第15章6節: 燻煙材の選定と最初の燻製
燻製器は完成した。
次に重要なのは、燻煙材、つまり煙を出すための木材チップだ。前世ではサクラ、リンゴ、ヒッコリー、ナラ、クルミなど、様々な種類の木材が使われていた。それぞれに特有の香りがあり、食材との相性も異なる。
もちろん、この世界にサクラチップなど都合よく存在するはずもない。私はリリアとボルガンに相談し、この森で手に入る木材の中で、燻製に適したものがないか尋ねてみた。
「燻製……? 聞いたことのない調理法だな」
ボルガンは首を捻ったが、リリアが「確か、あの、ちょっと甘い香りのする木があったよね! 実は食べられないけど、燃やすといい匂いがするって、じいちゃんが言ってた!」と思い出してくれた。
早速、リリアの案内でその木(クルミに似た堅木だった)の枯れ枝をいくつか集め、細かくチップ状にする。乾燥も魔法で手早く済ませた。試しに少量燃やしてみると、確かに、燻製に適した、甘く芳醇な香りが立ち上る。これは期待できそうだ。
最初の燻製対象として、私は先日手に入れた干し肉を選んだ。あの硬くて塩辛いだけの干し肉が、燻製によってどう変化するか。非常に興味深い実験だ。
塩抜きして柔らかく戻した干し肉を、燻製器の網に乗せ、燻煙室でチップを燃やし始める。煙が勢いよく立ち上り、燻製室へと流れ込んでいく。温度を60~80℃程度(温燻)に保ちながら、数時間、じっくりと燻していく。
小屋の周りには、燻製の独特の良い香りが漂い始め、集まっていた村人たちから、期待に満ちたどよめきが起こった。




