始まり始まり
有効活用したいので、ここでは、前回までのあらすじみたいなのを書いてみます
暇つぶしに読んで行ってくださいな!
「ねぇおばーちゃん! えーゆーさまのおはなししてー?」
五つの大陸の、どこかの民家。
暖炉には火が付き、パチパチと燃えて部屋をほのかに明るく、優しく暖めている。
その目の前には椅子に座ってうとうととする老婆がいた。
否、老婆と呼ぶには容姿はまだそれほど老いてはおらず、それが種族ゆえの特徴の現れであることを知ることができる。
ならばなぜ老婆なのか?
それは、彼女に近寄る元気な孫の声が証明する。
自分の眠りを妨げられたというのに、目を細めて孫に笑顔を送るその姿は心優しい祖母という姿だ。
「まぁた、英雄様のお話かい? リナは英雄様が大好きなんだねぇ……」
あたりはすっかり暗くなり、暖炉の明かりを受ける孫の顔には、影ができて様々な表情に見える。
「うん! あたちも、おおきくなったらえーゆーさまや、
ととさまみたいにまものとたたかうんだー!」
「そうさねぇ……じゃあ今日は、『剣聖』様のお話をしてあげよう……」
目の前で剣を振るフリをし、精一杯に胸を張る孫をとても愛おしく眺める祖母は、孫の頭をなでてある一人の英雄の話を始める。
その名前を聞いたとき、孫は目を爛々と輝かせた。
暖炉の火を受けたエメラルドグリーンの瞳は、期待という言葉で彩られている。
「わーい! あたち、『けんせい』さまがいっちばんすきー!」
ゆっくりと話し出す、昔の英雄のお話。
「……『剣聖』様はね、わし等エルフと違って、人間族じゃった。
『剣聖』様は、その名の通り、剣術なら右に出る物はいないとされるほどの、剣士様だったのじゃ」
「あたちや、ととさまよりも?」
「ああそうさ、わしの息子である、リナ、お前の父なんかの何百倍も強かったのだ……」
目をつぶり、勇猛果敢な剣士の姿を浮かべる祖母の姿に、リナはとてもうれしそうに話す。
「へー、ととさまも、つよいけど、『けんせい』さまはやっぱりもっとも~っとつよいんだね!」
「『剣聖』様はねぇ、様々な剣技を持っていたんだよ。
その中でも、失われた剣技を扱えるのは、世界中で、彼だけだったのさ。」
「うしなわれたけんぎ?なくなちゃったの? アタチも、つかってみたい!」
「……私も見てみたいよ、使えるお人が、もうこの世にはいなくなっちまったからねぇ……
魔王軍に勝った時に、彼が姿を消してから、文字通り失われちまったのさ……
せめて、『剣聖』様に弟子がおったなら、その人が技を伝えてくださっただろうに……」
とても残念だ。
そう、困った顔で言う祖母の気持ちは、彼女も英雄に対しての何らかの気持ちがあることがわかる。
リナはそんな祖母の見ながら、彼女の気持ちを表すかのようにガッカリし、そして胸をドンッ!とたたく。
「そっかぁ、つかえないんだー……
でも、あたちには、『けんせい』さまがつかっていた、ワザがなくってもだいじょうぶ!
ととさまにおそわったワザがあるもん!」
鼻から息を吐き出し、もう一度まだまだ小さな胸を張りながらニコニコと笑う。
そんなリナをみて、祖母ももう一度、愛おしい孫の頭をなでる。
「そうか、そうか、リナはいい子じゃ……でも、無理はしちゃ、いかんぞ?
さ、今日はもうお休み……夢に、『剣聖』様がでてくると、いいね」
「はーい!おやすみなさーい!!」
いつの間にか弱くなった暖炉の火は、それでも暖かな心を持った二人の家族に負けないくらい、あたりを暖めていた。
書き直しました!
もともとはセリフのみだったんですが、
ちょっと描写力の練習を、と思い、やってみました。
ちなみにセリフはほとんど変わってないです