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ケリーと帰らずの森   作者: 蛇炉
4/8

第四話 

※誤字・脱字・誤変換等が多々あるかもしれません ご了承ください

一角狼ホーンウルフ


討伐ランクはE~C

一個体にはそれほどの力はなく、とても脆い

通常は5~7匹程度の群れを作り、行動をする魔物

獲物を狩る際、音もなく周りを包囲し、息もつかせぬ波状攻撃で獲物を仕留める

魔物でありながら、どのようにタイミングをとり、どのように連携をしているのかは判明していない

ある冒険者の話では、“一角狼”の持つ一本の角で互いの思考を送りあっていると言われている

故に、年月を経てそれなりの数の群れを作っている“一角狼”は、Cランクまで危険度が上がる。


この、Cランクの群れとして最近有名なのが “セオール”近郊に出没している群れだ


この群れは、つい最近目撃情報が上がってきたばかりだが、数が通常の3~4倍ほどの規模

群れが出来てそれほど年月がたっていないにも関わらず、驚くほどの連携をとり、攻撃も獲物を仕留めるまで途切れることのないとのことだ。

この群れに襲われてしまった近隣の村は、これらの情報を提供してくれた村人一人を残し、全てが殺されてしまったとのこと―――――――――














===========





「―――――ですが、あなた様達はこの短時間で見事に退治してくれました。おかげで命拾いしました、本当にありがとうございます。」




馬車を全速力で飛ばしながら、町長は俺に向かって深く頭を下げた

これで何度目だろうか?

後ろにいる俺にわざわざ・・・危ないから下じゃなくて前を見て運転してほしい

・・・・はぁ


激しく揺れる馬車の上、そこにあぐらをかき頬杖をついた俺は、これも何度目になるか分からないため息を吐きつつ空いている手をひらひらと振った。

それを見た町長は、再び前を向き、威勢の良い声で鞭を振るい、馬車馬の速度を上げさせた。



俺は今、先ほど助けた馬車の上に乗り、“セオール”を目指していた。

どうやら、助けた馬車は“セオール”の町長だったようだ

“一角狼”を追い払い、安全になった途端――――――――


「ああ、冒険者様ありがとうございます!!!貴方が私の町へ来てくださる予定だった方ですね?・・・時間がありませんので、細かい話しは移動しながらで・・・さあ!!速くこちらへ!!!」


―――――と言われ、俺は問答無用で馬車に乗せられたのだ。


まあ、俺はすぐに馬車の中から屋根の上に上がり、二頭がしっかり付いて来ているか確認していたのだが・・・・どうやら心配ないようだ




【ぬおおおぉぉぉっ!!!!ケリス殿をどこへ連れて行くでござるぅぅ!!!!!】

【わっちらを振り切れると思ったら大間違いなのじゃぁぁぁ!!!!!】




・・・・前言撤回

到着したらあいつらの説得から始めよう

いや、待てよ

そもそも、あいつら魔物をどうやって町に?

いくら説明しても、所詮魔物は魔物だ。

町の人間がいい顔をするわけがない・・・・・

外で待ってろと言っても、おそらく奴らは聞かないだろうし・・・・

う~ん、何か良い案はないか―――――――




「冒険者様!!!、もうじきセオールに到着いたします!!!。馬車のまま町に入りますので、あの二頭を減速させ、馬車の後ろへ付けさせてください!!!!」


「・・・・わかった」




どうやら、町長は奴らを認めているようだ。

まあ、それならある程度のごまかしはきくだろう

俺は、後ろを追ってきている二頭に声を掛け、一列になって町の中へと入っていたのだ。




町に入った俺たちは、とにかくまっすぐ道を進んでいき、やがて大きな通りに抜けたところで町長は馬車を止めた。

何事かと町長へ視線を向けると、町長は御者台から転がるように飛び降り、近くに寄ってきた一人の男に近づいていき、何やら話しを始めた。

しばらく男と話していると、突然こちらを振り向き、大きく腕を振られた。




「そちらの二頭は一端この男に任せてください、冒険者様は私が案内します、お早く!!!」




町長がそう叫ぶと、先ほどまで話していた男がこちらに駆けてきて、馬車とベルノーム達の近くに来ると、馬の手綱を掴み、そのままどこかへ引っ張って行ってしまった

ベルノーム達は少し困惑した様子だったが、俺がついて行くように言うと素直に馬車の後をついて行った。

俺は、それを見届けてから町長の案内で数分走らされ、ようやく町の診療所まで連れて行かれたのだった。

町長は、診療所に付くなり扉を乱暴に開き、中に飛び込んでいった。


・・・・さっきから、何をそんなに慌てているのだ?

