! 毎朝、いちいちソラにちょっかけてきてホンと鬱陶しいんだけれど!」
「確かに、いっその事、先生に報告するか?」
「そうしよう!」
「おいおい、二人とも少しは落ち着けって。」
「でもソラはいいの? あんな事言われて腹が立たないの?」
「確かに腹は立つけれどあの三人が言っていたことはホントだしなぁ、それ以上に家族に心配かけたくないんだよ。」
「ソラ・・・。」
俺がそう言うとエリナは悲しい表情をしていた。
そんな中、秀は自分のメガネを拭きながらある事を呟いた。
「まぁ、僕はなんであの三バカと他のクラスメイトがソラを毛嫌いしている原因はなんとなく想像出来るけどね。」
「えっ!? そうなの?」
「おっ、おい、秀その事は・・・。」
俺が秀を止めようとしていると、一人の女子生徒が俺にあいさつをしてきた。
「おはよう、天野君! 今日は遅刻せずに来たんだね。」
彼女はシュウやエリナ以外で気さくに話しかけてくるクラスメイトの一人なのだけれど俺がみんなから毛嫌いされている原因なのだが・・・。
彼女の名前は星野雫と言って腰まで届きそうな黒髪の子で同学年の中で一、二を争うほどの美少女の一人だ。
俺は家の手伝いなので徹夜をして学校では居眠りをすることが多いので訳を知っている人達以外からは不真面目な生徒だと思われているらしく、もともと面倒見の良い星野さんが俺の事をを気にかけているのだと思っている。
もしも俺がイケメンならまだ、許されたかも知れないが残念なことに俺の容姿は至って平凡だから、他の平凡な男子生徒はそれが許せないのだろう。(ちなみに秀は割りとイケメンだから例外だ。)
「お、おはよう星野さん、今日は妹に叩き起こされてなんとか遅刻せずにすんだんだ。」
その瞬間にも殺意のこもってそうな視線が次々と俺に突き刺さってきて俺は頬を引き攣らせながらもあいさつを交わした。
「そうなんだ、天野君の妹さんってお兄さん思いなんだね。」
微笑みながら嬉しそうに言う星野さんに俺は内心、なんでそんな顔をするんだ!?と、俺は思った。そして俺はふと後ろを見るとエリナがものすごい形相で星野さんを睨んでいた。
それに彼女の周りには俺には比較にならないほど、良い男がいるのに彼女の態度は不思議でならなかった。
俺はそろそろ、星野さんとの会話を切り上げようとした時に星野さんの後ろから三人の男女が近づいていることに気がついた。
「おはよう。天野君。今日も大変そうね。」
「おはよう雫。今日も彼の世話を焼いているのかい? 君は本当に優しいね。」
「全くだな、そんなヤル気もないヤツにはなにを言っても無駄なのにな。」
先ほど来た三人の中で唯一、俺にあいさつをしてきたのは栗原凜音は星野さんの親友で、短く切ったショートヘヤーがトレードマークだ。彼女は子どもの頃から剣道をやっていて、俺が一年だけ所属していた剣道部の仲間だったのだが俺が部活をやめた後あんまり話していない。
もう一人のおかしなセリフを言っていたのは有馬優輝といい、成績優秀でスポーツ万能の完璧超人でいろんな女性から好意を持たれているが、有馬の隣にはいつも星野さんと栗原さんがいるからなかなか告白する子はいなかった。
そして最後に投げやり気味の事を言ったのは、篠崎竜馬といい、有馬の親友で身長は俺よりも一回り大きい、大柄な青年で、あんまり細かい事は気にしないただの筋肉バカだ。
「おはよう。栗原さん、有馬くん、篠崎くん。まぁ、俺も悪いところがあるから自業自得だと思うよ。」
俺は三人にあいさつを返して苦笑しているとまた周りから、敵意むき出しの視線を感じた。
多分、俺が三人と話しているのが気に食わないのだと思う。
そうこうしているとチャイムが鳴り始めて担任の先生が入ってきて朝のホームルームが終わり、一時間目の授業が始まった。
