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剣聖と呼ばれた者  作者: 茶猫
‐第一章‐ 英雄探し
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英雄の事情

森の中で二人は操られた山賊に出会った。

意識をなくした山賊を倒したアリアは、魔族の仕業と判断し、町への途中にある村で作戦を立てようとするが、そこはすでに魔族の手によって村人全員が、先の山賊のように操られている村だった。

現れた魔族の前で、アリアを気絶させたエルは英雄としての実力を見せつけた。

魔族を討伐した後、『誘惑』が解け正気に戻った村人に、エルとアリアは手厚くもてなさていれた。

幸いあの魔族が来てから日が浅かったため、『誘惑』による後遺症、精神障害などはなく、気が付いた村人たちは元気そのものだった。

村長の提案により、村の集会所に半ば強引に連れ込まれた二人は宴会の中心で苦笑しつつも、食事を楽しむ。




「んッ!? このイモうまいっ!」


この村の習慣に習い、素手で味の染み込んだ一口大のイモをつかみ、口へ放り込むエル。

ゆっくりと咀嚼すると、噛むたびに濃く施された味が染み出てきて、それでも素材の甘みを感じる。

甘みと塩辛さが見事にあっていて、自然と笑みがこぼれる。

そんなエルに、村長が近づき、いきなりイモの説明を始めだした。


「それはこの村の名物、魔法のイモでございます。

 本来、魔法のイモは、魔力の満ちた森の土でしか、育たないのですが、この森は妖精の加護を受けておりますゆえいつでも魔力に満ち満ちております。

 そもそも、この村の名前はフェアリー・ウッドと呼ばれ……」

「へ~、アリアも食べてみれば? すげー美味いよ!」


村長の長話を右から左へ受け流すという、いささか失礼な行為をしつつ、アリアにイモを促す。

二人は、食べ、飲み、歌い、踊る。

エルは酔った村人に絡まれ、酒の早飲み対決をしたり、アリアは村の若者や子供たちに、いろんな旅の話をした。

そして、盛大に盛り上がった宴会も夜が更けていき、一人、また一人と酔い潰れていく。

真夜中、先ほどまでの喧騒が嘘のように静まり返った集会所。

酒瓶に抱き着き、いびきをかく大人や、すやすやとリズムよく呼吸をする子供を踏まぬよう、ゆっくりと歩いて集会場から出たアリアは、空に上った月を見上げていた。

久しぶりに見る月は満月で、高ぶった気持ちが次第に落ち着いていく。

そよそよとした風は彼女の獣毛をなびかせて、昼間に感じる風とは一味違う心地良さを感じる。

そんなアリアの背後に、エルがゆっくりと近づき、話しかけた。


「やっほー、なーにしてんだい? あひゃひゃひゃひゃ!」

「……風情がないわね」


額に手を置き、呆れかえるアリア。


「まぁいいわ……ねぇ、あなた……『剣聖』って本当?」


ニッコリと笑ったままエルの表情が固まり、数秒の間、二人の時が止まる。


「…………酔ってますよー!」

「嘘つけッ!」


するどいツッコミ。


「まったく、酔ったふりなんて似合わないわよ? あなた白い肌なんだから、酔ってる時は真っ赤になるもの」

「……なんだバレてたの、まぁばれちゃーしょうがないな、隠してるわけじゃないからいいけど、いかにもオレは確かにこの時代で、『剣聖』とか『英雄』って呼ばれてるその人本人だよ」


わざと作った笑顔を消して、素のままの笑みで先ほどの質問の答えをアリアに返す。

そして、今度はエルからの疑問。


「で? なんでオレが300年前の人間だって気付いたの?」

「なんでもなにも、あなたが魔族を倒した時の事、終始見ていたもの」


もう一度時間が止まる。

首をななめ45度に置き、不思議そうな顔をするエル。


「……あっ……アルェー? 君、気絶してたんじゃ……」


心底不思議そうに呟くエルに、アリアは深いため息をついてさらに呆れた表情になる。


「あたしを女の子だと思って手加減しすぎよ、あれは気絶したんじゃなくて、痛くて動けなかっただけ、そしたらビックリしたわよ、あなたがあの英雄だなんて」

「あははー……オレもビックリしたよ、300年立ってたら行方不明になった英雄だもん」

「正直、あの魔族は強かったわ、あたしじゃ、死んでた

 ……助かりました、『剣聖』様」


呆れた顔を戻し、いきなりエルに向き合うと、深々と頭を下げるアリア。

そんなアリアに、あ~っと頬を掻きながらエルが言う。


「気にしないでほしいし、こっちだって危ない所を助けてもらったばかりだしね、それに今さら敬語しないでほしいなぁ、オレ達もう友達じゃん?」


つい先日、出会ったころや、いつもの彼女と違い妙にしおらしいアリアの、犬科特有の突き出た鼻をつんと人差し指でつつき、にっこりと笑顔になる。


「ひゃぅ…… でっでも! 友達なんて、あたしなんかが……」


敬語を辞めてくれるよう頼むが、

それでも、なお身を引こうとしないアリアに、今度はエルがため息を吐き、言葉を続ける。


「はぁ~、じゃあオレから言うよ、友達になってください!