薬が切れただけだろう?

依頼内容的にも、“患者を診てほしい”という程度のものだ

なにも、あそこまで急ぐ必要ないだろうに・・・


俺も、少々呆れつつ入り口をくぐって中に入った。





そして、俺の視界に飛び込んできたのは目を疑うようなものだった。

















―――――うわあああぁあぁぁぁあぁあああ!!!!!


      ―――――――く"る"し"い"い"ぃ"ぃ"ぃ"よ"ぉ"お"お"ぉ"!!!!


  ――――――――おい!!はやく水もってこい!!!

     ――――――こっちも手一杯だ!!!、お前、あっちに水持ってけ!!

   ――――――――分かったわッッ!!!



   ―――――あああぁぁぁぁがぐぁああぁぁあああ!!!!


           ―――――――こ"ろ"し"て"く"れ"ぇ"え"え"え"え"ぇ"ぇ"!!!!



―――――――クソ、クソ、クソ、クソ!!!!

――――――いやッッ!!お願い私を見ないで!!

    見ないで!!!!

      見るナああぁぁァァアアア!!!!!!!!




「・・・・これは」




中は、酷い有様だった。

おびただしい数の人々が、駆け回り、叫び、暴れていた。

ベッドが足りておらず、床を埋め尽くさんばかりに人が横たわっており、うめき声や叫び声を上げていた。

診療所の人間らしい人物は見当たらず、桶やタオルをもって走り回っているのも町の人たちだろう

あちこちから、水を求める声が上がり、そのたびに誰かが立ち上がって水を運んだり、居なくなった人の穴を埋めるように違う人がその患者に付いていた。

よく分からないが、看病してる側は、必死に患者の身体をタオルで拭いている。

そのたびに、患者は目を見開いて叫び声を上げ、苦しそうにのたうち回っていた。



なんだこれは・・・・想像以上だ



俺は目の前に広がっている光景に、思わず顔を顰めた。

すると、突然誰かが俺の腕を掴んで来た。

視線をそちらに向けてみると、町長が息を切らせながらものすごい形相で俺を見ていた。




「こ、こ、これは一週間ほど、前から、いきなり流行り始め、既に町民や、妻も、身体から、謎の黒い、斑点が・・・・・もう、誰も死なせたく・・・・お願いします!!!、助けてください!!!」


「・・・・・っ!!」




俺は一番近くに寝転がっていた患者に近づき、身体を確認してみた。

すると、身体には確かに黒い斑点がいくつも浮かび上がっていた。

しかも、その斑点は徐々にだが肥大化しており、身体を侵食していた。

その間も、患者は苦しそうにうめき、玉のような汗を掻いていた。

俺は、黒い斑点に触れてみようと手を伸ばしたが、素早く町長に腕をつかまれ止められてしまった。

どうやら、斑点に触れてしまうと移ってしまうようだ。

この患者も、看病中に斑点が移ってしまったらしい。

だから、タオルで必死に斑点をこすって進行を遅らせようとしてるとか

正しい処置なのか、ただ患者を苦しめているだけなのか分からないが、とにかく何かしなければと思い、こうして発病が発覚してからはずっと続けているそうだ。

町長は、冒険者の俺ならばこの病気がなんなのか知っているのでは?

あわよくば、治療法を知っているのでは?っと、藁にもすがる思いで依頼を出したそうだ。




・・・・・クソ、俺にどうしろって言うのだ

こんな病気、初めて見るぞ?

身体に黒い斑点が浮き出てくるだと?

しかも、感染力がきわめて高い病気だと?

身体の浸食も速い・・・・

加えて、激しい痛みまで・・・・


・・・クソ、分からない!!!!

何なんだこの病気は!!!


クソ、クソ、クソクソクソクソクソクソッッ!!!

考えろ!!、思い出せ!!!、頭を働かせろ!!!!


何か、何かあっただろう!!!!

・・・・・そうだ!!!!

あった、あったぞ!!!

似たような症状が出る病気があった!!!!


ここらじゃありあまりみないが、こういった症状の病気があるって確か読んだだろ!!!

