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第四十八話「便所」

今回は色々酷い気がします。

 さて、想定は時に裏切ることはあるが今まさにそれが的中している最中である。


「ねぇ、どうするの……?」


「私に言われてもなぁ……」


「いえ、貴方が今考えなきゃこの状況を変えられないでしょう……!!!」


 とルシファーは勝手に動くその身体でエクスカリバーを振りながら、オペたちを襲う。しかし、本人の意思と関係なしに動いているせいなのか、そうじゃないのか。とにかく、鈍かった。


 それをオペとマールはまるで鬼ごっこのように逃げる。いや、もはや鬼ごっこと呼ぶにしても、あまりにも遅く逃げている。完全な茶番と化していた。


 「……ハァ」


 遠くからそれを見ていたヴァーザーは少しではあるが落胆していた。展開自体は思惑通りなのは良かった。しかし、あまりにもふざけている。これもこの一連の出来事自体が今まで存在していないせいだ、究極を超えた先の何か。それを求めるばかりに、何処にも記されることのない記録が出来上がっていく。


(まぁ、良いでしょう。 どのような結末であれ、未知の物であるものには間違いない。 あとはオペ……フレゴ・メイベーが無事乗り越えてくれれば、次のステップへと行けるでしょう)


 彼の言う事はまだ誰にも伝わらないことだ。けれど、いずれは彼等に突き付けられる試練。彼等とはこの世界に居る者たちだけの話ではない、いつかの明日、オペたちと出会う者たちも中に居る。


「どうするの、マールさん……?」


(確かに学者してたが、流石に専門外だぞ……クソが。 意識がハッキリしていて身体だけ勝手に動く症状なんて一生に一度であるかないかレベルの珍しさだぞ)


 本当にどうしたものか。医者でもなんでもない、一介の学者に何をしろと言うのだ。しかし、私以外の面子でこの状況を変える方法を考えられるかと言われると、私しか考える人物がいない結論になってしまう。


 となると、彼は既に思考し始めていた。石ころを投げつけ、カバンからバケツを出現させて滝の水をぶつけ、最終的に泥を投げていた。


「きた、うぇ。 ないから――――――ペッ」


 これが最良の選択なのだろうか。ルシファーは深く考えた、だがそもそもこの世界がまともな物で出来ていないのは100パーセントな事実なので、僕らにおいてはこの行動が一番に正しい選択なのだろう。これで本当に何とかなるかの是非は置いとくとして。


「クッ……ふぅ、オペ。 あのハンマー出せるか?」


 結局、こうなるのだ。


「う、うん……」


 どれだけ取り繕うと無駄なのだ。


「――――――よし、行くか。」


「行くって……悪寒が」


 元が赤ん坊の精神で構築された世界。老人の少しの精神が入ろうが、関係ない。例外を除く、その全員にその赤子のような知性が持ち込まれている、つまりはどれだけ賢くあろうとも“バカ”である事には変わりないのだ。


「しっかり、受け止めないと痛いよ」


 ルシファーは受け身を取る態勢もないままに、その腹部にミョルニルの一撃が襲った。


「ふぐぅ……」


 強烈な痛みがお腹の中を駆け巡る。腹痛が、腸が、胃が、とにかく痛い。あと雷の効果も付与されてるせいで余計に……!!!


「いやぁ―――――――きつい」


「そう、で、身体は?」


「痺れて……アレ、まだ身体が……」


「よし」


 背中に無慈悲な雷撃が直撃する。ダメだ、この男。恐らく日頃の鬱憤をここぞという時に発散している……!


「おーい、大丈夫か?」


「大……丈夫、じゃ……ない」


「ふん、生きてるなら良い。 これで身体が治らなかったら、二度とその翼で飛べなくしてやるぞ」


 自力で立ち上がったルシファーは溜息をついて後に嘔吐した。流石に二度も叩かれ、雷を流されれば身体の調子がおかしくなっているというもの。強制的に機能も狂い、健康状態を害して嘔吐はその勢いを増す。


「うっ……」


「ふぅ……何か、スッキリした。 良いなこれ」


「そういうの……もうこれっきりに……三度目は嫌だ」


「そう、まぁ流石にやりすぎたかな。 すまない」


 彼は頭を下げて謝る。笑ってるわけでも真顔でもないので、真剣に謝罪されて逆に困惑した。微かに覚えのあるような記憶には、少なくとも自我が強く他人に対して、こんなにすぐ謝罪出来るような男ではない筈だ。


「マールさん、めずらしい」


「……気まぐれだ、それに今のは良識あるなら謝罪ぐらいはする」


 良識があるなら、そもそもミョルニルなんて通常で手に入らない物を使用して他人にぶつけないでくれ。身体の自由は利くようになったが、お腹辺りの痛みが限界を超えそうになる。あ、トイレ。


「――――――すいません。 トイレとかは……?」


「………」


 オペとマールの視線の先には木にバッテン印があり、掘られた穴に紐で束ねられた葉っぱたち。そして、それっぽい木の容器に入った水。


「……嘘でしょ」


「事実だ、あのカバンではトイレ一つ分は無理がある。 簡易トイレと言う手もあるが、構造とか忘れたからな。 やっぱり、無理だな」








 そんな茶番を見ていたヴァーザーは思った。こいつら放っておいたら、1年、2年とか普通に経過してもまだ解決しないんじゃないかと。


「……ちょっと不味いかな」


 と彼はオペたちを転移させた。


「……!? 何だ、今度は……」


「またへんなの……」


「トイレ……」


 不思議な事に如何にも地獄な場所に来ていた。炎が支柱を立て、悪魔みたいな奴等とかわんさか、わんさか。


「……ハァ、とりあえずあの場所に帰るぞ。 オペの特訓はまだ終わっていない、それに睡眠もまだだ」


「……うん。 パン、むしりたい」


(――――――帰ったら、トイレタイムか。 なら、全力でここを突破せねば……!)


 思惑はそれぞれ阿保らしいが帰ると言う目的は一つになった。最高で最低のこの世界と人物たちだが、彼等が他の誰よりも重要で、大事な役割を担っている事は一部を除いて知る由はない。



















 

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