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剣聖と呼ばれた者  作者: 茶猫
-序章- 物語の続き
2/18

英雄の帰還

平和になった世の中に流れる英雄譚。

それは魔王軍との長きにわたる戦い、その戦争の終わりに、魔王と戦った五人の英雄たちのお話。

しかし、どの本や、町の伝承にも、その英雄達のその後は書かれておらず、皆行方不明になっていた。

これはそんな英雄達の、その後の物語。

「急げ!魔王達と戦ってるあの方たちの援護をするんだ!!」


連合軍と魔族や魔獣の声が響き渡る城下町、今頃は下の方でも魔族と戦い、傷ついた者たちがいるだろう。

それでも、部下を信じ、階段を駆け上がる隊長がいた。

上で魔王軍と戦っている五人が見事魔王を討伐してくれれば、この長かった戦いは終わり、魔族たちも逃げ出す事だろう。

よしんば逃げなかったとしても、統括するものがいなくなった軍隊は、統率力をなくし脅威ではなくなる。

しかし、連合軍の疲れは溜まり、そろそろ城下で戦っている兵士達も限界に近いはずだ。

これが最期の戦いでもあり、あの五人が負けてしまったら、連合軍はもはや戦う術を失い、疲れた兵士は一人、また一人と倒れていく。


だが、あの五人ならば大丈夫だ。


魔王を倒せるあの五人の、倒せるようには思えないその姿、まだ子供である少年少女達の姿を思い出し、それでも心の中でそう信じる隊長は、やがて見えてきた玉座の間の扉を勢いよく開けた。

そして絶句する。

そこには、敗北した五人がいたわけでも、勝利に歓喜した五人がいたわけでもなかった。

だが、勝利したことだけはわかる。


「…………これは……いったい……?」

隊長の眼前に広がる視覚の情報は、かつて魔王だった者の亡骸だけをとらえていた。






*******************************






闇、それはどこにでも存在する。

光は影を落とし、影は闇になる。ここは、裏の世界。

表の世界と違い、太陽がなくいつでも空に月が上る場所。

魔物の住処であり、人間は決して来るはずの無い世界である。

月が上っているのにも関わらず、あたりはとても不気味だった。

紫の禍々しき雲に覆われた空の下、そんな不気味な場所に五人は立っていた


「ちぇ、ミスったなー、まさか魔王様ともあろうものがイタチの最後っ屁とはなー」


辺りの平原を見回していた、後に『鬼神』と呼ばれる獣人族の少女が、額に流れる血を拭い最初に声を上げる。

胸にサラシを巻き、下半身は男物のパンツ一丁という、おおよそ女の子がするべきでない恰好の少女は、体中に勲章とも言うべき傷を負っていた。

猫獣人である彼女の真っ白なはずの毛は、体の傷と、自身の戦闘スタイルのせいで染まった魔族の血で赤く汚れた紅一点。

戦闘の時の興奮が収まっていないのか、長く細い、真っ赤な尻尾をゆらゆらとせわしなく揺らしている。


「それよりもアスカは女の子なんですから、少しは恥じたらどうなんですか?」


次に声を上げた者は、後に『飛王』と呼ばれる、竜人族の少年だった。

竜人族というと、大体の人は陸竜種を想像するが、彼は翼をもつ飛竜種だ。

飛竜種と一口にいっても火竜と水竜に分けらるが、彼は水竜の特徴である、よく晴れた日の正午の空、そんな景色を思わせるような綺麗な水色の鱗をしている。

頭から突き出た角は、童顔な少年をそれでも、凛々しく、たくましく見せていた。

ただし、全裸でなければ、の話だが。


「それを言うなら、カイも全裸じゃん、恥ずかしくないの?