確か・・・たしかっ!!!







~~~~~~~~~~~~~~~~~


病名:・・・・・・・ダメだ


場所:大陸の北・・南・・東部か!!!

   東部の・・・木・・水・・・山・・・森林部!!!

症状:斑点・・・腐食・・・灰・・・粉・・・黒粉化現象???

原因:薬草・・・花粉・・・・胞子だ!!! 

解毒法:・・・・・・・・摂取?、何を???、何だ、何を摂取させる!!!!

    水?果物?肉?木の皮?薬草?

―――――――

~~~~~~~~~~~~~~~~~









・・・・落ち着け

しっかりしろ

冷静になれ

俺なら思い出せるだろ!!!











~~~~~~~~~~~~~~~~~


病名:・・・・・・


場所:大陸東部の森林部に多く見られる

症状:身体に斑点の様なものが浮かび上がり、激しい痛みを感染者へ与える

   斑点には、強い感染力があり、幹部に触れれば触れた箇所から感染

   10~14日で感染者の命を奪い、身体が灰のように黒い粉状になる。

原因:東部の森林に生える特殊なキノコの胞子が身体に付着することで発病

解毒法:――――――を摂取させれば、痛みを和らげ自然治癒力のみで解毒が可能になる   


何だ、何をだ!!

何を摂取させる!!!

クッソ!!!!

病名だ、病名が分かれば情報を逆引き出来るのに!!!!

病名・・・なんだ・・・この病気の病名!!!

     

~~~~~~~~~~~~~~~~~






【わ、わわ!!!こ、こ、“黒 粉 病こくふんびょう”でござるっ!!】

【なぜなのじゃ!?、なぜこのような場所で“黒粉病”が流行ってるのじゃ!?】


「――――――っ!!!、それだッ!!!!!」




背後から聞こえてきた声で、俺の頭の中には、黒粉病に関する情報が浮かび上がってきた。

それからは、驚くほど迅速に事態を収拾することが出来た。


何てことはない、この病気は感染力が強く、激しい痛みまで起きる恐ろしい病気だ

だが、病気を治すのはきわめて簡単

この病気は “死滅しやすい”

それこそ、人間の治癒力だけで十分対応できる

だが、この病気は身体の表面から体内をむしばむ

いくら死滅しやすくても、体外から大量の菌が体内へ侵入してしまえば人間の治癒力では処理しきれない

では、どのように対処すれば良いのか?


答えは簡単

“体内に抗体を作ってしまえば良い”

つまり

“身体に出た黒粉を少しだけ体内に取り込ませれば良い”


