第五話
※誤字・脱字・誤変換等が多々あるかもしれませんが、ご了承ください。
あらすじ
森の賢者 からの 求婚 に
ケリス は こんらんしている
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よーし、ケリス・メイス
今の状況を整理しよう
今目の前には、超絶美人で可愛い白い女性が居る
彼女から、森で不審な行動をとってる輩が居ると・・・・
そして、その女性からのお願い事が?
俺が彼女の――――――――森の賢者の“伴侶”になる事・・・・と
・・・・この、美しい女と?
・・・・・・・俺が?
俺の思考は、そこまで考えた瞬間、ブツリと音を立てて活動を停止し、分かることは、ただただ体中の血が沸騰し、とんでもない温度になっているということだけだった。
「――――ケリスさん、ケリスさん?えっと・・・・申し訳ないのですが、黙っていないで何か返事を頂いてもいいですか?」
気がつくと、賢者が不安そうに人差し指の先と先をあわせ、顔を背けながらもじもじとしていた。
その仕草が、また見事にハマっており、俺の血をさらに沸騰させた。
こ、こいつ・・・・・俺を焼き殺す気なのかっ!?
俺は、今にも燃え上がりそうなほど熱くなった自分をなだめるように、大きく深呼吸を数度行い、身体の中の熱を逃がした。
ある程度落ち着いてきたのを見計らい、俺は努めて冷静に見えるように口を開いた。
「――――――――えーっとですね。すみません賢者様・・・・説明をもらってもよろしいでしょうか?」
「えっ?あっ、はいっ!! そそ、そうですよねっ!!、すぐ答えを出せるような話しじゃないですよねっ!!!
・・・・・ゴホンッ、では、説明させてもらいますね。」
わざとらしい咳払いの後、賢者は人差し指を一本立てて、その手をコテンッと傾けた。
すると、彼女の背後にあった泉から一本の水柱が立ち上がった。
生き物の様にうねうねと形を変え、賢者のすぐ隣に下りてきた。
何が始まるのかと思えば、賢者がまるで指揮をするように指を振った。
「スムーズに話しを理解してもらうためにも、この森の仕組みについて簡単に説明してしまいますね。まず、この森は他の場所とは少々特殊な環境なのです。」
そう言いながら、くるりと手首を回すと賢者の隣に降りてきていた水柱が巨大な水球へと形を変えた。
そして、水球が分裂し、何かの形を取り始めた。
よく見ると、玉の一つが人のような形になり、もう一つが数本の木の形を作った。
「この森には、私の力で結界を張っているのです。主な役割としては、人の侵入を防ぐことです――――――」
賢者がそういうと、水で出来た人型がテクテクと歩くような動作を始めた。
人型は、そのまま木の方へ向かっていった。
木に触れるか触れないかというところで、人型はまるで弾かれるように大の字であらぬ方向へ飛んでいった。
どうやら、賢者が水を使って分かりやすく図解してくれているようだ。
今のは、人の侵入を防ぐ という事を表しているのだろう。
そんなことを考えつつ、俺は賢者の説明に耳を傾けた。
「―――――そもそも、普通の人がこの森に入った場合、森の濃い“魔”に晒されてまともに行動が出来ません。最悪の場合、中毒症状が出てしまい死んでしまいます。それを防ぐために、人を寄せ付けない様にする仕組みにしています。具体的には、“魔”を弾く効果です。」
「“魔”を弾く・・・ですか?」
俺はそう聞き返しながら、首を傾げた。
それは、少し可笑しくないか?
“魔”を弾く結界がこの森にはある
魔というのは、基本的に自然発生するもので、それを糧にして魔物が生まれる。
この森には明らかに異常発達した魔物が多いのは、この森の濃い魔濃度にあるはずだ。
ここである疑問が発生する。
魔を弾く結界があるのに、なぜこの森の魔濃度が高くなる?
森から発生する魔が多いとしても、自然発生する魔は限られていて、この森にいる魔物達があそこまで発達するほどの魔が出るわけがない。
仮に、とんでもない量の魔が発生していると仮定しても、魔は一カ所にとどまる性質を持っていない
発生した魔は、森から水の様に流れ出てしまうのだ。
するとどうなるか、この森を中心に、近辺が魔物の巣窟になっているはずなのだ。
だが、この森の近辺はむしろ魔が少なく魔物も居ないため、他に比べて安全な地帯なのだ。
考えてみると、一体どうして森だけ・・・・
俺は必死に魔についての知識をあさっていると、賢者が俺の顔を見てニッコリと微笑んできた。
その表情に、思わずドキッとしてしまったが、すぐに気を取り直して賢者をまっすぐ見据えた。
「えーっと・・・・なんですか?」
「いえ、おそらくこの森にいる魔物について、思うところがあったのでは?」
「・・・・・・はい、少々疑問に思ったことがあって」
すると、賢者はヒョイッと指を振り、再び水の形を変形させた。
今度は、二つの水球がどちらも同じような数本の木の形をとった。
「ケリスさんは頭のいい方です。おそらく魔物の成り立ちについても知っているのでしょう?
