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第二十八話「不信」

某特撮ヒーローの冬映画のおかげで小説どころじゃなかったから今回は短め。でも、重要回。次回は派手に一旦、全てを壊すよ。

 








助けが欲しかった 救いが欲しかった 唯一知っているみんなはおかしかった 僕もおかしいかもしれない でも、僕以上にみんながおかしい事に僕は知ってしまった


 今までの事を考えれば分かる事だ。 神くんもといマール・ボルカトフの言う事が正しければ、この世界も元の人物は僕を含めた三人の誰かだ。


 守、神、オペ。 いずれかの誰かがこの世界の主だ。


 言い訳をするな。 分かっているだろう? 誰がこの世界を作った張本人か。


 僕じゃない 僕じゃない 僕じゃない

 

 そう何度もの自分に言い聞かせた。 それを受け入れてしまえば全てが壊れてしまう。 本当の自分が怖い、心の中を吐き出したら気付きたくない事まで出てしまう。


 それで良いんだろ? そうしてしまえ。 今ある全てを捨てろ。 してしまえば、君は楽になれる。 赤ん坊である君にとっては。


 な、なにを言ってるんだよ 僕はオペ それだけだよ それだけ それ以外はいらない それ以外の真実は要らない


 ……必死に自分を説得してるね。 でも、無駄だよ。 もう全ては終わった。 死にかけてる君にチャンスを与えたけど、やっぱり赤ん坊じゃ無理があったね。


 だから何を言ってるんだよ!!! 僕はオペ! オペって名前の少年なんだよ!!!!! その赤ん坊……フレゴとは別人で……別人で……


 別人じゃないよ。 それは君がよく知っている。 この世界を旅する中で一回だけあっただろう? 身体が熱くてどうにもならない――――――


「やめろって言ってるでしょ……!!!」


 その声はそこで止まった。


 さらにそこから逃げた。仲間の筈の守たちから、あの声の主から。もう誰も信じられない。信じるのは僕がオペである事。それで良いんだ。それだけで良いんだ。


 遺跡から出た。あの薄暗くて長かった階段がありえない程に短く感じた。それは自身の中にある疑惑を確信へと変える証拠となってしまった。


 目の前の真実に全てを塞いで、ただ逃げ続ける。


 嫌だ 嫌だ 何でみんな、僕を騙そうとするの 僕はただの少年だよ あの赤ん坊とは関係ないよ ただあの赤ん坊と自分を救うために転生して……


 突き詰めれば、突き詰める程に自分自身が追い詰められていく。どれだけ隠そうと無駄だった。声の主の言うように全てが遅かった。考えれば気が付く事だ。


 あの雪山で孤独になり死にそうなった赤ん坊を家族は捜した。 だが、その傍で見た自分は何だ? この世界で初めて意識を目覚める前に見た光景。 あの時は赤ん坊と僕が何かの事故に巻き込まれたと思った。でも赤ん坊を捜して、どうして僕は誰にも捜されないんだ? 


 あの後の出来事もあの紋章のような模様を触れる事で見れた。 精神世界を作れる技術を持つ者、赤ん坊を必死に捜索する父親、母親、そして、その兄。


 だけど、何で僕の事についての出来事はない? その事だけは前々から薄々に感づいていた。 そんな事実に目を背けた。 今も背けている。


 なぁ。 いい加減にもう諦めないか? どうせ君の命は終わるんだし。 最悪、僕が終わらせるし。


 またあの声だ。 


 やめてくれ もうあなたの声は聞きたくない  放って置いてくれ。


 それはダメだよ。 だって帰りたいと望んで、受けたのは君だよ。 だったら最後まで面倒見なくちゃね。


 受けたって何の事だよ……もう本当に一人にしてくれよ! 僕は関係ない! 何も関係ないんだよ! あなたはもう黙って――――――「オペ……?」


「……!?」


 不意に呼ばれて、後ろを振り向く。そこには遠くに置いてきた筈の守、神、ルシファー、ヌパーがいた。


「ふぇー、ルシ氏~! ありがと~」


 はい、はい。とルシファーは適当に返事しながらも真剣にオペを見つめた。守もそれは同じだった。


「な、なに……!?」


「まず、落ち着け。 別にオペを襲うとかそんなんじゃない。 ただ話をしに来ただけだ」


「話……」


「……そうです。 逃げなくてもいいのですよ、不安があるなら私たちにぶちまけても良いのですよ?」


 そんなんじゃ ダメだ どうせ話しても……


「本当に何があった? 俺達は嘘も付かないし――――――


「そうじゃない! そういう問題じゃない!」


 ……じゃあ、何が問題なんだ? 別にそこまで間違ったことはしてないはずだ。


「なぁ、なら何が問題なんだ?」


「気付かないの!? この世界の主がいて、世界を自在に操作できる。 しかもそれが起きた、それを起こすにはこの世界に居る必要がある、こんな大ヒント貰って何で分からない顔してんのよ!!!」


「……? この世界に赤ん坊が居る可能性だってあるだろう?」


「……!」


 そこでルシファーは気付いた。この異変に。いや、彼だから気付けたのだ。部外者である彼だからこそ。


「神さん! 太陽を踊るのをあなたたちは気まぐれで思いました。 それを実行したのは?」


「……赤ちゃんじゃないの?」


 ――――――なんだこれは。 話が合わない。 どういう事だ。 まるで意図的に。 何かに妨害されているかのようだ。


「守さん! あなたは気付かないのですか!? 事あるごとに何処からともなく道標がいくつも導きました、不自然極まりないぐらいに。 何故、貴方達を中心に物事が―――――― 「教えようか?」


 その場に居た全員が一点に振り向いた。黒の紳士服を身に纏い、胡散臭い30代半ばの男性だ。


「オペ君とヌパー以外に気付かれたらもう終わりかな。 こんな茶番はおしまいだ」


「何を言って――――――


 地面がその時揺れた。収まったかと思うと地中から地響きを立てて、100メートル相当の蛇の群れが彼等を囲った。


 みんながみんな、動けなかった。辛うじてルシファーは動こうとしたが身体はそれを拒否する。目の前の絶望の差は分かっていたからだ。


「……まぁ、時間はある。 準備を整えるために少し昔の話をしよう……」


 遅かった。全てが遅かった。全てはこの男の掌の中だ。もうどうにもならない。空っぽの連中に何も出来る筈がない。赤ん坊に試練を与えたが、結果は分かり切っていた。喚く以外に足掻く方法を知らない存在だ。無理もない。今あるのはこのチームがバラバラに引き裂かれる瞬間だ。

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