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28話

 アイドルオタクをやっていて良かったと思うことの一つに、体力が強化されたと言うのがある。リアルタイムで見たい番組のために学校からダッシュで帰ったり、DVDを見て毎日のようにダンスを研究したり、実際に練習してみたりするうちに、体力が養われるのだ。

 怪しいダイエットの広告のようになってしまうけれど、私はアイドルオタクになって体力が付きました!帰宅部だけど冬のマラソン大会で十位以内に入るぐらいには持久力と体力があります!


「はぁ、はぁ……」


 それでもやっぱり学校よりもっと遠い教会から家までのダッシュはきついな。

 体は熱いし、冬なのに汗もかいている。


「ただいまー!」


 勢い良くドアを開けて、そのまま自分の部屋に飛び込む。机の上に置いてあるペン立てから、あの日と同じシャーペンを取り出し、震える手でチョコパルフェのDVDをセットして再生する。


「お願い、お願いだから……」


 リモコンを使って目当ての曲まで早送りする。

 焦っていたのか、無駄にシャーペンをカチカチしてみたり。


『扉の向こう 新しい夢を♪』

「よし!」


 リモコンを机に置き、私は立ち上がった。

 あの日と同じようにシャーペンを高く掲げ、歌を口ずさむ。


「イェーイ! ハイハイ! くるっと回ってー!」

「ジャーンプ!!」


 床を思い切りけって、私はジャンプする。

 高く、高く。なんなら天井にペン先が突き刺さるくらいに。


「ジャーンプ!」

「ジャーンプ!」

「ジャーンプ! ジャーンプ! ジャッ……ひっく、うっ…ジャ……ン……プ……」


 何度も何度もジャンプをした。下にいる親がうるさいというのも聞かずに何度も何度も床をける。シャーペンを振り上げる。

 だけど、ダメだった。私の体は鈍い音を立てて床に戻ってくるばかりだった。


「どうして……どうしてノエルのところに行けないのっ――!!」


 足の裏がじんじんする。私は膝をつき、手をついた。

 何度見てもここは私の部屋だ。大きなプールでもなければ、大きなお屋敷でもない。


「会いたいのに……思い出せたのに……!!」


 声をあげて泣いた。ノエルと過ごした短い時間を思い出せば思い出すほど涙がこぼれてくる。また会えると信じて笑顔でお別れをしたのに。本当は永遠の別れだったんだ。

 ノエルとの日々は、綺麗な思い出として過ごしていくしかないんだ。


チャリン。


 何度もジャンプしていたからか、棚から何かが転げ落ちた。

 顔をあげ、涙をぬぐって拾う。


「これ……」


 落ちてきたもの――それは、いつぞやノエルとデートした時にもらったピアスだった。


『そのピアスが気に入ったんだろ? 買ってやるよ』

『いいんだよ、甘えとけ。な?』

『つけてみろよ』


次々とノエルの言葉を思い出す。


『うん。可愛いぞ』


 ピアスをもらった時のことを最後まで思い出した時、私の涙はもう止まっていた。

 ゆっくりと手を開き、ピアスを耳に付ける。


 諦めちゃだめだ。泣いている場合じゃない。

 ノエルがくれたピアスは確かにこの世界に存在している。

 だからきっと、ノエルだって世界のどこかにいるはずだ。

 諦めてどうする。私はアイドルから何を学んだんだ。

 夢のために、願いのために全力で努力することを学んだんじゃないのか。


「私、諦めないよ。ノエル、絶対あなたにもう一度会うから」

「……俺も諦めない」


 今は声だけだけど、絶対にもう一度会おうと、私はノエルと固く約束を交わした。

 もう一度会えたら、その時は――たくさんの好きを伝えよう。


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