そうすることで、体内で即座に黒粉を死滅させ、身体に抗体を作らせることで体内への侵食を防ぐことが出来る。

あとは、抗体と自然治癒力で、“黒粉病”の菌が死滅するのを待つのみだ


俺は、素早くこの情報を町長とまだ感染していない奴らに伝え

早速、患者自身の黒斑点から微量の黒粉をとらせ、それを患者の口へ突っ込ませた。

すると、患者達はすぐに叫ぶのを止め、静かになった。

念のため、感染していない奴らにも粉をなめさせた、新しく感染者を出さないようにした。

あとは、手分けして患者に粉を突っ込み、1時間ほど作業を続けてようやく全ての患者の解毒を終わらせることが出来た。


ちなみに、どうでも事だが

この黒粉というのは、医療用の麻酔の原料として良く使われる。

実はこの粉、大変強力な“痛みを抑制する作用”があり、水に爪の先ほどの量を混ぜるだけでかなりの長時間効果を発揮するのだ。

今、患者が苦しむことなく寝ているのも、おそらくその鎮痛作用が働いているからだろう



まったく、“毒をもって毒を制す”と言うが・・・・世の中は良く出来ている













===========














「冒険者様、重ね重ね・・・・本ッッッ当にありがとうございましたッッ!!!!!!!」

「「「ありがとうございましたッ!!!!」」」



解毒も終わり、近くの壁に寄りかかって休んでいると、数人の町民と町長が突然俺の前にひれ伏した。

あまりに突然のことに、俺は思わず顔を引きつらせてしまったが、依頼を熟しただけだと伝えると、さらに深々と礼を言われてしまった。

是非、お礼をさせてほしいと今晩の飯と宿を提供させてほしいといわれたが、丁重にお断りした。

金目当てで、しかも誰も彼もが疲弊しているこの現状で俺だけが良い思いをするのは、どうにも気が引けてしまう。

それに、これからベルノーム達を賢者の元へ送り返さなければならない

“俺への恩”がどうのと言っていたが、知ったことか

魔物が二頭も身近に居ては、今後町に入るときに無駄な労力を割かなければならなくなる。

依頼以外の面倒ごとは御免だ。

お礼を断ると、村長達は「では、せめて報酬だけでもっ!!」と依頼書に書かれている金額の倍近い金を俺に渡してくれた。

これも断ろうと思ったが、村長に「命を救っていただいた代金です。お納めください」と言われ、渋々受け取った。

筋が通ってない訳ではないので、これ以上食い下がっても無駄だろう。

俺は、思いも寄らぬところで金を稼げ、少しだけ足取り軽く二頭の元へ向かった。

・・・・向かったのだが








「―――――――誰だあいつら?」




二頭が居るはずの場所には、どこかで見たことあるような男女がいた。

頭のてっぺんからつま先まで全てが真っ白で、どちらも整った顔の作りをしており、どこか森の賢者と似たような雰囲気を醸し出していた。

二人は、こちらに気がつくと、お互いの顔を見合わせ嬉しそうな顔をすると、突然こちらに駆け寄ってきた。

俺は、後ろを振り返ってみて誰か居ないか確認してみたが、誰も居ない

どうやら、二人の目標は間違いなく俺のようだ。

流ちょうにそんなことを考えていると、二人はガバッと両手を広げ、棒立ちだった俺に覆い被さるように抱きついてきた。


うおっ?!、なんだこいつら!?

いきなり襲ってくるとは、それ相応の覚悟があってやってるって事でいい――――――――




【ケ~リ~ス~殿ォ~!!!!】

【無事でよかったのじゃぁ~!!!!】




二人は、俺に抱きついたまま、オイオイと鼻水と涙を流していた。



・・・・どっかで聞いた声

どっかで聞いたしゃべり方

どっかで見た反応


・・・・あ~、ちょっと待てよ

あり得ないことだが、そうなのか?

なんか、ほぼ間違いないと思うが・・・・マジなのか?



俺は、抱きついてきている二人を引きはがし、苦い顔をしながら二人に質問をした。




「な、なぁお前らって・・・・・もしかして、あの真っ白なベルノーム達なのか?」


【うむ!!!まごう事なき、拙者が “ハク” でござるよ~ぉ!!ケリス殿ぉ~】

【わっちが“シロ”なのじゃ~ぁ、ケリス殿が無事で本当によかったのじゃぁ~】







・・・・・・・どういうことだ?

誰か、説明してくれ



















================









「なるほどな・・・・賢者にやり方を教わって、人になれると?」


【そうでござる。拙者たちは、たゆまぬ鍛錬を繰り返し、つい最近この“人化”を覚えたでござるよ!!!】

【辛かったのじゃ。“人化”するために大幅に力を抑える鍛錬、“魔”を大量に消費し人に近づけ維持する鍛錬、後ろ足のみで立ち上がるという小っ恥ずかしい格好で歩く鍛錬をせねばならぬのじゃ!!!!】


「そうなのか・・・」




かなり誇らしげに二人はそう言っているが、正直俺にはそのつらさがさっぱり分からなかった。

だが、この二人の魔物が規格外であるのは十分理解できた。

しかも、魔人なのかと問えば【【全然違うでござるッ(のじゃッ)】】と強めに否定されてしまった。

どうやら、この話はあまり振らない方が良いようだ。


そんなことよりも・・・だ




「お前ら、人型で四足歩行しなくても良いんじゃないか?」




俺が指摘すると、四つん這いで俺の両サイドに居る二人は、不思議そうな顔で俺の方に顔を向けた。




【ケリス殿以外の人間が居ないのに、なぜ後ろ足だけで歩く必要があるでござるか?】

【そうなのじゃ、ケリス殿には分からぬかもしれぬが、わっちらにとっては後ろ足で歩くというのはとても恥ずかしいことなのじゃ。やる必要がなければあのような破廉恥な格好はとらないのじゃ】


「いや、まあ・・・・そうか」




俺がそういうと、二人は再び正面を向き、そのまま四足歩行で歩き始めた。


・・・・「もう草原なんだし、人から獣に戻れば良いのでは?」と、言おうと思ったのだが、本人達が気にしていないのであれば、まあ・・・・・いいか?

