#1 陽気さと儚さのハイブリッド系美女との出会い。
絶対面白い。
無力は罪だ。それは、一生消えない呪いとなる。
不意に"あの日"の情景を思い出す度、心拍が上がり、嗚咽する。
だから、強くなりたいと願った。強く在りたいと願った。
もう二度と、大切な人を失う事が無いように___
都立蒼育高等学校。
今日から僕は、"蒼穿使い"の育成機関の最高峰であるこの学校に入学する。
正直合格出来るとは思っていなかったため、入学出来たのは運が良かった。
浮足立った状態で校門を通り抜け、校舎へと目を向ける。
「今日からここが、僕の学び舎か〜」
ビル程の巨大な建物を目の前にして思わず圧倒されそうになってしまう。
都内唯一の蒼穿科高校なだけあり、その設備にも多大な資金が注ぎ込まれているのだろう。
周囲を観察して、最新鋭(推定)の施設に感心しながら、生徒用玄関で屋内用の靴に履き替えて自分の教室に向かって歩いて行く。
俺は一年ETクラスだ。"ET"というのは『Engineering Technology』の略で、この学校に四つある学科の内の一つだ。基本的には、学科ごとに一クラスだが、定員はそれぞれ違う。
僕は、蒼穿を扱う工学関連の分野に興味を持ったためこの学科を選択したのだが、他の学科と比べると、あまり人気は無いようで、倍率もそれ程高くなかった。僕が合格出来たのもそのおかげだろう。希望分野の倍率が低いというのも含めて、運が良いと言える。
そんなこんなで、いつの間にかETクラスの教室まで辿り着いた訳だが、僕は一度ドアの前で立ち止まり、深く息をつく。
「……」
いや別に?スタートダッシュを狙ってド派手に教室に入ろうとしたけど、直前になってやっぱり怖じ気付いて来たとかでは断じてないが?
高校こそは仲の良い友達を沢山作って、楽しい学生生活を送りたいのだ。それには勇気が必要不可欠!……でもその勇気が出ない。我ながら情けない。
「ん?教室入らないの?」
自分の不甲斐なさに内心でため息をついていた所、突然後ろから話し掛けられて肩が跳ねる。
「……え?あ、いや……」
とまあ、見事に言い淀みながら振り返ると、そこには透き通る様に綺麗な銀髪の女子生徒が居た。
「いやいや全然?クラスの皆から注目される様な第一印象を与えるために教室のドアを蹴破って派手に入ろうと思ったけど、よく考えたら、そんな事をしてもクラスで孤立するだけって事に気が付いて呆然としてた何て事は一切無いが?」
「あははっ、それ全部言っちゃってるよ?」
無邪気に笑う彼女は、髪と同じくらいに思える透明度を感じさせる肌を持っており、一見、何処か儚さを感じさせられる。
「それで、結局やらないの?ドアをダァァァーン!!って!」
「……ああ、何かもう良いや」
「えー、残念だよぉ。せっかくだからやれば良いのに〜」
肩をすくめて床へと視線を落した僕を見て、彼女は少し煽る様な口調でポンポンと僕の肩を軽く叩いてくる。
「……?」
そこで彼女は少し違和感を感じたのか、二回程僕の肩を叩いた後に、咄嗟にその手を素早く引き戻す。
「ん、どうしたんだ?何か不快な思いをさせたか?煽られたのは僕の方何だが……」
「あっ、いや何でも無いよ?ただ、何か身体が勝手に……変だよね!うん!ごめんね!」
彼女は感じた違和感の正体には気付いていないようで、首を傾げながらも小さく手を振りながら僕に謝罪する。
別に、女子から咄嗟の拒否反応を見せられて傷付いている訳じゃないが?いや、普通に悲しい。
「……いや、あ……そう言えば、名前を聞いて無かったな。僕は零、創流零だ。よろしく」
名前で呼ぼうとしたが、出て来ず、名前を聞いていなかった事を思い出した。
「零くんねっ。分かったよ!私は白雪銀華、よろしく!」
「……白雪も学科はETなのか?」
「うんっ、その通りだよ!」
僕は教室のドアを開ける。
これから、僕の新しい学校生活が幕を開けるのだ。不安と期待が入り交じるが、出来る限り上手く立ち回って、楽しく平穏に過ごして行きたいな。
___だが、この時の僕はまだ知らなかった。これから始まる学校生活が平穏とは真逆ものであるということを。
陽気さと儚さを合わせ持つ彼女……白雪銀華との出会った本当の意味を僕が知るのは、まだ少し先の話だ。
次回はもっと面白くする。