なら、説明するのは簡単・・・私の結界は森の外に“魔”を逃がさない様にするものでもあるんです」
すると、片方の水が木々を覆い隠す様に円を描き、そこからウネウネと細い水が木から円に向かって延び始めた。
木から伸びた線は、円を形作った水に触れるとそのまま跳ね返されるように内側へと進行方向を変えた。
おそらく、今見せられているのが賢者の言う“魔を逃がさないようにする”というやつなのだろう。
俺は、「なるほど」と何度か頷くと賢者はそのままさらに水の形を変えた。
「この結界の面白いところは、内側からは魔が漏れないようになっていますが、外側からはいくらでも魔を取り込むことが出来る所なんです。」
「・・・・・・なるほど」
しばらくの沈黙の後、俺はコクリと頷き、さらに思考を加速させた。
今の事が本当であれば、この森が“帰らずの森”と呼ばれる危険な場所である説明が付く。
森で発生する魔はもちろん、この辺り近辺の魔まで吸収してしまうのだ。
しかも、取り込んだ魔はこの森から外に出ることはない
ならば導き出せる結果として、魔はこの森のみに溜まり、普通ではあり得ない魔濃度になるわけだ。
すると、漂っている魔から魔物が発生し、それでも有り余っている魔を糧に異常発達するわけだ。
つまり、この森が“魔の坩堝”になっている。
それを聞いて、この森で異常発達している魔物についての謎も解けた
だが、ここでまた新たな疑問
賢者はなぜそのようなことをしているのか・・・目的が分からない
“人を森に侵入させない”というのであれば、わざわざ結界まで張って魔を集める必要もない。
むしろ、そんなことをすれば魔物が大量発生して手の付けられないことになってしまう。
魔物とは本来、人に対して害しか及ぼさない存在
だが、賢者はこの森を魔の溜まり場にし、結果的に強力な魔物を生み出している。
わざわざ人に対して不利益になるようなことを、なぜ彼女は―――――
「もちろん、人に対して悪いことをしたいと考えているわけではありません。ただ、目的を達成するためには、どうしても人には立ち入ってもらっては困るのです。―――――まあ、ほかにもいろいろな理由から人には近づいてもらいたくないのですが・・・・そこはいま関係がないので、説明は割愛させてもらいます。」
「・・・・・・目的、ねぇ?」
俺は眉根をピクリと痙攣させ、顎に手を当ててもう一度手元にある情報の整理を始めた。
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===今わかっていること===
・この森が賢者の結界で覆われていること
主な役割 : 人の侵入妨害,魔の流出防止・取り込み
・魔物が異常発達していること
主な原因 : 結界による魔を逃がさず、周りから吸収する効果による魔濃度の上昇
・賢者がとある目的で森に結界を張っていること
補足情報 : なし
===いまだに不明な点===
・賢者の目的
・この森に魔をためる理由
・賢者の求婚の意図
・・・
・・・・・ききゅ、キュウコン!?
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そこまで考えて、俺の思考は煙をシューシュー上げながら、唐突に機能を停止させてしまった。
そそそ、そうだっ!!!
結局、賢者が俺に求婚してきたかの理由がいまだに説明されてないぞ!!!
