第15章10節: やれやれ、またしても……(ハルカの微笑み)
村の広場で繰り広げられる、予期せぬ燻製の宴。
村人たちは、私の作った燻製を「聖女様の新たな恵み」として心から楽しみ、その美味さに酔いしれている。ボルガンは上機嫌で若者たちに絡み酒をし、ジェイドは(相変わらず素直ではないが)燻製ベーコンを片手に満足そうな顔をしている。リリアとアリアは、他の村の女性たちと一緒に、燻製を使った新しい料理のアイデアを出し合っているようだ。
私は、その賑やかな様子を眺めながら、いつものように「やれやれ」と小さくため息をついた。
私の目的は、あくまで個人的な探求心と、食欲を満たすための燻製器開発だったはずだ。それが、なぜかいつの間にか、村を挙げての宴会騒ぎに発展している。私の行動は、常に私の意図を超えて、この村に奇妙な波紋を広げていくらしい。
だが、その波紋は、決して悪いものばかりではない。村人たちの顔には、純粋な喜びと、明日への活力が満ちている。彼らの食生活は、確実に豊かになり、そしてそれが、彼らの心にも良い影響を与えているのかもしれない。
そう考えると、この騒がしさも、まあ、悪くはないか。
私は、喧騒の中で燻製を頬張り、酒を酌み交わす村人たちの輪から少し離れた場所で、一人、静かに空を見上げた。夕焼けの空に、燻製の香りが溶けていく。
その私の口元には、いつもの「やれやれ」とは少し違う、ほんの僅かな、しかし確かな微笑みが浮かんでいた。
さて、次はどんな「面倒事」が、私を待っているのだろうか。
そんなことを考えながら、私は自分の分の燻製ベーコンを一切れ、ゆっくりと味わった。
うん、やはり美味い。




