第14章12節: 幕間:吟遊詩人が語る「忘れられた歌」
シルヴァミルの調査が数日経った夜、宿屋の広間で、旅の吟遊詩人が古い歌を歌っているのを耳にした。私はリリアとアリアと共に、その歌に耳を傾けることにした。
詩人が歌っていたのは、「湖の乙女と星の漁師」という、この地方に古くから伝わる悲恋の物語だった。美しい湖の乙女に恋をした若い漁師が、彼女の気を引くために、湖の魚を獲り尽くし、さらには禁断の「星の鱗を持つ魚」まで獲ってしまった。その結果、湖の乙女は怒り、湖は魚の獲れない呪われた場所となり、漁師は絶望のうちに命を落とす……という内容だ。
「なんだか、悲しいお話ですわね……」
アリアがしんみりと言う。
「でも、魚を獲りすぎちゃいけないっていう教えなのかな?」
リリアは現実的な感想を述べる。
私は、その歌の中に、いくつかの気になる言葉があるのに気づいた。「禁断の星の鱗を持つ魚」。これは、何か特別な魚のことを指しているのだろうか? そして、「湖の呪い」。現在の不漁と、何か関係があるのかもしれない。
歌い終えた詩人に、私は話を聞いてみた。
「その『星の鱗を持つ魚』とは、具体的にどんな魚なのだ? そして、湖の呪いとは?」
詩人は首を横に振った。
「さあ……それは、歌の中にしか残っていない古い話でしてな。星の魚も、呪いも、今では誰もその正体を知りません。ただ、『湖の恵みは限りあるもの、欲張ってはならぬ』という教えだけが、歌と共に伝わっておるのです」
忘れられた歌、失われた記憶。
ここにもまた、世界の謎を解く手がかりが隠されているのかもしれない。
私は詩人に礼を言い、新たな情報を胸に刻んだ。