「さて、ケリスさん・・・・ここから本題なのですが―――――――私がなぜ伴侶を求めているかです」
「―――――っ!?」
タイミングよく、賢者が俺の考えていることについて語ろうとしたので、思わずその場でびくりと飛び跳ねてしまった。
その様子に、賢者は少し怪訝そうな面持ちで見てきたが「お気になさらず」と務めて平静を保ったふりをして話の続きを促した。
「えーっと・・・・伴侶の意味ですが、まず第一に“森の治安を維持してもらうため”です。」
そういうと、賢者は再び頭上の水を操り再び絵を浮かび上がらせた。
今度は、森に人型が二種類
片方が最初に出てきた棒人間
もう一つが、どことなく俺に似た形をした棒人間だった。
「森に結界を張っているとはいえ、私も一応は人。何かの拍子で人を森に入れてしまうことが多々あるのです。その度に私が貴重な時間を割いて魔物たちにお願いして追い払っていたのですが・・・・さすがに限界を感じまして――――――――ケリスさんにも、心当たりがあると思うんですが。」
「――――――ああ、“シロ”と“ハク”のことですね?」
そういって、ゆっくりと背後にいるであろう二頭に視線を向けた。
すると、二頭はこちらに気づき、嬉しそうにこちらにノシノシと近づいてきた
【拙者たちをお呼びでござるか?ケリス殿】
【わっちらに用があるのじゃな?何でも言うのじゃ!ケリス殿!!!】
「い、いや、すまん呼んだだけだ」
【ぬっ?、そうでござるか!!名を呼ばれただけでござったか!!】
【ならば、わっちらは再びお呼びが掛かるまで待機なのじゃ!!ハク、忠臣はひたすら主の命を待つものなのじゃ】
【うむっ!!そうでござるなシロっ!!向こうで待機でござるっ!!】
【わっちらは忠臣、いつでもケリス殿の元にはせ参じるのじゃ!!気軽に読んでほしいのじゃ!!!】
「あ、ああ・・・・そのうちな?」
面倒な二頭に適当な返事をしておき、俺は再び賢者に視線を戻した。
「あの二頭もずいぶんあなたに懐きましたね。――――――さて、話を戻します。現状で、あそこまで意思疎通を図れる魔物は彼らだけなのです。単純な命令であれば、すべての魔物に命令もできるのですが・・・私は別に人を害したいわけではないので・・・・・・気持ちの悪い人を限定して襲わせたり追い払うのは難しくて・・・・・そっちばかりに気を取られてると傷つけたくない人も傷つけてしまう可能性が・・・・・そもそも人がこの森のものを持って行ってしまうのもいろいろ問題があって・・・・・でも、魔物じゃ過剰防衛になってしまうので・・・・・えっと・・・・・・私なりに考えた結果・・・・・その・・・・・」
「・・・・なんとなくですが、話が見えてきました。」
つまりはあれだ、賢者はある目的のためにここにいる。
それを成すには、どうしても人が邪魔だから結界やらいろいろ手を打っていたが、最近それだけでは人が迷い込んでしまう
なるべく人を傷つけずに森から追い払いたいから、魔物を使って追い払っているがそれが追い付かなくなっているんだな
ならば、賢者が求めているのはなんだろうか?
答えは簡単、森を守る用心棒を雇いたいということだ。
だが、一時的にではなくずっとここを守る人間が欲しいのだろう
・・・・なるほど
それで、賢者が考え付いたのが “伴侶” ってわけだ
伴侶ならば、その生涯をともに生きると誓うわけだから、そうやすやすと離れることができなくなるわけだ。
なるほどなるほど、確かにそうすれば賢者の求めるような人材は手に入るわけだ。
さらに、自分の夫なのだから情報を漏らすもクソも無い
都合が悪くなれば、別の人材を見つけ、同じような手でまた伴侶にすればいい話
賢者の容姿ならば、探せばいくらでもそういった人材を捕まえることができるだろう
そう考えると、今までの話の流れから情報を切るタイミングまで、すべて計算のうちだったのか?
セオールへ向かい、依頼達成までの流れはこいつの計算通りだったのか?
そもそも、最初の慌てっぷりは演技だったのか?
あれが素のような気もするが、ここまで頭が回るなら、今の落ち着き払った態度が本性かもしれないな
今現在も、これがどう考えてどういう答えを出すのか、すでに誘導されているのかもしれんな・・・・
いろいろな考えを巡らせていると、不意に俺の右腕を柔らかいものが押し当てられた。
俺は妙に思い、思考をいったん中止させ、視線を右に向けてみた。
すると、そこにはなぜか賢者がいた。
俺の腕に顔も体もしっかりとくっついて・・・・・ん?
・・・あれ?
