第九話 冒険者ギルド
説明回
明日から仕事が始まりますので、更新速度が遅くなります。
騎士に教えてもらった道を進み、三十分ぐらいしてようやく冒険者ギルドらしき建物を見つけた。この町無駄に広すぎやしないか。
建物は二階建てで、全体が削りだした石を組み合わせて出来ていた。所々にある窓は木材のみだ。ガラスは開発されていないのか、高価なのだろう。
入口付近には剣と盾が彫り込まれた看板がぶら下がっていた。
ドアを開けて中に入ってみると、手前が待合室の様になっていて、向こうの壁際に受付カウンターが並んでいる。左手の壁には掲示板がかかっていた。所々に柱が立っているが、このフロア自体は結構広い。今は暇な時間帯なのだろうか、待合室で待っている人たちはまばらだった。
カウンターは全部で五つあり、その上にはそれぞれ『案内』『依頼受付』『受注受付』『完了受付』『清算受付』の文字が彫ってあった。ただこの世界は識字率が低いと思われるので読める人は少ないだろう。
俺は『案内』と書かれた受付へ行き、カウンターへ座っていた女性へ聞いてみる事にした。女性は茶髪のミドルヘアーをしていて、ギルドの制服を身に着けている。近づくと気が付き、こちらを向いた。
「済みません、冒険者登録をしたいのですが。」
「はい、ではこちらで承ります。登録には銀貨一枚かかりますがよろしいですか?」
「はい、問題ありません。」
「身分証明書はお持ちですか?」
ここでも身分証明が必要か、まあ、当たり前か。
「仮の身分証明証でも宜しいですか?」
「はい、問題ありません。」
東門で発行された物を、女性へ手渡す。女性は証明書を確認した後、こちらへ向き直る。
「ケイジ・クロキ様ですね。冒険者ギルドへの登録は初めてですか?」
「はい。」
「では手続きをしますので、少しお待ち下さい。」
女性は書類に何かを記入し、渡した証明書と一緒に後方にいる職員へ渡した。女性は椅子へ座り直して再度こちらを向く。
「では登録に関して説明させて頂きます。冒険者には最低のI級から、H、G、F、E、D、C、B、A、S、そして最高のL級の11等級があります。冒険者として登録すると必ずIランクへ登録されます。この時点で受注出来る依頼は薬草採取等の簡単な物から始まります。依頼を完了するとそれに応じてランクアップに必要なポイントが得られます。このポイントは難易度によって得られる量が違いますので、難しい依頼を達成する事で早くランクアップする事が出来ます。ただし、難しい依頼はその分危険が伴います。ここまでで質問はございますか?」
「いえ、ありません。」
「では説明を続けさせて頂きます。依頼を受けるには、まず左手にある掲示板から受けたい依頼表を一枚のみ剥がして、受注受付へ冒険者証と一緒に提出して下さい。特別なケースを除いて、複数の依頼を同時に受注する事はできません。受付が済むと受注証明証が発行されますので、それをお持ちになって依頼を達成して頂きます。期日までに目的が達成出来なかった場合、依頼は失敗となりますのでご注意下さい。達成しても失敗しても必ず完了受付へ受注証明証を提出して下さい。ここまで質問はございますか?」
小難しい内容ではあるが、大体理解した。無いと答える。
「説明を続けさせて頂きます。長くなりますのでよく聞いて理解をお願いいたします。依頼を達成するには依頼表の内容を、忠実に実行する必要があります。例えば薬草採取では指定された種類の薬草を、指定された業者へ、指定数納品する必要があります。納品したら業者からサインと判を貰います。」
「討伐依頼では指定された討伐部位、つまりゴブリンならゴブリンの右耳を切り取って頂きます。それをお持ちになり、冒険者ギルドの裏手にある討伐部位提出受付へ、受注証明書と一緒に提出して頂きます。そこで担当のサインと判を貰います。」
「どちらの依頼でも、それらが終わったら依頼完了受付へ受注証明証を提出して下さい。受注受付のサインと判を貰ったら、それを清算受付へ提出をして下さい。ここまでは問題ありませんか?」
「多分大丈夫です。分からなくなったらもう一度聞きます。」
