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21話

「ミスしたって」

「そのまんまの意味よ。間違った魔法を使ってしまったの」


 そういう割には後悔してないように見えた。


「まぁ、ほぼ確定なのだろうけど念のために。あなたがここに来る直前にしていた動作を再現してみて」

「ここで、ですか」

「ええ」


 ノエル……いやノエル様の前でもやったけど恥ずかしいんだよなぁ。


「ああ、手振りだけでいいわよ」

「それなら」


 少しだけ気が楽になる。今はシャーペンもないので、ぐっとこぶしを作って、私は二回目となるトリップ直前の再現をして見せた。

 クララさんは、その様子をノエル……いやノエル様以上に真剣に見つめている。

 そして一言「やっぱり」と呟いた。


「間違いないわ。チカコさん、あなたをこちらに召還したのはやはり私みたい」

「それってどういうことなのですか」

「シンクロよ」


 シンクロ? プールでやるやつ?


「共鳴のことよ。レイジナ王国に住む魔法使いには、こういった学校で身に着ける魔術と、元々備えられている魔術があるの。特異体質とでも言うのかしら」


 シンクロの次は特異体質? クララさんもしかして……


「中二病?」

「チュウニビョウ? なあに、それ」


 あ、違いましたか。そもそもレイジナ王国に中二病なんて言葉は存在しないか。

 それに、クララさんの言っていることが嘘だとは思えない。

 現に、私をこうして商店街からここまで連れてきているのだから。

 倒れてしまう直前に聞こえたのも、もちろんクララさんの声で、直前に見た歪んだ景色は、ワープさせるための結界に入り込んだからだと、そう説明を受けた。


「同じ時間にあなたのその動きを、私もしてしまったわけよ。元々備わっている魔法というのは、なかなかコントロールが出来なくて、時には暴走してしまうこともあるの。

 それが、今回のようなケースよ」


 そう言って、今度はクララさんが当時の様子を再現して見せた。

 なるほど、まるでチョコパルフェのふりを知っていると言われてもおかしくないほど、似ていた。

 違うのは勢いぐらいで動き自体は全く同じだ。

 一体何のためにクララさんがこの動きをやったかは謎だけど。


「私の持つ魔術は、同じ時、同じ動きをしている遠くにいる人を呼び寄せる能力よ」

「すごい」


 じゃあ生放送を見ながらチョコパルフェと同じ振り付けしたら、チョコパルフェが家に来るってこと? そんな、そんな能力羨ましすぎる!


「正直どういう時に使うのかよくわからないけど……とにかく、この魔術を私は初めて無意識に使ってしまっていたのよ」


 しかも、動きが同じでも勢いが足りなくて学園まで届かず、ノエル……いやノエル様の屋敷にレテポートしたみたいだと、クララさんは付け加えた。


「そして、あなたを間違えて召還してしまった私には当然、あなたをもとの場所へと送り返す義務がある」

「戻れるんですか?」

「もちろん」


 それを聞いて、私は安心した。元の世界に戻る方法を知っている人、いや元の世界に戻してくれる人がやっと見つかったのだから。

 でもなぜだろう。あの時と同じようなモヤモヤも、同時に襲い掛かってきた。


「こんな話、ノエルさんたちの前で言っても信じてもらえないと思ったから。だから当事者であるあなたに、魔法を使って先にこちらに呼び出して事情説明したのよ」

「そうだったんですね」

「肝心の戻す方法だけど、今すぐってわけにはいかないの」

「えっ」

「新月の夜じゃないとその魔法は使えない。次の新月まで待たなければならないの」


 その言葉を聞いて、なぜか私は嬉しいような気持ちになった。

 まだ時間はあると。

そんな考えがよぎり、日本に戻りたくないのかと自分で自分に疑問を投げかける。


「明日、あなたを送っていくついでにウィルソン家に行くわ、そこで改めて事情を話す」

「はい」

「その時、あなたからも今日経験した私の魔法について説明してくれる?」

「わかりました」


 そう言うと、クララさんは笑顔になった。


「じゃ、今日はここへ泊って行って。ノエルさんには、私から連絡しておくから」

「分かりました」

「それともう一つ」

「何でしょう?」


 また、クララさんは真剣な表情になる。


「あなたは、ノエルさんのことどう思っているの?」

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