 オレ馬鹿だしさ、そういうのガラじゃないんだよ」

「……エル様が、それでもいいなら……わぅ!?」


下を向き、遠慮がちに言うアリアの後ろにまわりこみ、いきなり胸を揉みだすエル。

突然の刺激に、アリアの思考が停止。

尻尾の先まで固まり、何も言えなくなってしまう。

そんなアリアを気にせずに、むにゅむにゅと胸を揉むエルは、やれやれ、と真剣に溜息を吐く。


「硬いなぁ~、だからアリアは16なのに、いつまでたってもおっぱいが小さいままなんだよ……」

「…………のよ……」

「ん? えっ? なに?」

「何処……触ってんのよぉぉぉッ!」


衝撃。

山賊にあてた蹴りの、数段上、恐らくは彼女の本気であろう強烈なアッパーがエルの顎を正確に捉える。

思考が動いたアリアのその顔は真っ赤に染まり、三角の犬耳がぺたんと横に伏せられる。

尻尾はこれでもかというほど毛が逆立ち、ぼふぼふに。

殴られたエルは地上から10メートルほど上に綺麗に浮き上がり、落下。

ぐしゃっという音とともに地面に激突する。


「バカ! ヘンタイ! シネッ!!」


顔面から落下し、うつ伏せで鼻血を垂らすエルに、言葉で罵詈雑言の暴言を浴びせるアリア。


「ぐふっ……ただの友達としてのスキンシップだったのに……でも、小さくてもこれはこれで……さわり心地はなかなかだったかな?

