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第五十六話「選定」

遅くなってますが、56話です。

「チッ……!」


 荒れ狂う雪山での戦闘の中、賀霧雅哉は道化師と蜥蜴の怪人の相手をしていた。吹雪と言う悪天候に加えて道化師のナイフを使った物量攻撃に蜥蜴の怪人の接近が時間を長引かせる。


 唯一、救いと言えるのはこの二体が協力関係ではないという事。こいつら、創無の弱点……と言えるのは組織ではないという事。中には意思疎通を図り行動を共にすることもあるが、それでもごく少数……そもそも奴らにとって意思疎通をすることが常識にはないので当然かもしれないが。


 雅哉は盾に備えられた射撃システムを使い、道化師と蜥蜴の怪人に牽制を掛ける。威力は低いが攻撃を少しずつ封じ、徐々に赤き次元エネルギーを収縮した槍を構えながらハイエナの如く気を窺う。


「………」


 二体は戦慄を感じる。あの赤い靄のようなものには狂い死にそうになるくらいの狂気が内包されている。激しい憎悪を、上昇しか許されない怒りを。


「………」


 道化師は槍の魔の手が迫る瞬間に案山子で身代わりを置き、その隙にあの能力者の首をナイフで掻っ切る算段だ。






「はい、そこ待ってー!」


「「「!?」」」


 一人と二体は一斉にその声の主へと視線を集中させた。そこには黒いローブを着た一人の男が木の枝に座っていた。


「それで良い、余計な予測はしたくないんだ。 要件を言うよ、今すぐここから出て行け」


「は?」


「信用されないのは分かってる。 けれど、この案件だけは退いてくれ。 私でも対処出来ない―――――――――」


 ヴァーザーは咄嗟に背後から襲い来るナイフを指で挟み、すぐに溶かしてしまった。


「……そこの創無共は従う気がないようで」


 道化師はナイフを既に構えており。怪人も同様に爪を肥大化させて、こちらへ瞬く間に跳躍できる態勢だ。対する賀霧雅哉は……。


「………」


 構える様子もなく、ただこの様子を静観している。次元エネルギーも収め本当に戦う気を失くしたか……私を試してるか?


「……時間がない、行くぞ」


 それはほんの一瞬の出来事である。ヴァーザーの瞼が閉じるその間に瞳は緑色に怪しく輝き、再び瞳が映し出す雪山の光景には道化師と怪人は居なかった。


「――――――――――!?!?」


 雅哉は混乱した。今、何が起きたと。何もなかった。それは物語を綴る本のページを無造作に選定し物語の途中から読むようなもの。全く繋がりのない二つの絵がまるで元から一つの物語であるかのよう。“矛盾”したものを無理矢理に繋げた筈が違和感を感じることの出来ない異様……まさにこれだ。


「何をした?」


「何もしていない……いえ、しました。 と言えば良いでしょう? 説明してあげましょう。 僕たちを簡単に言えば全知全能を“使える”何か……かな? そして、今のは分かりやすくやってあげた“常套手段”なのさ」


「………」


「僕たちの使う全知全能を見て理解できたかい? 今は消すのも煩わしいから、あの怪物たちは自分の世界に帰ってもらったけど」


 ―――――――本当にその類なら、今すぐ俺を亡き者に出来るという事か。


「……そうか」


 雅哉は静かにヴァーザーへと歩き始める。赤き靄で槍を包みながら。


「戦う気かい? 一応、君に状況は示したはずだけど」


「………」


 その目は紅く染まり、彼は自身の“狂化能力”を発現させた。今の彼は狂気に呑まれつつも理性を保ち、その狂気により自身をさらに高みへと上げる状態。一切の“通用”はしない。


「……!」


 尋常ではないその突きはヴァーザーに焦りを見せた。そして、理解する。もう本当に自分の知るものはない世界になっているのだと。


 襲い掛かる突きの数々をヴァーザーは素手で捌き切り、ローブと言う利点を生かし雅哉に自分の行動を読まれないように小刻みに回避を続け、大きく離れる。


(……このままで良い)


 何やら算段が付いたヴァーザーは雅哉の相手をしながらもゆっくりと戦場を次から次へと転々とする。どこかに誘うように……。










「神くん……くる……しいよ」


「だって! だって! ずっと会えなかったもん!!!」


「そ、そうだね……」


「だれー?」


「!!!……新しいお友達! 僕、神って言うんだ……! 君は!?」


「ハロルドだよ」


「ハロルド~! ハロルド、よろしくぅ」


 と彼はハロルドにもハグをする。


「うぐっ……きつい」


「いいじゃん、これくらい……あれ~?」


 神の目の前にいる一匹の狼と翼の生えた人を凝視する。どこかで見たような、どうにも……あっ、そうかぁ!


「ルシ氏とあの狼さん! ルシ氏もなんか悪魔っぽくなってるね!!!!!」


「……そのようですね」


 ルシファーは考えた。マール・ボルカトフの消えた今、彼等を引っ張るのはもしかして自分しかいないんじゃないかと。嗚呼、子ども3人を引き連れて世界を旅する……あまりに危険を伴う。


「クルゥゥ……」


(そうでした。 まだフェンリルがいましたね……ともかく、もう少しで山の頂に到着です、打開できる何かがあれば良いのですが……)


 一行は知ることになる。この世界、そしてオペの世界で起こった“真実”を。












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