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第一章:それぞれの道

 その昔………

 この世界には………

 「竜」と呼ばれる存在がおった………


 東の者は翼無くして空を翔る程の妖力の使い手………

 西の者は翼を用い空を翔る力強い者達であった………


 かつて世界の空を統べた竜族であったが………

 「東洋竜」と「西洋竜」との間に争いが勃発………

 双方共に………

 甚大な被害を被り………

 それ以降、空を統べることは無かった………


 地上には………

 人間と呼ばれる存在がおった………

 そう………

 我々人間である………


 それらの中には………

 竜族の者に近づく者もいた………

 西洋、東洋、どちらの者達も………

 反応はそれぞれであった………


 ある者はその小さき存在を焼き払い………

 ある者はその小さき存在を自らの背に載せ、契約を結んだ………


 契約を結びし人間は………

 その小さき体に秘めし内なる力を引き出し………

 竜と一心同体の存在となった………


 これは………

 西洋竜と東洋竜、そして契約を結びし人間との………

 戦いと………

 竜族復興の物語である………



     第一章


  愚なる民は山へ入る

  神の御力を得るが為

  愚なる民は契を結ぶ

そして愚者は聖人となる

   (竜之御使書 第四節)





  遥か東の地、不死の山と呼ばれる険しき山を登る、一人の若者がいた。

 同じ頃、遥か西の地、白き山と呼ばれる険しき山を登る、一人の女がいた。

 若者の名は岸城洋輔、女の名はサリー・ウェストと言った。

 二人は、場所こそは異なるものの、同じ志を持ちて、それぞれの山を登った。

 同じ志ではあるが、神の御意志か悪戯か、待っている運命はそれぞれを悲しく結ぶこととなる。

 暗雲立ち込め風が吹きすさぶ中、道無き道を歩み、剣の砕けるまで迫る魔物を斬り、二人はそれぞれの志を果たす為に上へ、更に上へと歩んだ。

 どのような道のりか…

 どのような苦難か…

 ただの語り部に過ぎぬ私には知る術はない…

 ここからは、しばらくこの二人に話を任せるとしよう………





「くっ…嫌な天気だな…

 あと少しで頂上だってのに…気が滅入るぜ…」

 この小さな島国の真ん中にある一番高い山、不死に登り始めて二日目の朝は、いつも以上に暗ぇ朝だった。


 俺は、この山の頂上に降り立っという「神」の噂を聞いて此処へやってきた。

 前から聞いてきた通り、この山の道は険しく、当たりをさまよう魔物もかなり手強い。

 しかも、この暗さときたらたまんねぇ。

 時計が無けりゃ昼なのか夜なのか分かんねぇ、下手すりゃ三尋先も見えねぇぐらいだ。

 そんなこんなだが、ようやく頂上に近づいてきたらしい。

 最低知識程度に読んだ本の中に書いてあった「飛竜草」らしき花の光があちこちに見えているからな…


 俺は改めて斜面を見下ろした。

 麓の村だろうか、それとも魔物の目だろうか、輝く光が遥か遠くに見える。

 此処まで来たら引き返せねぇ。

 俺は、再び斜面に向き合い、上へと登り始めた。




 大きな枯れ木の横を通った時だ、いきなり何かが俺の横からぶつかってきやがった。

 生暖かい毛の感触が左手に微かに残っていやがる。

 俺は反射的に刀を抜いた。

 名の知れた名刀の贋作だが、さほど切れ味はねぇ。

 だが、身を守る程度には十分扱える代物だった。

 ぶつかった奴は俺から少し間を置き、伏せているらしい。

 どうせ、俺の頸動脈を狙って飛びかかろうと身構えてるんだろうよ。

 おもしれぇ、一瞬の勝負だ。



 奴はがっと俺に飛びついた。

 俺は一気にその眉間へ刀を叩きつけた。



 俺は倒れた奴の死骸と、転がった刀の刃を眺めた。

 もう、身を守るものはねぇ。

 鞄にはバタフライナイフはあるが、使い物にならねぇだろう。

 仕方ねぇ。

 握りしめていた刀の柄を投げ捨て、俺は頂上へと急いだ。

 頂上の神を信じて。





 人が………こんなにも愚かだなんて………

 此処に来て、初めて知った………


 欧州の真ん中の国、その国境に聳える霊峰…

 通称「魂の山」と呼ばれるそこは、そのあまりにも高い頂に常に雪をたたえていた。

 自然信仰の者達はこの山を崇める。

 確かに、強力な「何か」が私の中にも流れ込んでくるようだった。

 標高が上がるにつれ、徐々に空気が薄まり、それに加えて気温が下がっていく。

 それに連れて魔物の種類は少なくなってはいるけれども、それは即ち私にとっても過ごしにくい環境ということでもある。

 分かってはいるけれども………

 止める訳にはいかなかった………


 上空を爆音を響かせながらジェット機が飛び去って行く…

 あの甲高いエンジン音は恐らく敵国のもの………

 直感的に感じた私は、ふと上を見上げた。

 古い絵に描かれたドラゴンをモチーフにしたそれは、醜い両翼に幾つもの爆薬を抱えていた…


 ふと、それが向かった方向を向いてみた。

 一昨日泊まった街は、既に赤々と煙を出しながら輝いているようだった………

 あの宿屋の家族は無事逃げ出せただろうか。

 街で見かけたあの子供達は?

