そういうとこが嫌いだった
掲載日:2026/09/01
彼は何度も入力欄を開いては閉じ、ようやく文字を打ち始めた。
親御さんや兄弟姉妹のことなら悩みを聞くし、友達のことなら愚痴くらいいくらでも付き合う。
お子さんのことなら話を聞かせて欲しいし、恋人や配偶者のことならそっとしておく。
仕事のことなら事情を聞かせて欲しいし、お金のことなら僕が幾らまでなら君に騙されていいか考える。
万一、病気や怪我、犯罪に巻き込まれたなら、『いつ』のことか教えてくれたなら直ぐにそっちへ行く。
もし、そっとしておいて欲しいなら、いくらでも待ってる。
彼はもう一度だけ入力欄を開くと最後の一行を消し、送信した。
スマートフォンをポケットにしまう。
玄関の鍵を手に取るまで、一分もかからなかった。




