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第五十九話「継誕」

かなり遅くなりましたが、59話です。

PC壊れてました、すいません。





 時は1986年に遡る。マール・ボルカトフという男の人生が始まって、40を超えた辺りの時代だ。義理の息子と一緒に生活している。


 あの事件から、9年が経過している。親子で二人の関係は悪くはない、むしろ良好な関係と言えた。


 だからこそ、かもしれない。あんな悲劇に発展し憎悪が連鎖してしまったのは。こんな愛を育んでしまったから、血の繋がってないなら誰かに引き渡せばよかったのだ。ましてや自分には関係のない子だ。


 しかし、この男は引き受けた。あの子を自分の息子として受け入れたのだ。その時から9年もの間、家族として生活してきた。


 そう、その9年間でこの男の心境は随分変わった。外面こその変化はないものの、その感情は狂気という皮を徐々に剥がされて、一人の父親としての心が誕生していた。


 今までにない心を完全に受け入れられなかったマール・ボルカトフは以前と同じく次元の研究を続けている。だが、その研究には決定的な変化が現れていた。


 前は研究の為なら実験生物を躊躇なく何体も犠牲にしていた男が、ある日を境に途端に命の犠牲を伴わないアプローチに変更したのだ。


 他の研究所の同僚からも驚愕の声が次々と出た。あのマール・ボルカトフが人が変わったかのように研究を行っていると。


彼はそれに対して口にはしなかったが「こっちの勝手だ。 黙ってろ」、とかなんとかを考えていただろう。この時点で、彼の心は嘘のように浄化されたと言っても過言ではなかった。


 その原因はただ一つであり明白だ。“ヌヴァー・ボルカトフ”という唯一の義理の息子によって、この男の心境は目まぐるしく変えられている。










「ただいまー」


 仕事で研究所に籠っている義父の事を承知でヌヴァーは自宅全域に広がるぐらいに声を出して、そのまま冷蔵庫の中の食品を適当に取り、勝手に食事を始める。いつもの事だ、義父さんは毎日仕事で遅い。なので、お金の管理や家事などの仕事は自然と僕に回ってきた。


 勿論、勉強も欠かさない。ハイスクールでの学業も順調であり、バイトもしたいところだが義父さんからは止められている。代わりに私がお小遣いを出すと。


 義父さんが特殊な研究職に着いているせいか、うちはこの普通の住宅で暮らしている割には凄い大金を持っているらしい。おかげでたくさん使っても、お金は有り余る。毎月30ドルぐらいしか使わないけど。


(何をしよう……勉強しかないや)


 ガールフレンドを作るのも良いかもしれないが、ヌヴァーはあまり恋愛に頓着しなかった……いや。マール・ボルカトフに育てられたからか、むしろ避ける傾向にあり友人関係よりも学問をどちらかと言えば大事にしているようである。


(でも、予習とか復習もそんなに時間掛からないし掃除も昨日したしな……どうしよう。 本当にやることないな。 んー……テレビでも見るかな)


 17時を過ぎた頃、ヌヴァーは冷めた目でテレビ番組を視聴している。バカな企画のドキュメンタリー物だ。彼の中ではテレビのやっているほとんどはくだらない認識であり、見下している事すらあった。


 何故かといえば答えは一つ。“つまらない”からである。


 ただ、つまらないというだけの話ではない……言い方を変えよう。こんな猿も笑えないような企画をよくも放送できるな。他のみんなはこれを見て笑ってるのか?


 “理解できない”。それが彼の答えであった。確かに彼はマール・ボルカトフを突き動かす温かさを持っていた。しかし、同時に彼も、ヌヴァーも義父からの影響を大いに受けていた。


 基本的には変わってこそいないが、肝心の赤の他人に対する感情が過去のマール・ボルカトフのそれに近く、まさに息子と呼ぶに相応しくなってしまっていた。


 良くも悪くも親子になっていたと言うことだが……ふむ、端的に言えば第二のマール・ボルカトフの爆誕と言うべきか。


 ここで彼は思考するという極めてシンプルな帰結に至り、脳裏に浮かんだのは父であるマール・ボルカトフ。疑問に出たのは、長年一緒に住んではいるがそれでも父の研究という職業の内容についてヌヴァーは何も知らされていない。


 少し考えれば、かなりの機密な仕事であるのは分かるが……それでも好奇心と言う物が僕を支配する。一回、仕事場に行ってみるか? すぐに帰されそうだが。


「………」


 とりあえず、父が帰ってきたら一度聞いてみよう。まずはそれからだろう。拒否されたら許可出るまで騒ぐけど。














「……!!!」


「神くん、大丈夫!?」


「う、うん……ちょっと変な記憶がね……」


「ふむ、呼び覚まされてますね。 では続きと行きましょう。 大丈夫、別に君を傷付けるためではない。 これが終わる頃にはマール・ボルカトフの全ての真実が判明するさ」


 リバーはルシファーの制止を気にも留めず、さらにその悲劇の続きを語りだす。














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