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第十七話「聖剣」

「ルシファー! これどうにかならないのか!?」


ルシファーに全てを託そうとしたが彼自身も困っているようだ。


「いやいや! あんなドラゴンどうやって倒すんだよ! 第一、今の私にそんな大層な力は……!」


 と全力で逃げながらも彼が足を踏む度に己を制御できていないのか彼を中心に揺れが酷かった。


「―――――やっぱりあるぞ絶対! 試しに何か使え!!!」


「と言っても仮にとんでもな力が私にあったとしてもそれをどう使う?! 君たちと同じく記憶がないからどうにもならないよ!?」


 この世界に来てから凄い力を持つ者には会っても碌に記憶とかがなく、扱えないどころか自分にどんな能力があるかさえも知らない……こういう時に必要な力が使えないとなると何の為にあの力が存在しているか疑問に思えてくる。


「―――――――あ! オペくん! 神くん! 何か良い生物と魔法ない? ほら、もっとこう地球を壊すようなヤツじゃなくてあのドラゴンだけを倒す魔法とか神話生物とか!」


「へ!? そんな急に無理ですよ! それにどの生き物がどんなのかなんて名前だけで判断できません!」


「僕の魔法、ダメって守に言われた……下手したらこの世界を一瞬で破壊するかもしれないって……」


「あー……そんな感じなのか。 ならオペくん! 何か良いのを出そうよ! 僕を出せたんだからきっとまともなのも召喚できるよ!……多分」


「多分って……!?」


 と、困惑しながらもリストを取り出し必死に何か良い奴がいないか探しているオペ。やはり名前だけではどうにもならない……エクスカリバー……?


 生物の名前にしては妙にしっくりこない名前だ……響きカッコいいからとりあえず召喚しよう!


「エクスカリバー……!!!」


 確かにその名を呼んだ。だが想像していた物と全然違う物が出てきた。


 それは、岩に刺さった剣であった。それがオペの手に掴まれている。


「―――――ハッ!? 何で剣なの!? これ生き物を出す召喚術だよね!?? それに剣なんて危ないよ!!!」


「なら私に貸して! 私ならどうにかなりそうだと思うの」


 割と逃げ切れなくもなかったが守さんと神くんが遅いのであのドラゴンを退治するしか選択肢はなかった。


 そして、ドラゴンは空から巨大な火球を幾つも吐き出し、この一帯を襲った。


「うお!?っと! 二人とも早くないか!? 俺、持ちそうにないよ」


「ハァ……ハァ……僕……もうダメ」


 二人とも体力的にもう限界に近いようだ。僕も少し危ういがルシファーさんはどうなんだろう。


「ルシファーさんは今元気ですか!?」


「あ、ああ。 元気だけど……?」


 オペはルシファーにエクスカリバーを向けた。


「……何のつもりだ?」


「これであのドラゴンと戦ってください」


 「ハァ!?」と思わず声をルシファーは出してしまった。刃に岩が突き刺さった状態で戦う馬鹿がどこにいるだろうか。ましてや名前しか判明していない剣でだ。


「いやいや! 俺自身も自分の力を把握してないのにどうやってやれって!?」


「召喚できたならきっと何かしらの能力はあるはずだよ! それに羽生えてるなら飛べないの!?」


「――――――ハッ!」


 今更気が付いた。そういえば私の背中には翼があるんだった。この人たちと一緒に居るおかげで自分も同じような物だと錯覚していた。私もバカだな……。


「……よし! やるよ!」


 オペからエクスカリバーを受け取る。


「うお!? 何故だから分からないけど凄く手が痺れるよ。 それにこれって……魔力かな? なら行けるかも!」


 ルシファーは翼を広げ宙へ高く飛んだ。黒みを帯びた翼は空を黒く染めるように羽ばたき、光り輝くエクスカリバーはその漆黒を打ち消し、突き刺さった岩を破壊し、内に秘めたる魔力を解放したその姿はもはやただの剣ではない。その名に相応しい“聖剣”そのものであった。


(――――――案外、楽に飛べるんだな。 やり方知らないからもっと難しいと思っていたが……元々翼自体が生えてるから身体が覚えてるのかな?)


 ドラゴンの火球を次々と躱し、距離を詰めていく。妙に慣れた感覚だ。やはり……人外だからか、こういう場面もあったのだろう。


 数多もの猛攻を潜り抜け、エクスカリバーの魔力を少しではあるが解放する。その量は、通常では考えられない程に満ち溢れていた。


(扱い方を間違いなければ余裕で行けるな。 後は避けるタイミングと攻撃するタイミングを間違えない事だ!)