 ……ぐあっ!?」


何も言わなければいいものを、口をついて出た言葉は更にアリアを激昂させる。

地面に横たわったエルの顔面を、まるで手頃なボールのように蹴り飛ばすアリア。


「ガルルルルッ! 女の子の胸に触るなんてどういうことよっ!」

「あの、ホントマジすんませんでした、僕が悪かっです、以後しない……と思います。

 あっいえ! もうホントしないっす!」

「まったくもう……あたしの尊敬する英雄像を壊さないでよ」

「そんなこと言ったって、そのイメージはアリア、もとい世界が勝手にイエ、なんでもありません」


なんか文句でもあんのか?という威嚇の目でエルを見つめ、萎縮してしまう姿は、少なくとも英雄としての威厳などまったくなかった。


「もういいわ! そこまで言うなら、あんたと友達になってあげる! もう敬語とかしないんだからね?」

「ん、それでいいよ、オレはそっちのほうがいい、じゃ、改めて、初めまして、アリア」


差し出される手を見て、アリアは一瞬、何のことかわからなかったが、すぐにその意味を理解し、自らも手を出して握手する。


「……今日は綺麗な満月だね、アリアは可愛いんだから、笑ってなよ、友達を助けるなんて当然じゃん、そんな改まってお礼を言うほどのことでもないさ。

 それに、オレは友達を、仲間を助けるために、強くなったんだしね」


ふと空を見上げるエルの瞳は、まっすぐで、懐かしそうな表情をしていた。

そんな表情をみて、アリアは言葉を見失う。

月の光に淡く照らされたエルが、先ほどとは違う雰囲気をもっっていたからだ。

おちゃらけた雰囲気ではなく、修行を経た歴戦の騎士や戦士が出す雰囲気。

いきなりのギャップの違いに、エルに見入ってしまった。


「皆もこの月見てるかなぁ……なぁ、アリア?」

「……」

「アリア?」

「エッ!? 何? 何? あ、そうね、見てるんじゃないかな?」


先ほどとはちがった意味で、顔を赤くさせるアリア。


「そういえば、あなたの言う皆って、もしかして……」

「ん? そうだよ、この時代で、英雄ってよばれている皆さ」

「なんでエルや、ほかの英雄様たちが、300年後の、この時代にいるの?」

「んー? まぁ、話せば長くなるんだけどさ」


ごまかすために、別の話題をふったアリアは、先ほどから疑問に思っていたことを口にする。

エルは、その疑問に答えるために事のあらましをアリアに話した。


「なるほど、だからこんな時代にきちゃったのね、あんなボロボロだったのも頷けるわ。

 まさかあの魔王を倒した直後だったなんて、しかもそのあと爆発に巻き込まれたって、よく生きてたわね」

「ん、まぁ、多分クラウスが魔法で防御してくれたんだろうし」

「へー……ところでさ、エル」

「イヤだ」

「まだ何も言ってないわよ……」


転換された話題が始まる前に終わる。


「『私に、剣術教えてくれない?』、いや、『私を鍛えてくれない?』かな?」


アリアの似ていないものまねを始めたエルを見ながら、多少驚いた表情になるアリア。


「……なんでわかるのよ」

「なんとなく、でもアリアは格闘術だし、オレは弟子とかとらない主義だから、なんで強くなりたいの?」

「ん? そっか、エルには話してないもんね、私の旅の目的は、ある男を探すために、なの。

 今回みたいなことは稀だけど、あたしはまだ生きていたいのよ、だから強くなりたいの、エルに迷惑もかけたくないし」

「別に迷惑ではないけど……ある男って?」


ゆっくりと歩きながら話だすアリアの顔を見つめる。

その顔は、怒りや憎しみではないが、喜びや嬉しさでもない。

それは、知らないことを知りたい、好奇心の目だった。

ゆっくりと話始める。


「んー、私のさ、故郷、獣人族の由緒ある一族の里だったんだけどね、6年前に滅ぼされちゃったのよ、同じ獣人にね」

「ん、つまり、その獣人の男に復讐?」

「話は最後まで聞くものよ、私の故郷ってね、『強いものが善、勝ったものが正義』ってのが格言でさ、小さいころに親が、村人に殺されたのよ、

 で、弱かったから死んだってね、でもあたしはそんな割り切れる年じゃなかったし、その後すぐに、村に来ていた人間の師匠に弟子入りして、旅に出たのよ」


一息つき、歩くのをやめ。

近くの切り株に座りさらに言葉を続けるアリア。


「そのころの復讐の相手は里の奴ら全員だったんだけどさ、帰ってきたら、一人の獣人に滅ぼされてたの。

 とんだお笑いよ、今までのあたしの目標、全部持ってかれたんだもの。

 で、今はその男に興味があって旅してるのよ、聞きたいことがあるの、どうして村を滅ぼしたのか? ってね」

「ふーん……」

「先に言っておくけど、気にしないでね? 故郷は嫌いだったから、今ではどうでもいいわ、それに、そんなことが無かったら、あたし今でも弱いままで、エルにも会えなかったもの」

「でもさ……」


言いかけて、つぐむ。

エルの脳裏に、こういう問題に、突っ込んでいいものなのだろうか?と、よぎったからだった。

無論、悩んでいるならば助言をしたかもしれないが、これは彼女自身の気持ちの問題であり、故郷がどうなろうが、彼女はいいといった。

それならば、無理に干渉するべきでないし、エルにできることは彼女を見守ることだけだ。

と、よいしょという声とともに、アリアが切り株から立ち上がる。


「あたしはもう寝るわ、外に出たのはお酒の酔いを醒ましたかったからだし、柄にもなく語っちゃったわ。

 今日は酔ってるし、まぁいいかな? これは、守ってくれたお礼よ、エル」

「……ッ!?」

「じゃ、お休み」


すれ違いざまに、エルの頬に小さく、キスをする。

月の明かりと星の光の下で、二人の顔が真っ赤に染まっていたのは、お酒の酔いとは別のものだった。

そして、長かった夜も終わり、朝をむかえる。















アスカ「今回は種族の種類について簡単に紹介するわ!

    今日は私しかでないわよ」


「まず種族は、『人』『魔物』『幻獣』のカテゴリーに括られるのよ

 簡単なものから説明するわね、まずは『魔物』よ

 これは簡単、そのまま魔族か、それに使役される魔獣しか種類がないわ、この二種類を総称して、「魔物」と呼ぶのよ」

「次に、幻獣種

 主にユニコーンとか、そういう神様のような獣がこれに当たるわ」

「で、最後に人ね、

 もうわかってると思うけど、人は

 人間、獣人、竜人、エルフ、ドワーフの五種族に分けられるわ

 種族によって身体能力とかに差があるから、ここらへんは後日説明するわ

 たとえば、獣人は主に格闘、とか、エルフは主に魔法、とか

 種族によって戦い方に違いがあるのよ」


「今日はここまでね、詳しくは本編か、うまい方法が無かったら、ここで話すと思うわ」

「え? オチがないって? 知るかッ!!」


リック「にゃはは~、尻相撲に負けたのがそんなに悔しかったんだねぇ~」

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