じゃあ、この柔らかいのってもしかして――――――――――――
俺の脳が処理を終える前に、腕に当たっていたそれが賢者によってさらに押し付けられ、俺の脳は処理をするのをやめて代わりに発熱しはじめた。
「けっ、けけけ、賢者様ぁ!?、いい、いった、いったいなにを!?―――――」
「―――――私も、無茶なことを言っているのはわかっているんです。・・・・でも、私はどうしてもあれを作り出さないといけないんです・・・・それに、私はここにいるみんなを――――――この森全てを守らないといけないんです!!!ケリスさん、お願いします!!!」
突然、ガバッと顔を上げた賢者は、俺の袖をグイッと下に引っ張り、さらに俺の顔が彼女の顔に近づいた。
すでに近かった距離が縮まり、もう息がかかるくらいの距離になってしまい、俺の顔がさらに熱くなるのがわかった。
だが、賢者の顔を見て、すぐに俺の顔からスーッと熱が逃げて行ったのを感じた。
なぜなら、俺にしがみつき息がかかるくらいの距離にある賢者の顔がいたって真剣で、俺を見つめていたからだ。
その眼には、恥ずかしさや黒い感情は一切見受けられなかった。
そこにはあったのは、気圧されんばかりの強い感情
歪みがなく、ひたすらにまっすぐな一本の芯のようなものも感じられた。
その眼は、見慣れたものであり、もう見られないと諦めていたものでもあった。
・・・・そうか
あ ん た 以 外 にも、こんな眼をするやつがいたんだな・・・
賢者の顔を見下ろしながら、俺は自然と表情が緩んでしまった。
こみ上げてくる懐かしさに、少しだけ目頭が熱くなった。
ああ、そうだ
あの時も似たような
「―――――今度こそ」
「えっ?」
気がつくと、俺は賢者の華奢な身体をギュッと引き寄せていた。
自分でも、どうしてこんな事をしているのか分からない
だが、こうしないと離れていってしまうような気がしたのだ。
あの時失ってしまった・・・・・大切な、大切な―――――――
「今度こそ、絶対に・・・・護ってみせる」
「あっ、えっと・・・・・ふぇえっ!?」
ボフンッと音が聞こえたと思えば、賢者が真っ赤になって変な声を上げた。
まあ、突然こんな事をされて驚かない方が珍しいだろう
今更になって、俺も自分のやっていることを自覚し始め、少々・・・・かなり恥ずかしい
だが、いくら恥ずかしくてもこれだけは言わなければ
俺は、少しだけ呼吸を整え、そして賢者に告げた。
「――――賢者様、その申し出・・・・謹んでお受けします」
「あうぅ・・・何でかドキドキが・・・・・へっ?、あの、ケリスさん?今、なんて?」
俺は、賢者を一度自分の身体から離し、しっかり顔を見て再び告げた。
「・・・・・至らない所も多いですが、これからよろしくお願いします」
正面切って、もう一度そう告げると、今度は両目をまん丸く見開き、固まってしまった。
し、しまった
あまりにストレートに言い過ぎたか?
これじゃ話しが進まない
そんなことを考えていると、突然固まっていた賢者の頬をツーッと涙がこぼれた。
それに続いて、次々と涙の粒が流れ出し、ポロポロと鳴き始めてしまった
突然の事に、理由が分からず俺は軽いパニックになってしまった
「えっと、その、賢者様?突然どうし――――――――」
「―――――良かった、ありがとうございます・・・・・ありがとう、ありがとう・・・・ふえぇぇぇ・・・・・」
声を掛けてみれば、感謝の言葉をこぼして、とうとう声を出して泣き出してしまった。
どうやってこの状況を改善しようか考える
だが、いい方法が即座に思いつくはずもなく、俺はあたふたと慌てることしかできなかった。
【めでたい、これはめでたいでござるぅぅうう!!!!】
【おめでとうなのじゃ!!、おめでとうなのじゃ!!!】
すると、いつの間にか近くにシロとハクがいた。
前足をグワンッと高らかに上げ、何度も何度もフゴフゴとないている。
【ついに、賢者様に素敵な殿方が見つかったでござる!!!】
【うぬっ!、生涯独り身でおられると思っておったが、よかったのじゃ!!!】
【そうでござる、なんせ賢者様も今年でもうr――――――――――】
「―――――――あらハク?、顔に大きな虫が」
底冷えするような声とともに、突然ハクの姿が俺の視界から消えた
どこへ消えたのかと思えば、地鳴りと「プギィィイィィイイ」という鳴き声ともに、空からハクが降ってきた。
よく見ると、先ほどまでハクが立っていたところに巨大な一本の水の腕が――――――――
「ふふふ、ハクったら大げさね・・・・ねぇ?ケリスさん?」
「そ、そそ、そうですね・・・はははっ」
賢者は、ニコニコしながらそう言って俺の方を見たので、俺も何とか笑顔を作って笑い返した。
だが、内心では賢者の笑顔の裏に見える得体のしれない何かに、ガクガクと震えていた。
よく見ると、シロも吹き飛ばされたハクを見たままガタガタと可愛そうなくらい震えていた。
よ、よし・・・早速いい情報を得た。
これから賢者と長く生活するんだ・・・・・年齢のことだけは絶対に触れないようにしよう。
俺は、賢者に笑顔を向けたまま、心の中でそう強く決めた
そう、この日から俺は、帰らずの森を守る守護者
―――――――――“ 森 の 守 り 手 ” となったのだ
どうも皆さま、作者の蛇炉です
久しぶりの投稿になってしまったわけなのですが、今回の話はいかがだったでしょうか?
自分でも小説自体、久しぶりに読んだり書いたりしているので少々不安ですが、今できる精一杯をこの話に詰め込んだつもりです。
さて、今後も今回のように長期間更新をしないかもしれませんが、完結するまで書くつもりなので、最後までお付き合いしていただけると幸いです
それでは、長くなってしまいましたが、この辺で・・・・・