素晴らしい世界
あなたは笑顔で少女を見た。
すると笑顔が固い少女に見返された。
「なあに?」
「いや、君と一緒なら楽しいなって思って」
「……そう? 私も楽しいよ」
少女の笑いが眩しかった。
「おや、少年じゃないか」
笑顔で馬鹿馬鹿しいけれど充実した一日を過ごしていると、あなたは声をかけられた。
あなたは先生に手を振られていた。別れたときと同じ、笑顔のままだ。
「先生」
「いや、言わなくていい。笑顔に理由はいらないのだよ」
「先生……?」
「結果さ。君が笑顔である。それさえあれば私は笑顔になれる」
また先生に頭をくしゃくしゃと撫でられたあなたは顔を緩ませた。
次に先生が少女に目を向けるのを見た。
「君が少年の魔法が使いたい理由だな。何々可愛いじゃないか。それに、良い笑顔だ。やはり少年の魔法は効果があるな」
「ぁ……いえ……そ、んな、可愛い……、なんて……」
「謙遜する事はない。笑顔の分可愛さが増していると思えば、可愛いと言われる分だけ笑顔ってことになるだろう?」
「あ……、は、はい……!」
「よろしい」
ニコッと笑った先生、少女の頭もあなたと同様に撫でられている。
すると今までで一番自然な笑みを少女がしたのを見た。
「先生。先生はやっぱり凄いですね」
「凄くはない。もし凄いのならそれはきっと君のおかげだよ少年。君が私を凄くしているんだよ」
あなたは笑った。先生も少女も笑っている。花咲く笑顔が三つもある。
なんて素晴らしい世界何だろうか。
あなたは嬉しくてたまらなくて、心持ち笑いに幸せを混ぜたのだった。
あぁ素晴らしきかなこの世界。
あなたも私も彼も彼女も、みんなみんな笑っている。
笑顔が連鎖している。
あなた達は一人じゃない、生きている限り一人にはならない。
だからあなたは笑えば良い。
笑わされて笑うのも良い。
けれどやっぱり笑ってみよう。
それがあなただけの魔法。
十人十色の幸せの魔法。
あなたの魔法はどんな宝物かな?
今はまだ、秘密になっている。
でもいつか、分かるときが来るよ。
だから今は、笑わされてでもいいから笑っていよう。
それは魔法。
笑顔を繋げる秘密の魔法。
みんなで繋げる笑顔の輪。
大きすぎて、当たり前すぎる、秘密の宝物。
完結です。
ご愛読ありがとうございました。
笑顔になれましたか?
あなたの笑顔はきっと自分の笑顔です。