 まぁ、オレはそんな君らの裸体が辛抱たまr

 ……ちょっとまってクラウス! それはキツイって!!」


そんな会話に割って入るのは、後に『剣聖』と呼ばれる人間族の少年だ。

とても珍しい、真っ黒なツヤのある髪と、見たものを吸い寄せるような黒の瞳。

折れた剣を背中に差し、裸とは言わないまでもボロボロになった服装からは、先の戦いでの死闘を感じさせる。

……はずなのだが、太陽のような明るい顔は、戦いが終わった嬉しさからか、その輝きを一層ましているため、そんなことを感じさせない。


「お前、反省しろ」


変態的な思考回路を持った彼に制裁を加えようとする少年は、後に『賢者』と呼ばれるエルフの少年だった。

それを証明するかのように、とがった長い耳とつりあがった眼の奥にある、綺麗な緑色はエルフの特徴が強くでていた。

魔法の得意な彼が空に両手を掲げると、普通の人ならば耐えられないだろうくらいの魔力の密度を感じさせる火の球が出来上がり、それをエルに向けて振りかぶっている。

魔王と戦った後だというのに、それだけのものが作れるほどの魔力を見ると、その底力はわからない。

他の皆と違い、一つだけ年が上なのでこのグループの中では一番まともなのだろう、が────


「そんなこといってー、ホントはエッチな事、すきなんでしょ?」

「なっちが!? べべべっ別にそんなことはないッ!」


────弄られているところを見ると、威厳が感じられない。


「あはは~、

 エルの前じゃ~クールなクラウスも形無しだね~」


よくある仲間内の光景に、今の現状を忘れてのんきな声が上がる。

この声の主、後の『仙人』と呼ばれるドワーフの少年は、とても陽気に皆を見ている。

リックと呼ばれる彼は種族ゆえか身長は1mちょっとしかないが、このなかではエルに並ぶ底抜けな明るさの笑顔を作って、少年としての可愛らしさが出ている。


「僕のような竜人族は爬虫類と同じで、大事なものは中に入ってるんですよ、エルも知ってるでしょ?」

「で、興奮すると大きくなって、お(ピー)んが出てくるんでしょ~?

 カイ~、興奮してるの~?先っちょ出てるよ~」

「えッ!?」


陽気な、間延びした声の指摘に、カイが驚き、自身の股間部を見る、が


「う~そ~だ~よぉ~、ビックリしたあ~?」

「…………リックッ!!」

「や~、冗談だったんだよ~、そんな怒らないでぇ~」


この少年もやはり、他の四人と同じく、悪戯好きという、英雄と呼ばれるにはいささか特殊な性格をしていた。


「さて!! まー、んなことどーでもいーよ

 で? 私らこんな所に引きずりこまれちゃったケド……どうすんの?」


不意に、大きな声を上げるのはアスカだ。

だんだんとグダグダになってきた皆の言葉を切るように、アスカは会話を強引に持っていく。


「そりゃ脱出でしょ!」

「どうやって?」


間髪入れずに得意げな表情で返答を上げるのはエル。

それに対して冷静な質問を続けるアスカ。

言葉に詰まったエルは、得意げな顔が消え、腕を組み、悩み始める。


「む……うーん、どうしよ? クラウス、なんか良い案無い?」

「おい、俺に振るなよ」


暫くの間、みんなは頭を抱えて悩む。

うつむいて考えたり、座り込んで考えたり、寝転がって考える。と、しばらくしてカイが一つのアイデアを出した。


「僕達皆の力を合わせれば、魔王みたいに次元に穴を開けられるんじゃないですか?」


作戦は、と、カイが皆に耳打ちをする。

作戦といってもただ単に、この場にいる全員の力を一点に集中させて、無理やり穴をこじ開けるという物だった。

そんな投げやりな方法を聞いて、三者三様に表情を変える四人。


「本当にそんな方法で大丈夫なのか?」

「ま~、試す価値はあるとおもうけど~」

「いけるさ、魔王を倒したオレ達なら」

「まー、なるようになれっ! ってやつね!」

「出来なくても、僕を恨まないでくださいね?」


五人それぞれが声をかけ、皆が等間隔に離れる。

一瞬の静寂の後に、同時に頷く。


「いっくぞーッ!!」

「「「「「 せーのッ!! 」」」」」





********************************





真っ暗で、とても静かだ、ここはどこだろう?

とても静かなのに、目の前で必死な誰かの声がする。

でも、目を開けられない。

大きな声をかけられているのはわかるけど、

でも、もっと眠っていたい……

そう思うオレの意識は、水底の泥のように、静かに沈んでいった。



手直し手直し!

初めて見てくれた方も、活動報告を読んでもう一度読んでくれたかたも


  ゆ っ く り し て い っ て ね !


※次回から、この場はキャラの座談会になります。

これは作者である自分の自己満足であり、そういうのが嫌いな人は、見なくても問題はないので、お手数ですがそのまま戻り、無視してください。

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