第15章8節: ボルガンの賛辞と酒の肴
私が様々な燻製作りに没頭していると、その芳醇な香りに誘われて、ボルガンが小屋を訪ねてきた。彼は、テーブルの上に並べられた色とりどりの燻製を見て、驚きの表情を浮かべた。
「ハルカ殿、これは……また何やら、とんでもないものを作っておるな。この香りは一体……?」
「燻製だ。食材を煙で燻して風味をつけ、保存性を高める調理法だ。試してみるかね?」
私は、完成したばかりの燻製ベーコンと燻製卵、そして燻製銀マスを少量ずつ盛り付け、ボルガンに差し出した。
彼は、半信半疑といった様子で、まずはベーコンを一口。
「……む!? こ、これは……! なんという深い味わいじゃ! 塩辛くもなく、それでいて肉の旨味が凝縮されておる! そしてこの香り……! 初めて体験する風味じゃが、実に心地良い……そして、美味い!」
次に燻製卵、そして燻製銀マスと食べ進めるうちに、ボルガンの表情は驚嘆から歓喜へと変わっていった。
「ハルカ殿、この燻製とやらは素晴らしいではないか! どれもこれも、酒によくあう! 特にこの魚……皮のパリパリ感と、身の締まり具合、そしてこの燻した香り……たまらん!」
ボルガンはご機嫌な様子で、どこからか取り出した瓢箪(おそらく酒が入っているのだろう)を呷り始めた。どうやら、昼間から一杯ひっかけているようだ。
「……いい御身分だな」
私が呆れたように言うと、ボルガンは豪快に笑った。
「いやはや、これほど美味い肴を前にして、飲まずにおれようか! ハルカ殿は、まさに食の天才じゃな! アッシュウッド村に来てくれて、本当に良かったわい!」
元騎士の、手放しの賛辞。
素直に嬉しいが、少しだけ気恥ずかしさも感じる。
私は照れ隠しのように、次の燻製に取り掛かるふりをした。




