第15章3節: 新たなる創造への衝動(蘊蓄その2:世界の調理器具)
一通りの道具の手入れを終え、ふと、新たな調理道具を作ってみたくなった。現状の道具でも基本的な調理は可能だが、より高度な、あるいは特殊な調理法を試すには、まだ足りないものがある。
思えば前世では、実に多種多様な調理器具に囲まれていた。
様々な形状と材質の鍋やフライパン。用途別に特化した包丁の数々。食材の組織を破壊せずに加熱できるスチームコンベクションオーブン、精密な温度管理が可能な低温調理器、食材を瞬時に粉砕するフードプロセッサー、そして遠心分離機や液体窒素といった、もはや実験器具としか思えないものまで厨房にあった。
この世界では、そこまでのものは望むべくもない。
だが、工夫次第で、いくつかの興味深い調理器具は作れるはずだ。
例えば、タジン鍋。円錐形の蓋が特徴的な、北アフリカの土鍋だ。あれは、食材から出る水分を効率よく循環させ、無水調理や蒸し煮に適している。この世界の水が貴重な地域では、有効な調理法になるかもしれない。
あるいは、中華鍋。高温で短時間で炒め物をするのに特化した、あの丸底の鉄鍋。私の火魔法と組み合わせれば、強烈な火力で食材の旨味を瞬時に閉じ込める「爆炒」も可能になるのではないか?
石窯もいいな。パンやピザ(これも作りたい)を焼くのに最適だ。耐火レンガ(粘土と砂を混ぜて高温で焼けば作れるだろう)を組み上げ、薪でじっくりと温度を上げる。その輻射熱で焼き上げられた料理の美味さは、格別だ。
世界には、その土地の気候や文化、そして手に入る食材に合わせて、実に多様な調理器具が生まれてきた。それらは全て、先人たちの「より美味しく食べたい」という飽くなき探求心の結晶なのだ。
「よし」
私は思考を巡らせ、一つの結論に達した。




