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第三話 「恐怖」

 樹海の中を進む。


 あの森と比べると遥かに暗く、まるで他を拒絶しているみたいに感じた。


 さらに進む、すると少し開けた場所に出た。池があり、水の中にはいくつかの小魚がいた。


「………」


 恐る恐る水に触れる。ひんやりしてて気持ち良かった。


 小魚たちがそれに反応し、近寄ってくる。


 メイベーは驚いて自ら手を放した。


 小魚たちは水面から手がなくなると直ぐに散っていった。


「……!」


 メイベーはもう一回水に手を付ける。


 するとまた小魚たちが寄って来た。


「……!!!」


 そしてまた手を放し、小魚たちが散る。


「……!!!!!」


 笑みを浮かべる。どうやら遊んでいるようだ。


 楽しんでいるメイベーだったが直ぐに止め、辺りを見回す。


「………」


 辺りには誰もいない。誰もいないが警戒しておくことに越したことはない。


 池を離れ、さらにその先へ行く。


 だがちゃんとした目的の場所がないからかどこへ行って良いかわからなくなってしまった。


 このまま真っ直ぐ行けばいいのだろうか? それとも何かほかに道があるのだろうか……。


 必死に考える。が、やはり解決策は見つけられなかった。


「………」


 とりあえず樹海内を回ることにした。これで何か見つかれば良いと思った。


 しばらく歩き回ったが、主だった物は見つからなかった。


「……?」


 あの狼が導いたって事は何かしらあることは確かだ。


 ただその何かがわからない、だから具体的に何をすればいいかわからなかった。


「………」


 このままでは何もできぬままこの樹海を迷ったままになる。


 何かないか考え始めたその時。


 物音が聞こえた。


「!?」


 警戒する。だがこの物音は上から聞こえてきた。


「……!」


 いくつもの鳴き声が聞こえた。メイベーが見たのは猿の集団であった。


 猿たちがメイベーに近付く。


 逃げようとしたが囲まれており、不可能だった。


 メイベーは怖がりながらも平常心を保とうとした。


 猿のボスと思われるボス猿がメイベーの臭いを嗅いだ。


 するとボス猿はメイベーの足を持ち、猛スピードで移動しメイベーを引き摺った。


「!??」


 何百メートルも引き摺られ、猿たちの住処と思われる場所へと連れて来られた。


 引き摺られたおかげで体中が痛み、枝などに引っ掛かり至る所の傷口から出血していた。


「………」


 メイベーは泣いた。何十匹もの猿たちに囲まれ、身体をボロボロにされて精神的に危うかった。


 助けもいない。声も出せない。この状況では殺されてしまう。そう感じた。


 猿たちに見つめられながら一つだけ妙な物を発見した。


「……!」


 薄っすらであるが見えた。あれは“模様”だ。


 はっきりと何の模様かわからないにしろ、この状況を変えてくれるのは間違いなかった。


「………」


 距離はあるが何かで気をそらして向かう必要がある。


 何かないか探す、そして。


「!」


 見つけた。自分の靴だ。足が痛くなるが仕方がなかった。


 機会を待つ。猿たちが少しでもこちらから目をそらしてくれればそれでよかった。


 一瞬でも良い。そう考え、じっと待つ。


「………」


 機が熟すの待つ。そして。


「……!!」


 模様とは全く違う方向へ靴へ高く放り投げた。


 猿たちは空に浮かぶ靴に気を取られ、メイベーがいなくなっていることに気が付くのに時間がかかった。


「ハァ……ハァ……ハァ……」


 何とかあの一瞬を掻い潜り、近くの茂みへ隠れた。


 息を整えながら、慎重に模様へと近付く。


 このまま接触できれば、この状況を打開できるはずと考え、さらに進む、が。


「……!」


 猿一匹に見つかった。


 見つかった途端に猿は声を上げ、仲間を呼んだ。


「……!!!」


 メイベーは急いで模様へと急いだ。


 だが、猿に足を捕まれる。


「……!!」


