第16章5節: 腹が減っては戦はできぬ
ミルトン村での調査と分析は、昼過ぎまで続いた。
緊張感と集中力で、空腹を感じる余裕もなかったが、一段落つくと、途端に強い疲労感と空腹感に襲われた。ボルガンとリリアも同様だろう。
「……さて、少し腹ごしらえでもするか。思考を整理するには、適切な栄養補給も必要だ」
私はそう言うと、ミルトン村の村長(憔悴しきっていたが、私たちの調査には協力的だった)に許可を取り、村の炊き出し場のような場所を借りることにした。持参した食材と、村で分けてもらった僅かな野菜や穀物を使い、簡単な食事を作る。
メニューは、栄養価が高く、温かく、そして何よりも手早く作れるもの。まずは、鶏肉(これも持参した干し肉を戻したもの)と野菜をたっぷり入れた雑炊だ。米に、細かく刻んだ鶏肉、ニンジン風根菜、タマネギ風球根、そして森で採取した消化を助けるハーブを加え、味噌もどきと醤油もどきで風味をつけた。弱火でじっくりと煮込み、米が柔らかく花開くまで火を通す。
もう一品は、燻製卵と、燻製した木の実を使った、簡単なサラダ。ドレッシングは、植物油と酢もどき、そして少量の蜂蜜(これも村で分けてもらった)を混ぜたものだ。
料理の良い香りが漂い始めると、炊き出し場に、恐る恐る、しかし興味深そうに、ミルトン村の子供たちや老人たちが集まってきた。彼らの多くは、家を失ったり、家族が怪我をしたりして、心身ともに疲れ切っている様子だった。
出来上がった雑炊とサラダを、まずは彼らに振る舞う。
温かい雑炊を一口食べた老人や子供たちの顔に、ほんの少しだが、安堵と喜びの表情が浮かんだ。
「……うめぇ……こんな美味いもん、久しぶりに食った……」
「あったけぇ……なんだか、力が湧いてくるようだ……」
「そうでしょう! ハルカさんの料理は世界一なんだからね! ハルカさんは最高の料理人なのよ!」
なぜかリリアが、自分のことのように胸を張って自慢している。
わたしは料理人ではなく研究者なのだがな……。
私はその様子を横目で見ながら、残りの雑炊をボルガンと自分のためによそった。
確かに、この状況で食べる温かい食事は、格別の味だった。




