17話
「どこに隠れていらっしゃるの?」
「出てきなよ、楽にしてあげるから」
何とも恐ろしい兄妹の声が通り過ぎるのを待って、私はドアにもたれて腰を下ろした。
ここは、私が普段寝室として使っている部屋だ。もちろん戦場の一部にされている。
しかしなんなのあの兄妹は! 優秀なスナイパーか何か?
ブ○ックラグーンとか、ロー○ンメイデンとかにも同じように双子の兄妹(あれ? 姉弟?)や双子の姉妹で戦うようなの出てくるけれど、そっち系? そっち系なの? 実は戦う子ども的な。
ていうか一組につき五チームだったんじゃないの!?
「前回覇者と、一人高校生が混ざっていたら残る三チームになった子供がかわいそうだろ? だからお前らは一騎打ちだ」
「心の声を読まないで!」
備え付けられたカメラに向かって叫ぶ。
時々、実はノエル……いやノエル様が魔法使いなんじゃないのと思う。
「よわったなぁ」
アリスちゃんの頭を撫でながら必死に何か策はないものかと考える。
時間だってたくさん残されているわけでは無い。
「ねえお姉ちゃん」
「んー?」
「あのドアはどこにつながっているの?」
指さす方に目を向ける。ブルーシートを貼った下から、微かに茶色い何かが見えた。
近づいて確かめる。
「え、ドア?」
「小人さんのドアかな?」
「まさか」
「でも小さいよ?」
「うーん……」
今までベッドの影になって気付かなかったけれど、そこには、子どもが一人、しゃがめばくぐれそうな小さなドアがあった。
というかなぜ気付かなったんだろう、今までの私!
「たしか隣は書斎だったと思うけど……」
「お隣の部屋に続いているの?」
「と、しか思えないねえ」
何だがっかりーと言うようにアリスちゃんは小さく可愛らしいため息をついた。
が、すぐに何か良案を思いついたのか、私の膝から立ち上がってトコトコと耳元に寄ってきた。
「お姉ちゃん、あのね……」
*
「待たせたわね」
ギィっとドアを開け、うろうろと私たちを探し回っていた兄妹を呼び止める。
振り向いた瞬間、きっと二人は私を攻撃してくるだろう。でも、いいんだ。
そんなに攻撃したきゃ、好きだけ攻撃するがいい――。
「観念したの? お姉さん」
「アリスのことは逃がしたようですわね」
「ええ、子ども二人くらい私一人で十分だからね」
何これもはやアクション映画にでも出てるような感覚! チョコパルフェもいつかアクション映画とか出るようになるのかな? 運動神経よさそうだし、いいかもしれない。
「随分と僕たちを甘く見ているようだね」
「それが……命取りですわよ!」
「っ!?」
予想通り、二人は素早く水鉄砲を構えて攻撃を開始する。なるべく避けながら、こちら側も攻撃をしながら後ろ向きのままで廊下を移動した。
このまま、もう少し。
「どうしましたの? 全然当たってないですわよ?」
「これじゃアリスが無事でもお姉さんにかかった色水だけで僕たちが勝てちゃうかもね」
「それはどうでしょう?」
にっこりほほ笑むと、一瞬兄妹の顔に疑問の色が浮かんだ。同時にその向こうで、音を立てずにドアが開いた。それを確認し、私はすうっと大きく息を吸い込んで叫んだ。
「アリスちゃん、今よ!」
「何っ!?」
振り向いたのが遅かったわね、兄妹。
「か、覚悟!」
意外とノリノリのセリフを吐いて、アリスちゃんは持っている水鉄砲で、二人の背後から攻撃を開始した。
「挟み撃ちですって!? そんな」
「エリィ! お前はアリスの方を攻撃だ!」
「分かりましたわ!」
エリィのほうが完全にアリスと向かい合う。お互いの背中をくっつけて、これ以上背中を攻撃されるのを防いでいるらしい。
「アリスちゃん!」
「分かってる、お姉ちゃん!」
「アリス、逃げる気ですの?」
「よせエリィ! 罠かもしれないぞ!?」
「待ちなさい、アリス!」
ロンの静止を振り切り、エリィが口を固く結んだ表情で追いかけていった。
その姿は、まるで獲物を狙うハンターみたいに見える。
「じゃ、こっちは一騎打ちで行きましょう」
アリスちゃんの作戦が上手くいけば、勝てるかもしれない。
いや、仮に勝てなかったとしてもいい勝負にはなるはずだ。
そうなれば、アリスちゃんも少しはみんなに打ち解けられるはず。
「有名なウィルソン家のメイドさんだからって、僕は手加減しないよ」
「望むところよ」
お互いの顔を見つめる。
――残り、十分。




