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剣聖と呼ばれた者  作者: 茶猫
‐第一章‐ 英雄探し
8/18

オイラとエル 閑話

回想話につき、省略

オイラは、当時種族長だったドワーフの父の息子として生まれた。

父は族長として、ドワーフ族の軍を率いて、最前線で戦っていたため、オイラは、母と一緒に軍の野営地で生活していた。

その頃は人間が嫌いだった。

何故かというと、お父さんが戦っているのに、人間族は本隊から指示だけを出す、臆病な種族だと思っていたから。

お父さんは傷を作りつつも、お母さんやオイラを愛してくれた。

そんな両親を持つオイラはドワーフ族でも数少ない星の力を持っていて、同じように星の力を使うお母さんはオイラに力の使い方を教えてくれて、お父さんはオイラに投剣の扱い方を教えてくれた。


そんな時、野営地に、たくさんの魔族が攻めて来た。

お父さんとお母さんは、オイラやほかの皆を逃がすために、戦って、死んでしまう。

悲しんだけど、それ以上にオイラは両親を誇りに思った。

一人ぼっちになったオイラは、種族長から身を引いた爺ちゃんや、ほかの種族長達や本隊のいる、大きな城で生活することになる。

その頃には、人間の事がもっと嫌いになっていた。

両親の死は、仕方ないと思っていても、8歳の自分には、やっぱり誰かに怒りをぶつけたくてしょうがなかったようで、人間族が半分を占めていたお城の中で、オイラは人間族が、なんで戦わないのかと疑問に思いもやおやと毎日を過ごしていた。

いつのまにか、笑えなくなっていた。


そんな時だ、彼に出会ったのは。

彼は、人間族の中でも一目置かれ、剣を持たせれば大人顔負けと言われていた。


「ねぇ、君、名前は? オレはエルっていうの、8歳だよ!」


ある日、投剣の練習をしていたオイラに、ソイツは話しかけてきた。







「……リック、オイラも8歳」

「へぇ、同い年なんだ……凄いね! オレ、投剣はまだ扱えないや」

「オイラ達ドワーフは、器用なんだ、人間には無理だよ」


嫌いな人間に話しかけられて、オイラはムッとする。

そんなオイラの態度に、さして気にした風でもなく、エルはさらに話しかけてきた。


「なんだよそれ、ねぇ、君のことは聞いてるよ、前のドワーフの族長の子供なんでしょ?

 ……お母さんって、やっぱあったかいの?」

「……うるさいなッ! ……お前らのせいだ、お前ら人間が戦わないから……」


気が付いたらエルに当たっていた。

オイラが怒った理由を、無神経だと思ったのか謝るエル。

でもオイラはもうとまらなくて。


「あ、ごっごめん……オレさ、親いないから、お母さんがどんなのか、聞きたくって……。

 拾ってくれたお義父さんも、この間死んじゃったんだ……」

「ふん……弱いからだろ、人間は戦わないから、弱いんだ、だから死んじゃうんだ! 血がつながって無いならいいじゃんかッ!」


大きな声を上げたオイラに、驚いた顔をするエルは、徐々に表情を険しくしていく。

8歳の少年がしているとは考えられない、とても強い、それこそオイラのお父さんのような闘気。


「……なに、それ……? リック、お前がどんな奴でも、オレのお義父さんを馬鹿にするなら許さない……」


闘気にあてられて一瞬怯んでしまうが、オイラはここで引くわけにはいかずにさらに叫ぶ。


「許さないなら、なんだっていうんだよ! 弱いくせに、ちょっと剣を扱えるくらい、オイラだってできる!」


そこからは覚えていなかった。

無我夢中で、お父さんから教えてもらった投剣と、お母さんから教えてもらった星術、仙術を使って、エルを殺そうとした、エルもオイラを殺そうとした。

でも、負けたんだ。

強かった。人間は皆弱いと思い込んでいたんだ。

首に剣を突き付けられて、オイラは訳も分からず、泣きながら叫んでいた。


「なんでだよ! なんで、オイラは負けてるんだよ! なんでお前ら人間は強いのに! 助けてくれなかったんだ!」


ただ我武者羅に叫んだ言葉を聞いたエルの顔が、オイラと同じように歪む。


「……オレのお義父さんは、君のお父さんやお母さんと一緒に戦ったよ」

「……え?」

「だから、オレのお義父さんはッ! お前ら助けるために死んだんだよ!

 魔王が、来て……皆を逃がすために、一人で魔王を足止めしに行ったんだッ!

 ここの皆もいくっていッたんだけど、でも、オレにッ……オレに、後は頼むって言って……ひとりで出て行ったんだッ!」


そのあとは、二人して泣いたんだ。

憎い感情とか、恨みの感情とか、おおよそ子供が持つべきものではないもの全部を洗い流すように、今までの寂しさを埋めるように、ずっとずっと一緒に泣いていた。

それから、どちらともなく、謝って、オイラはエルと友達になった。

その日からは、心にたまったモヤモヤがすっかりとれて、気持ちよかった。

それから、人間が好きになって、ある日、こういわれた。


「リックは、もっとのんびりしなよ、それから、もっと笑おう!」


にぃっと笑顔になるエルを見て、オイラは久しぶり笑った。

それから、オイラはのんびり、笑って過ごすようになったんだ。

リック「エル~」

エル「んー?」

「あの時は~ごめんね~」

「あの時って?」

「ん~……ナイショ~」

「え!教えてよ!何?きになるじゃん!」

「ナイショったらナイショなの~」

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