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第四十五話「狂慨」

「さて、話の続きだ。 どんどん質問しても良いよ」


 あの岩場から離れ、ヴァーザーとルシファーは遠くの砂漠地帯へと移動した。


「……言いたい事は沢山ある。 まずは我々を襲ったあの男は何者だ? 何故、あんな事ができる? マール・ボルカトフが技術で世界を作れる発明をしたのも大概だが、それを使い人ひとりの精神を一つの世界として成り立たせるのはもっとおかしい。 貴方は知っているのだろう?」


「そうだね、私は知っている。 それもかなり……あの男の正体ね。 説明するにはものすごーく時間が掛かるし、面倒くさいんだよねぇ」


「……どういう事です?」


 彼なりにその説明をしてくれた。しかし、思考が追いつかなかった。彼はここに存在しているけど、存在していない。彼の発する音は聞こえるが、それは幻聴と同じように聞こえていない。何を言っているのか、サッパリだ。


「すまない……理解できないようだ」


「ふふっ。 仕方ないさ、でもこれを知覚出来るのは今はこの世界に居る存在と装置を作ったあの科学者だけだよ。 例え、神だろうが何だろうが彼等の存在を知覚できない。 知る事すらできない」


「――――――貴方もその“彼等”なのですか?」


「そう思いたいなら、思って構わない。 今、君たちがこの事態を解決しないとちょっとした困った事になるかもねぇ」


「何をです?」


「その質問には答えないよ。 話に戻ろう。 まぁ、言ってしまえば彼等から干渉しない限り、何者であろうと彼等と交わることはない。 さて、ここで基礎の話をしよう」


 それはかなり壮大な話であった。マール・ボルカトフとオペが居た世界において、神と言った宗教は風化した。だが他世界においては別だ。この世界はその他世界の要素も混ざっているらしい。


 さらにここからが凄かった。私に説明してくれているヴァーザー、彼も創無と呼ばれる全身が黒の謎の存在だ。虚無を超えたそれらは数多もの世界へと侵入し、滅ぼしているらしい。オペの世界は侵入されながらも稀に生き残っている世界だ。創無の中で一匹だけ人類へと勢力を変えた個体が居るおかげらしいが。


 虚無を超え、存在していないのに存在している。彼等と同じ存在でなければ攻撃は通らない、存在そのものが矛盾しているから効かないらしい。そんな“矛盾”を手に入れた創無。それらによって侵入された世界は一つの運命しかないらしい。例えるならオペと言う人間は他の世界に同一人物はおらず、この世界で起こっている出来事は絶対に他の世界では起きる可能性はゼロという事になる。


「我々と言う存在に侵された世界はその日から、あらゆる世界から隔離される。 その日以降の出来事、誕生した人間はその世界だけの物。 似た事も同一人物も存在しない。 たとえ時間を操る発明品を作っても無駄さ。 過去へ行き、出来事を変えても何も変わらないさ。 そう、世界が隔離されていると同時に時間も隔離されている。 その時間を変えても意味はない。 この世界の中に矛盾を発生されるだけだ、タイムパラドックスも機能しない。 簡潔に言おう。 キミたちの世界は脆い、一歩間違えれば自滅する」


「………」


「でも、希望はあるかもよ? 未来の選択肢は決まっていないしね」


 矛盾……あの男と創無が一致している。


「……一つ、聞きたい事がある。 貴方の目的は?」


「……ふーん、そんなに怖がっててよく聞けるね」


 手は震え、心臓の鼓動は早まるばかり。そんなヤバい奴等が居る中で平気で創無が下の存在のような発言をし、それで涼しそうな顔をしている。今、私の目の前に居るのは創無より危険な存在。神とかそんなレベルじゃない。この世界……いや、全ての世界は見えない脅威に晒されている。


「キミでも怖がることはあるんだね。 模造品ではそうなっちゃうのも無理はないね……なら、僕の姿を弄ってみようか」


 と、ヴァーザーの見た目はみるみる変わっていった。羽織っているローブをそのままにその風貌が露わになる。


 人間のような見た目をしており、成人男性の体型。西洋人の顔立ちをした二十代半ばの人間が目の前に立っていた。


「これで少しは恐怖心を和らげたかな?」


「………」


「――――――さてと、彼の正体と僕の目的か……察しの通りに彼は人でもなく化物ですらない。 もっと上の存在だ。 彼を倒すと言う選択肢を選ぼうとするなら、変えた方が良いかもね。 僕の目的だけど……単純に干渉かな」


「干……渉?」


「そう、干渉。 あの男……仮にハートと名付けよう。 少し前にあの男、ハートを袂を分かったと言ったろう? つまり、彼の妨害、邪魔をしているのさ。 今、言えるのはこれだけ。 いや、言いたい事……かな?」


 ――――――これ以上は言わない。聞くなと言う事か。いや、十分な位の情報が舞い込んできた。それだけでもかなりの収穫だ。


「……最後に一つ、オペたちは生きているか?」


「ふむ、それくらいは良いでしょう。 オペと神……いや、今はマール・ボルカトフの両名は合流している。 二人は発見したヌパーを助けようとしてるようだね。 守はね……時間の問題かな」


 タイムリミットは容赦なくその時間の針を進めていた。大切な人を助けるための時間に猶予はない。一刻も早く、彼等は行動しなければならない。全てを救うためには。









 

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