・・・いや、正確にいえば四足歩行だと “シロ” の尻のラインがはっきり見えてしまうから、目のやり場に困って居ているのだ

出来れば止めてほしいのだが・・・・まあいい

“シロ”ではなく“ハク”の方を見ていれば、問題ない

それに、人型の方が他の人間に会ったときに言い訳が―――――――




【ぬぅ、それにしても歩きづらいでござる。“人化”すると身体も脆くなるでござるな?】


【ぬぬ、確かにそうじゃ。膝が痛いのじゃ、何か良い方法はないか・・・・・】


【ぬっ!?、そうでござる!!、こうして尻を上げ、足を伸ばして歩けば良いのではござらんか?】


【ん?、こうかの?・・・・おおっ!!、ちと歩きづらいが、痛くないのじゃ!!!】


【ふっふっふ、これで痛みなく歩けるでござる】


【さすが“ハク”なのじゃ、わっち、惚れ直したのじゃ!!】


【はっはっは!!、そうでござろう、そうでござろう!!!】



「おいこらバカ夫婦!!!!、それは人の格好でやるとマズイ格好だ!!!」




とんでもない格好で高笑いをあげる“ハク”と、同じ格好で恥ずかしげもなく笑っている“シロ”を俺は叱りつけた。

結局、人型から元の姿に戻らせることにした。

二人は、人の姿から戻れという案を聞いて


【そ、その手があったでござる!!!】

【やはり、ケリス殿は頭が良いのじゃ!!!】


と俺のことを褒めてきたが、正直褒められた気がしなかった・・・

元のベルノームの姿に戻ったところで、俺たちはゆっくりと“帰らずの森”を目指した。

その途中で発覚したのだが、こいつらが俺よりはるかに長い年月を生きていた。

軽く百年近く俺と離れていて、正直驚いた。

“黒粉病”のことも、かなり前に賢者から見聞きしていたらしい

だからあの時病名を叫んでいたのか・・・・

おかげで、俺も何とか対処できた。

後で礼でも言っておこう


それからは、本当にたわいのない話をしていた。

二頭はとてもはしゃいでおり、俺よりも少し離れた位置で仲良くワイワイと駆け回っていた。

森の外に出たことがないのか、物珍しそうにいろいろなものを見つけては質問してきた


・・・のだが、ことあるごとに


【ケリス殿!!、あれは何でござるか?】

【ケリス殿!!、何か動いてるのじゃ!!】


【ケリス殿!!、見かけぬものを拾ったでござるよ。これは何でござるか?】

【ケリス殿!!、それはなんなのじゃ?、うまいのか?】


【ケリス殿!!】

【ケリス殿!!】




「・・・・・・・・・」




だんだん、名前を呼ばれるとゲッソリとした気持ちになってきた。

聞いてくるものも、冒険者が落としていった装備品や野宿のあとで残った残飯ばかりだ。

中には、魔物が隠れていたのを知らせてくれた事もあったのだが、こうも引っ切り無しにいろいろ聞かれては、こちらの精神が持たない。



正直に言うと、面倒くさい。

まるで子供の御守りだ

はぁ、早く森につかないだろうか・・・・



楽しそうにはしゃぐ二頭を見つつ、俺はため息を吐きながら森へ戻ったのだった。



















============



「―――――そうですか、その様なことがあったのですね」


「ええ、あまり面白い話ができなくて申し訳ない・・・・・」




俺は苦笑いを浮かべつつ、森の賢者に謝ると賢者は微笑んで俺の言葉を否定した。

その笑顔を見て若干眩暈がしたが、疲れでもたまってたんだな・・・・そうに違いない!!!


俺は頭を振って余計な思考を取り払い、再び賢者に今回のことを話した。


俺たちは、森の賢者のもとへ帰ってくることができ、今回セオールであったことを一通り話していたのだ。

まあ、話と言っても大したものではなく、これと言って重要なことはまだ話していた。

ハクとシロについての話になると、賢者は申し訳なさそうな顔をするのでなるべく控えている。

まあ、人化の時の話や本人たちは気づいていないだろうが、“黒粉病”の解毒の時に助けてもらったことを話した。

おおむね、賢者は黙って話を聞いていたのだが、俺が“黒粉病”の名前を口にした瞬間、賢者の表情がわずかにかたくなった。

どうしたのかと思い、つい首を傾げてしまったが、賢者はすぐに元の表情に戻り同じように話を聞いてくれた。

俺が一通り話し終えると、賢者は再び表情をかたくしてしまった。




「―――――――そうですか・・・・“黒粉病”が、ですか。・・・・困りました」


「・・・・賢者様、どうしたのですか?」




俺がそういうと、賢者は困った顔で俺を見つつ、何かをためらうように口を開いたり閉じたりを繰り返した。

そのたび、顔を少しそらしたり、目でチラチラとこちらを見てくる姿がまるで小動物のようで、思わず抱きしめて安心させ―――――――何を考えてるんだ、俺はッッ!!!!