流石に頭に入らなくなってきた。だが大体は理解した。あとでもう一度聞きなおそう。
「承知しました。それでは説明を続けさせていただきます。依頼失敗をした場合、例えば依頼期日に間に合わなかったとか、護衛に失敗し対象を守れなかった等です。その場合は速やかに、受注証明書を完了受付へ提出して下さい。担当者によりサインと失敗の判を押されますので、清算受付へ提出をして下さい。依頼表に違反金が指定してある場合、その額を支払って完了となります。ここまで大丈夫ですか。」
そろそろ頭がパンクしそうだけど、まだいける。はいと答える。
「依頼とは別に魔物に遭遇して倒した場合、討伐部位を持って頂ければ依頼外報酬を受け取れます。裏手の討伐部位提出受付担当者へお渡しください。依頼外報酬受取証を発行しますので、それをお持ちになって清算受付へ提出して下さい。討伐部位に応じた報酬が受け取れます。」
じゃあ薬草採取でも魔物を倒せば、収入アップ出来る可能性があるのか。頑張ろう。
「他には依頼者が直接、冒険者を指定して依頼をする直接指名等がありますが、こちらは実際には滅多に行われませんので、説明は省かせて頂きます。あと、冒険者が重い犯罪行為をした場合、冒険者証を剥奪し、懸賞金がかけられますのでご注意下さい。軽い犯罪でも多額の罰金を支払う等の罰則がありますので、冒険者の品位を落とさない様、心がけて下さい。」
おぅ、懸賞金かけられるのか、気を付けよう。些細な事で犯罪者になるのは御免こうむる。
「登録時の説明は以上になりますが、質問はございますか?」
女性職員が聞いて来たので、気になった部分をもう一度聞き直した。そういえばもう昼過ぎだから宿屋を確保した方が良いか。こちらで案内して貰えないか聞いてみるか。
「済みません、この町で宿屋を探したいのですが、良い所はありませんか?」
「ご希望の条件はありますか?」
うーん、条件と言われてもこの世界の常識がどうなっているのか分からないからどうしようか。どんな宿があるか聞いてみるか。
「どんな宿が有るのか分からないので教えて頂きますか?」
「はい。宿の相場ですが、食事の出ない素泊まりの宿は一泊大銅貨3~4枚、一日2食出る宿は大銅貨5~6枚です。蝋燭や体を拭く為のお湯は別料金になっていることが多いです。」
宿の金額はそれ程高くないな、今は金貨3枚、銀貨10枚あるから2週間くらいは全くもって平気だな。ただ、体を拭く為のお湯って言っていたから、宿には風呂は無いのだろうか?
「済みません、お風呂のある宿ってありませんか?」
「有る事には有るのですが…、料金の方が高額でして、最低でも一泊大銅貨8枚からになります。高いものですと銀貨3枚になりますので、登録したての冒険者では三日ともちません。I級依頼薬草採取では平均報酬が大銅貨4~5枚ですので、お勧めは出来ません。」
ふむ、薬草採取では素泊まりの宿代一泊分と少量食事代にしかならないのか。これは早くランクアップしなければ生活に困窮するだろう。だが自分には創造依頼というチートがある。これを上手く使って短期間でランクアップを果たそう。
「では普通の宿と、お風呂のある宿で出来るだけ安い所を教えて貰えますか?」
「畏まりました。」
女性職員は簡単な地図を見せて説明してくれた。一泊二食付きの宿で近い順に赤熊亭、大盾亭、風呂付き宿は白鶏亭を教えてくれた。
そうこうしている内に冒険者証が出来た様だ。冒険者証は革紐を通したドックタグの様な形で、プレートに現地の文字で『ケイジ・クロダ』と打刻してあった。ランクも打刻してあり、『ランク I』と刻まれている。
「こちらの冒険者証は無くさない様にお願いします。もし悪用された場合、被害に遭われた方から、その責を問われる事がありますのでお気を付けください。」
また責任か、気を付けないといけないな。それだけ治安が悪いって事だな。同業者や、山賊辺りに奪われない様にしよう。
「他にご用は御座いますか?」
「いや、特にないです。ありがとうございました。」
女性職員にお礼を言って冒険者ギルドを後にした。