第六話 「遭逢」
「うっ……」
気絶していたが、程なくしてメイベーは目を覚ました。
「……ど、こ?」
そこは、緑の苔と黒の岩で出来た洞窟?のような空間だった。
冷たい風が吹く。辺りに人は……いないが疑心暗鬼になっている彼は自分を囲んでいる全てに対して信用できなかった。
道は幾つかあったが、どれを選んで進むにしても先が分からないので判断に悩む。それ以前に、進んでも何かが起こるという可能性がない事もある。何をすればこの場から出られるか、少なくとも何かしなければならないが。
「………」
自身の知恵を振り絞り、考える。
「……!」
一つ思い付いたようだ。
「……あああああああ!!!」
突然叫ぶ始めた。
洞窟内に叫び声が響き渡る。
耳を澄ませる。
「……?」
一つだけ違和感を感じた道があったのでそちらへ行くことにした。
少しずつ進んで行く。
進んで行くごとに自然に発生したとは思えないぐらいの風が次々とこちらに吹き込んでくる。
やはり何かあるのだろう。そう確信し、奥へと歩いていく。
「……!」
少し光?のような物を見つけた。メイベーは駆け足で向かい、事実を確認しようとした。
「………」
光の先には明かりとなる物が一切なく、色んな生物の死骸が雑に放置されていた……人の姿は確認できなかった。
その生物の死骸の殆どがメイベーにとって初めて見る生物であった。彼自身が色んな生物を知らないと言うより、この殆どが人によって確認されていない未知の生命体であった。
その全てが説明するにはもう少し人類が生物について研究しなければ解明できないであろうモノだった。
似ている動物があるとすれば……カメレオンやウサギに似た死骸は確認できた。それでも大きさ等の点は決定的に違っていたが。
不気味に思いながらも辺りを見回す。
今のところ、これ以外に異常は……。
「……?」
妙な気配を感じた……メイベーはさらに警戒する。
その気配の影が見えた。緊張が加速していく。
……影のサイズが自分より小さいがそれでも油断はできなかった。
ゆっくりと近付いてくる……にしても、よたよたと歩いているような……。
「……!!!」
その気配は姿を現した。
「………」
その姿は木をそのまま小さくして枝を腕として使い、根を足のように歩いてきた。
樹洞が目のようになっていて、顔にようにも見えた。
「……!」
木はこちらを見つけてしまったようだ。
「……!!」
身構え、どんな攻撃が来ようとも避けようとした、が。
バタンッ!
よたよたと歩いていた木は途中の小石に根が躓き、そのまま前へと倒れてしまった。
「……!」
思わず駆け寄ってしまった。
「………」
その勢いで木の樹皮を触ってしまったが、彼は嫌がらなかった。
……明らかにこちらに危害を加えないと判断したのか、メイベーは木を起こして上げた。
「……!!!」
木は喜んでるのか、根を使って少しの高さであるがジャンプをし、枝を上下に振っている。
「……!」
こんな状況だが、この木の事を少し可愛いと思ってしまった。
少し心が和んだ気がした……ありがたい存在かもしれない。
バタンッ!
喜びをジャンプで表現していた木だったが、そのジャンプのおかげで、体勢を崩し、また倒れてしまった。
「……ハァ」
仕方ないと言った感じでまた起き上がらせた。
「……!!」
木はまたジャンプしようとしたが、流石に学んだかジャンプはしなかったが、メイベーの手に枝を摩りつけてきた。
「……?」
少し考える。
「……!」
そして、これが拍手をしたいのではないかと言う事に気付いた。
「……う、ん!」
メイベーは枝に手を握るようにして拍手した。枝は左右1本しかなく、先に2本に分かれてるぐらいで拍手する分には何も問題はなかった。
「ヌパー!」
「……ヌ、パー?」
喜びからの表現なのだろうか、それとも別の何を伝えようとしたのか。
「……ヌパー……な、の?」
「ヌパー! ヌパー!」
……正確に捉えられているかは不明だが、呼び名に不便なのでこの木をヌパーと呼ぶことにした。
そして抱き着かれた。
「ヌパぁ……」
安心したのか、抱き着いてきたヌパーは落ち着いているように見えた。
「……ヘヘッ」
そしてメイベーもヌパーに抱き着く。
やはりと言うべきだろうか。ヌパーは木なのであまり感触は良くない。だが不思議と心地良く感じてきた。
しばらくして、二人は一旦離れ、メイベーは気持ちを整えた。
「……ヌパ?」
気持ちを整えたメイベーはヌパーに思いを伝える。
「……ヌ、パー……いっしょに……きて、くれ……る?」
精一杯声を振り絞って言った。以前より明らかに喋れる言葉が増えた。ヌパーのおかげだろうか?
「………」
少しの間、静かになったが……。
「ヌパァー!!!」
ヌパーは大喜びで叫んだ。そして、近くをグルグル走り回る。
「……やっ、たぁ!」
メイベーも大声で喜びを声に出し、ヌパーと同様に近くをグルグル走り回った。似た者同士かもしれない。
少し時間が経ち、二人は疲れていた。つい先ほどまでずっと走ってたので当然の事だが。
「ハァ……ハァ……」
「ヌ……パァ……」
ヌパーは木なので、正確に何が必要か分からなかったが、メイベーは今確かに水を必要としていた。喉が渇いて仕方がないのである。
「み……ず……」
「!」
その言葉を聞いたヌパーは疲れを我慢し、立ち上がる。
「ヌパ!」
こっちへ来いと言いたそうに歩き始めた。
「……まっ、て!」
メイベーはヌパーに付いて行った。