私とあなた
あなたはガラス細工のように華奢な少女に見つめられながら、笑顔を少女に向ける。
少女が固まった顔で返してくれるのを嬉しく思わされるが、感情が一つというのはいかがなことかと、何気なく考えた。
「感情を知ろう。そしたらもっと幸せになれるよ」
「感情?」
あなたは首を捻る少女に可愛いと、考えたこともないことに悔しいと思わされながら、でもやっぱり笑顔を作る。
こんなことを考えるのはきっと幸せの中にいるってことのはずだから。だから嬉しくて笑いたくなる。
「感情。まずは喜怒哀楽とかを出してみよう!」
「……うん」
両手の人差し指をこめかみ辺りに持っていき勢いよく上に上げた顔を向けられたあなたは思わず笑ってしまった。少女の顔が怒っているように見えるのだが、堪らなくおかしかったからだ。
たまらず笑ってしまったあなたを見た少女は訳も分からずつられて笑う。しかし指は離さなかったのでこれまたおかしな顔の出来上がりだ。
あなたはさり気なく少女の指を離してやり、言った。
「また今度にしようか、今はこのままでいいや」
「そう……? 私ダメだった?」
途中で止めてしまったから不安になったのか、伏せ目がちになった少女。あなたはどうしたものかと頭を掻き、そして思いついた。
「それだよ、それが喜怒哀楽の哀。君はもう出来るようになったんだ、これは嬉しいことだね!」
笑う。気付いた少女もパチッと目を見開き笑う。
やっぱりこの笑顔は最高だなとあなたは思い、幸せに満ちた今を笑顔で表現する。
この世にある一番の奇跡。
あなたと私、そんな当たり前の関係。
私達は一人には成り得ないのだ。