 手に持ったもう片方の靴で、猿を力強く叩いた。


「……キッ!?」


 後ろから猿たちが攻めてきていた。


「!!!!!」


 猿を思いっきり蹴り、群れへ吹っ飛ばし、時間を稼ぐ。


 駆け足で模様へと目指す。


 だが猿たちの追手は続く。


 あと数メートル……はっきり言って何の模様かわからなかった。顔でありその周りに円のように尻尾みたいな物があるのはわかってはいるが細かくは何の動物かわからない。


 2メートルの距離まで猿に詰められたがその前に模様に触れることができた。


 すると猿たちは血相を変えて退散していった。


「……?」


 疑問に思ったが自分の後ろに大きな影があることに気付くのにそう時間はかからなかった。


 後ろへ振り向く。


「……!?」


 少年は驚いた。自身の目の前にいたのは“狐”であった。


 自分より一回りも二回りもでかく、九つの尻尾があり、白銀になびく体毛。だが動物と呼ぶにはあまりに異形であった。


「………」


 あまりの威圧感に身体が動かなかった。


「………」


 狐が顔を近づけてきた……覚悟した方が良いかもしれない。そう思ったが。


「……!」


 狐はそっとメイベーの頬を舐めた。


「……!?」


 予想外の出来事にメイベーは混乱した。


 その後、メイベーに頭を擦りつけた。まるでペットのようだった。


 メイベーは嬉しがり、ふわふわしている体毛を触ったり、頭を撫でたりした。


「……!」


 どうやら喜んでくれているようだ。


 と、狐は尻尾でメイベーを巻き付け、自身の背中に乗せた。


「……!?」


 驚いたが上から見る高い景色に少し気分が高揚した。


 狐は飛ぶように跳躍し、広大な樹海を瞬く間に出て行った。


 だがその後も、しばらく飛び続けた。


 メイベーは背中の体毛に抱き着いた。


「………」


 凄く暖かった。あの狼と同じく心地良かったが、何故か不思議と安心感を覚えた。


「――――――――」


 メイベーはしばらく眠ってしまった。










「………」


 またおもちゃ箱を男は見つめていた。


 宝箱のような外見をしたそれは新品同様であった。


「……森を越えたか」


 そう一人で呟いた。


 男は再び紙を手に取った。


 そして、また書き込み始めた。


 できたのは、ドラゴンの顔が中心にできた模様であった。


 「狼の模様はさっき送ったとして……九尾は早すぎたか」


 そう言った男はさらに別の紙に模様を書き込んだ。


 それはメイベーが遺跡で触れた歯車の模様であった。


「………」


 この二つの紙をおもちゃ箱に入れた。


 すると以前と同じように閉まり、少し経ったら勝手に開いた。


 やはり空っぽだった。


「……これで良いんだ」


 全てが決められているかのように彼は言った。









 彼が見る景色は茶色の屋根であった。


 傍に暖炉があって、暖かった。


 すぐそこには子供と二人の大人がいた。


「ほらぁ、クリスマスプレゼントだぞー!」


「やった! なんだろう?」


「それは開けてからのお楽しみよ」


 男の子は包みを破って中身を見た。


「!!! やったやった! 前から欲しかったスノボーだぁ!!!」


「クリスマスだし、特別だぞ?」


「うん! 他のも開けないと!」


 クリスマスツリーの木の下にあるいくつものプレゼントを開けていく。


 女性が自分に近付いてくる。


「はい、あなたにはこれよ!」


 二つのプレゼントを横に置いた。


「さてと、料理の準備終わってるから、取ってくるわねぇ」


「ああ、俺は『   』の面倒見てるよ」


 女性はキッチンへ行き、男性は彼の頭をそっと撫でた。


「可愛いなぁ、ホントに。 っふふ、生まれて6カ月かぁ。 時間が経つのはホントに早いね~、『   』は」


 男性はしばらく彼の顔をじっと眺めていた。

シナリオ的に全70話きっちりで終わらせようと思います。

伏線張るの案外大変ですね…


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