そして四時間目の終わりのチャイムが鳴り、昼休みに入り、クラスメイト達はそれぞれの昼食を楽しんでいて、俺は秀とエリナと一緒に昼食に食べようとしていた時に教室の外が騒がしかったから見てみると鈴の姿があり俺は声をかけた。
「鈴どうした。こんな所まで来て。」
「お兄ちゃん、もうお昼食べ終わっちゃた?」
「いや、まだだけど、どうかしたのか?」
「久しぶりに一緒に食べようかと思ってね、ダメだった?」
「俺は別に構わないけど、二人は?」
俺は幼なじみの二人に相談してみた。
「僕も構わないよ。」
「私もいいよ。一緒に食べた方がおいしいしね。」
「秀さん、エリナさん、ありがとうございます。」
鈴は二人からそう聞くと満面の笑みになり、その笑みをみた一部のクラスの男子は頬を赤くしていたのが少しムカついた事は鈴には言えないなと思った。
そんな事を考えているとまた聞き慣れた声が聞こえてきた。
「なら、私も混ぜてもらおうかな。」
「「ひっ!!」」
俺と鈴はその声を聞いて途端、背筋が寒くなり俺は恐る恐る後ろを振り向くとそこには先ほど四時間目の授業の時に俺のクラスで現文を教えていた実の姉である琴音だった。
「琴音先生も一緒に食べたいんですか?」
「ちょうどタイミングが良さそうだったからね、イヤだったかい?」
「「そんな事ないです!」」
俺と鈴がそう言うと姉さんが、「なら一緒に食べようか」と言い結局一緒に食べることになってしまった。
その光景に他のクラスメイト達はまたしても嫉妬の眼差しで俺を見ていた。その理由はしごく簡単で学校外からもファンが多い姉さんの琴音と陸上部の次期エースとして噂されている妹の鈴と一緒に食べる事などありえないのだから。だがそんな状況になっても女神様は無慈悲だと思ってしまった。
「天野君もし良かったらですけど、一緒に食べてもいい?」
星野さんのその言葉で教室内がまた不穏な空気になってしまい、俺は困り果てて秀達の方を見ると全員もくもくとご飯を食べていた。
俺は内心ため息をつきながら抵抗を試みてみた。
「星野さんごめんな。 俺、ほとんど食べちゃったから有馬君達と一緒に食べてきたら。」
だが俺の言葉は星野さんにはまったく聞いていなかった。
「大丈夫だよ。私の弁当は少ないほうだから!」
そう言われて困り果てている俺に救いの勇者が現れてくれた。有馬達だった。
「雫こっちで一緒に食べよう。天野君達はほとんど食べ終わっちゃているからね。雫の料理を無駄にしてしまうのは俺が許さないよ。」
爽やかに気さくなセリフを言う有馬だけど、当の本人は首を傾げながら困り顔でこう言った。
「なんで、いちいち有馬君の許可が要るの?」
その言葉を聞いた俺の幼なじみや柚子達は口の中にあるものを拭き出していて、鈴は笑いを堪えるのに必死で姉さんはお茶を飲みながら「青春だねぇ」と呟きながら一息ついていた。有馬は笑いながらも必死に星野さんを説得していて、結果俺の席の周りに学校で人気のある生徒たちが集まってしまいさらに注目を浴びてしまった。
俺はその不思議な光景を見ながら深い溜息を吐きつつ、心の中で早くこの場を離れたいと思っていた。
そして俺は飲み物を買いに席を立った瞬間その場で固まってしまった。
俺の目の前にいた有馬達の足元に突然ゲームとかに出てくる魔法陣が出現してその異常な光景に他の生徒達も気づき始めた。
しかもその魔方陣は少しずつ教室全体に拡がっていく様子に、身の危険を感じた生徒達が悲鳴を上げ始めて、俺達と一緒にいた姉さんがみんなに「お前たち! 早く逃げるんだ!」と叫んだ同時に魔方陣の光が教室全体にまで広がた。
数分後、光が落ち着き始めていったのだが、そこには誰もいなかった。
アドバイスなど待っています。