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常華*打ち切り版  作者: タナトス
第1章 邂逅
7/11

Scene4

―20XX 7.22 10:42―

翌日、ガキの日用品などを揃えるためにガキを連れて町に出ていた。しかしこのガキほとんど喋らないし取り乱したりとかもない。昨夜ねぐらに戻ってからも、

『今はお前用の部屋もないからな、そこにある毛布を使って適当に寝ろ。ただし部屋からは出るなよ』

『……(コクリ)』

『腹が減ったら適当に食え。すぐに食えるものはそこの棚に入ってる』

『……(コクリ)』

と、終始この調子である。今も少し物珍しそうに周りを見てはいるが、平静の範疇から出るほどではない。別に良いのだが外見からすれば不釣り合いなほどに落ち着いている。

「なあ、お前齢は覚えているのか?」

「ううん。年齢も覚えてない」

「そうか……」

やはり覚えてはいなかった。元々こういう性格なのか、何かが原因でこうなったのか、ただ警戒されているだけなのかはわからないが、見た目より年齢は高いのかもしれない。少なくともこの落着き様なら20といっても不審に思われたりはしないだろう。

「ねえ」

などと考えていたら、不意に袖を引いてきた。

「どうした?」

「随分表通りから離れてきたけど、どこに向かってるの?」

「あぁ、お前の身分証を手に入れておこうと思ってな」

「なんで?」

第四次大戦がはじまってから、亜人によるスパイおよびテロ行為の防止として世界共通の身分証が人間亜人ともに発行され、携帯することが義務付けられた。これは公共機関の利用などの際に提示を要求され、これに抵抗したり、持ってないのがばれるとよくて実刑、普通はその場で殺されかねない――、などということを説明しながら偽造屋に向かう。ガキは結構熱心に聴いていたが、その様子を見るに忘れているというよりは、元から知らなかったという風だ。学などなくてもただ生きているだけで自然に身につくはずの知識さえ持っていないとは……やはりかなり面倒な存在かもしれない。

「あの」

「どうした?」

「私名前や歳を覚えてないけどどうするの?」

「歳はとりあえず18でいいだろ。名前は何か希望あるか?」

「希望…… ダメ。思いつかない」

「ふむ、まああそこには本来の名前を名乗れなくなったやつとかも来るからな、頼めば適当な名前を付けてくれるからそこで頼めばいいだろ」

まあ追加で金はとられるが、数をこなしているだけあって違和感を持たれたりすることもない名前を付けてくれる。あそこで頼めば大丈夫――

「いや」

「ん?」

「そんなのに適当に名前を付けられるのは嫌」

まあわからないでもないが、

「じゃあお前はどうしたいんだ。何か候補があるのか?」

「あなたが考えて」

「はぁ?」

「あなたは私を拾った。だからあなたが私に名前を付けて」

「んな…いやちょっと待て、正気か?」

コクリと頷いてくる。参った。こんなことになるとは思ってなかった。

「じゃあ、貞――」

「……(ジトッ)」

「冗談だ」

さて困った。当然のごとく俺に名づけの経験などない。とりあえず見た目の印象などから考えればいいのかとこいつを観察する。しかしこいつの髪はすごい。おそらく色は白だがとても艶がよく光を柔らかく反射して銀に光っている。ああ、そうだ――

白蓮(はくれん)、でどうだ?」

「……ん」

「しかし普段から呼ぶには長いな。呼び方は(ハク)でいいか?」

「ん、それでいい」

どうやらお気に召したらしい。それから5分ほどで目的地にたどり着く。

「廃ビル?」

「まぁ、さすがに表通りに大々的に店出すわけにはいかんだろ」

なるほどという風に頷く白を連れてビルに入る。

「邪魔するぞ」

「いらしゃ~い、って珍しいやつがき……」

白を見た店主―ギルバートスミス―がカウンターの奥から出てきて俺の肩に手を置く、

「とうとうやっちまったか……これは相当長くぶち込まれるぞ」

「いや、ちげぇよこいつは」

「いや、大丈夫だわかっている。みなまで言うな」

「んだよ。まぁ解ってんなら話は早い。こいつの身分しょ」

「町でさらってきたんだろ?しかしガキとはなぁ。おまえロリコン趣味だったのか」

「わかってねぇじゃねえか!!」

「はい。町を歩いていたらいきなり連れてこられて……」

よよよと泣きまねをする白、

「お前も乗るな!」

こいつは思っていたよりだいぶいい()性格をしているのかもしれない。


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