 ルシファーは加速しドラゴンの足にまで接近、エクスカリバーで皮膚を引き裂き、筋肉にまで到達し血潮が噴き出す。


 攻めの姿勢を崩すことなく翼へと飛翔、ありったけの魔力を込めた剣はドラゴンの右の翼を見事に切断した。


「うおおおおおおおお!!!!!」


「す、凄い……」


「ほへぇ、出来ればもう少し早くやってほしかったなぁ」


「ヴォオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」


 ドラゴンの咆哮が我々の耳に響く。


「うっ……何か気味悪いなこのドラゴン。 まるで機械みたいだな……」


 傷を受け、さらにドラゴンは暴れ出す。その激しさは暴れる度に増していく。


 火球の一つがルシファーに激突した。


「ルシファーさん!!!」


「だ、大丈夫だ! なんか! そうだな……そうだ! 必殺技! 必殺技ってないか!?」


「ひっ、ひっさつわざ!?」


 聞き慣れない単語に戸惑うオペ。しかし……。


「!! 必殺技!」


 そこで守さんが反応した。


「ならなんかぶっといビームとか出ないのか!?」


「ハッ!? 何だよビームって!」


 意味が分からなかった。三人の中で一番年上で割とまともそうなのに彼から出た発言は到底今の状況を無視した物だ。オペ君が一番しっかりしてるのかもしれない。そう思えた。


「ほ、ほら! アニメとか特撮とかってよく剣から謎ビーム出すじゃん! つまりそういう事だよ!!!」


「余計意味が分からないよそれは!」


「と、とりあえず! その……エクスカリバーだっけ? 何か特徴ある!?」


 ドラゴンの攻撃を避けつつ回答に応じる。


「魔力! 無駄に魔力入ってるよこれは! 魔法の源になるエネルギー!」


「魔力……それを別の形にできない!?」


「別の形って……! いや、できない事はない」


 それを聞いた守は疑問を確信へと変えた。何かとっておきの策でもあるのだろうか。


「やる事は簡単だ。 その魔力を球にして出して!」


 「了解!」っと言い、言われたとおりに魔力を球にしようとする。初めての事なので少し手間取ったがそれでも何とか球として具現化させることに成功した。


「やったよ! それで!?」


「はいぃ!!! それを真上へ放り投げます」


 言われたとおりに真上へ投げた。ルシファーは少し嫌な予感がした。それも飛び切りおかしな方向に行っちゃいそうな勢いで。


「そこでエクスカリバーに魔力を込めまぁぁぁす! そして、構える」


 ……もう、どうにでもなれ。


「そこで球を打て「野球じゃねえか!!!!!」」


 放たれた魔球は一直線にドラゴンへ飛んで行った。ドラゴンは避けたが地上へと激突した魔球はその勢いで爆発、とんでもない量の魔力の暴力がドラゴンを襲う!


「ヴォオオオオオオ!!!! ヴォオオオオ!!! ヴォォォォ……」


 爆発が収まった頃にはドラゴンは灰と化していた。


「や、やったあああ!!!」


「よし!!!」


「ふぅ……ひとまず終わったなぁ」


「……え?」


 確かに色んな事が今まで起きてきたがまだ撃退できるレベルあろうドラゴンを殺しちゃって本当に良いのだろうか?


「殺し……ちゃったの……?」


「……あ、いや待てオペ。 大丈夫、大丈夫だから……」


「何が大丈夫なの……? 僕が、僕がもう少し考えて動いてればこうならなかったのかな?」


 涙を今にも流しそうな顔をしていた。確かに今思い返せば軽い感覚で命を奪ったかもしれない……これから先も気を付けなければならない。上手くいけば仲間が出来る可能性もあるじゃないか。


「ごめんなさい……ごめんなさい……」


 泣きだしたその瞬間。


 神くんがオペをそっと抱きしめていた。


「次から気を付けようよ。 もう……戻って来ないんだし」


「……やっぱり……そういう事だよね、彼等は……」


 子どもがの泣き声と堕天使の翼だけがこの場の数分という時を支配していた。

 お話の組み立てをしてると割と唐突に入れた設定が上手く作用してくれて困らない。異世界って割と難しい、俺なんか異世界=人間なんかいねぇ! だから、余計に話を作りづらいw

 

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