「・・・・・・あの、ケリスさん」


「俺は一体何を・・・・えっ?あっ、はい!!なんですか?」


「その、えっと・・・・また私からお願いしたいことが・・・・いいですか?」


「は、はい!!・・・・・出来る範囲でよければ」




つい即答してしまったが、すぐに一言付け加えておいた。

あまりに無理な頼みは、無責任に受けることは出来ない。

あくまで“お願い”なのだ、自分に出来る範囲でないときいてはいけない。

今まで依頼内容も確認せずに依頼を引き受け、何度とんでもない目に遭っているか・・・・


俺は、その時の事を自然と思い出してしまい、涙が出そうになった。

ああ、出来ることなら記憶から消し去りたい・・・




「・・・・ケリスさん?、ケリスさん聞いてますか?」


「どうしてあの時・・・・・・えっ?、あっ、すみません聞いていませんでした。」




思わず俺がそういうと、賢者様は不機嫌そうに口をとがらせてジトッとした目を向けてきた。

慌てて謝ったが、賢者はまるで子供のようにほほ袋を膨らませた。


くっ、かわいい・・・可愛すぎる!!

いやいやいや、落ち着け俺

賢者様から頼みごとがあるんだ、こんな邪な考えを持ってちゃダメだろ


俺は平謝りを続けつつ、必死に心を落ち着かせた。

しばらくして、ある程度落ち着きを取り戻せた俺は、再び賢者の話を聞くことにした。




「実は、つい最近あなたのようにこの森に迷い込む人が増えてしまっているのです。・・・その、人が迷い込むこと自体はそこまでおかしくないのですが・・・・・・今までと何かが違うといいますか、何と言いますか・・・・・・気持ちの悪い?方たちがよく迷い込むようになったんです。」


「は、はぁ・・・・気持ちの悪い、ですか?」


「ええ、どこか邪な気配を感じるといいますか・・・・上辺がきれいで中身がドロドロ・・・って表現で伝わりますか?・・・・・・そんな感じの、嫌な人たちです。この森は、もともとそういった人たちは森に入る前に撃退できるよう、私があれこれ手を打っているのですが・・・・どうやら意味を成してないようで・・・・・・」


「・・・・・・そうなんですか」


「ええ、ですから・・・・・その、私からのお願いというのは―――――――」




そこまでいうと、賢者は言葉を切り、なぜか知らないがうつむいてしまった


・・・・なるほど

なんとなくだが、賢者様が俺に何を頼もうとしているかわかってきた。

要するに、俺が “そいつらを追っ払う” なり “森に入れないように策を練れ” ってところか?

確かに、冒険者である俺に頼むなら、そこらのやつらに頼むより全然成功率が高いだろう

だが、もしそういった内容なら俺の答えは “いいえ” だ。


理由はいくつかあるが、大きく分けて二つだが


一つ

明確な終わりが決められないこと

二つ

そもそも俺に利益がないこと


まあ、引き受けてから賢者がそれらの問題をクリアする条件を出すかもしれないが、俺の答えは変わらない。


俺には、 “果たさなければならない約束” がある

いつまでもこの森に縛られるわけにはいかないのだ。

だから、とっとと断ってこの森を出な―――――――――




「――――――わ、わわ、私の・・・・伴侶になってください!!!」


「そうですか、伴侶ですか・・・・・残念ながら断らせて―――――――――――はあっ?」




すでに頭の中にあった断りを口に出そうとして、賢者の言ったことの意味を理解して、思わず声を上げていた。


・・・・・マテ

イマ、何テイッタ???


俺は、混乱する頭で必死に考えようとしたが、賢者はそれを遮るように再び声を張り上げていた。




「わ、私の・・・人生の伴侶になってくださいっ!!!!」










・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?



・・・・どういうことだ?

誰か、説明してくれ














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