 出兵していく恋人を泣き叫びながら見送ったあの女性は?

 みんな灰になってしまうの………?


 この愚かな戦いを止めるのは私しかいない。

 どんなことがあっても、この山の上へと辿り着かなければ………

 改めてそう誓い、私は再び凍り付いた斜面を登り始めた………



 寒くて、険しい道のりだった。

 かなり防寒対策はしているものの、それさえも通り抜けて刃のような冷たさが突き刺してくる。

 しかも、スパイクでさえ油断すれば直ぐに滑ってしまう。

 おまけに、あちこちに口を開けたクレバスが、獲物が落ちてくるのを待っている。

 あそこに落ちればひとたまりもない。

 私は、慎重に、ゆっくりと斜面を登っていった………



 頂上まであと1日、そんなときに、その事件は起きた。

 猛吹雪でホワイトアウト状態の中、私のナップザックの肩紐が切れて何処かへ行ってしまったのは。

 肩に僅かに痛みを感じる。

 しかし、振り返っても何もいなかった。

 さしずめ、氷の破片か何かが直撃し、肩紐ごと切りつけたのだろう。

 とにかく、私は身の危険を感じて、すぐさまその場に伏せ、吹雪が治まるのを待った………



 吹雪が治まり、改めてナップザックを探したが、結局見つからなかった。

 せめて寝袋だけでもと思ったけれども、結局は無駄に終わった。

 こうなっては仕方がない。

 私は仕方無く、不眠で山を登ることにした。

 体力は回復しないけれども、凍死するよりはましと考えたから………



 半日歩くと、雪が無くなっているのが嫌でも分かった。

 しかも、心なしか少し暖かいような気もする。


 明らかにおかしい。


 そう思いながらも、私は頂上を目指した。

 既に、神の領域に踏み入れているとは、私は思いもしなかった………

とりあえず設定………


地球に酷似したどこかの星の話。

唯一違うところは、竜族を始めとして、様々な空想上の生物がいることのみである。


主要人物と竜族紹介


西洋竜派

いわゆるドラゴンと呼ばれる竜族。

背には巨大な翼を持ち、鋭いかぎづめと歯を持つ。


アリューシュア

純白の鱗と翼を持つ雌竜。

その美しい姿とは裏腹に、かなりの機動性と力を持ち、誰も出来ないアクロバティックな飛行も難なくこなす。

東洋竜との戦いの際に受けた傷跡が所々に見受けられるが、彼女自身はそれを誇りに思っている。


契約者:サリー・ウェスト

ブロンドの長い髪を持つ女性。

細身の体だが剣術に優れ、アリューシュアと共に軽やかに踊るような戦闘法を行う。

魔法の腕前もなかなか筋が良く、小さな魔法教室を竜使いの里にて開いている。

(別に姓がウェストと言っても方角とは無関係)


ラピス

目の覚めるような青い鱗と翼を持つ雄竜。

アリューシュアとは幼なじみで、良く遊んでいたらしい。

今は東洋竜との戦いではぐれた兄を探し世界を飛び回っている。



東洋竜派

翼を持たずにすらりとした体を持つ、良く掛け軸などにも描かれる竜族。

力よりも妖力に優れ、その強さは様々な天変地異を起こす程である。


疾風(はやて)

黄金色の鱗を持つ雄竜。

その名の通り、かなり俊敏な動きを見せる。

妖力を扱い飛ぶ東洋竜にとって、俊敏な動きはかなりの妖力を必要とするが、彼

はそれを難なくやり遂げた。

西洋竜との戦いでも複数の相手に立ち向かい勝利を収めた事でも、彼の実力の大

きさが分かる。


契約者:岸城(きしき) 洋輔(ようすけ)

名前からも分かる様に、生粋の日本人。

「雪光」という名の日本刀を扱い、僅かながら読心術も心得ている。

少し無茶な行動を起こすことも多く、疾風に一喝を入れられることもしばしば。


翡翠(ひすい)

透き通るような緑の鱗を持つ雌竜。

少しのんびりしている所があり、疾風達と行動する時にも置いて行かれることが

しばしば。

しかし、回復の妖術に関してはかなり熟知しており、彼女は彼女なりに皆の役に

は立っている。


こんなもんかな………

因みに岸城の由来は私の高校の住所から(笑

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